27階層の悪夢。
逆に
だが
「ここか………」
彼女と居た頃は魂の発する霊圧の感知など出来なかったので彼女の魂は覚えていない。知らなければ探しようがないので、目撃情報を集めると『豊穣の女主人』という店で働くアーニャという娘。
(……………変な店だな)
殆どが上級冒険者級。そして、周りで護衛してるのかこちらを伺う気配は第一級。4人………魂の気配に覚えがある。あの小人の4兄弟だろう。
「なぁにやってんだいあほんだらぁ!!」
警戒はされているが敵意はない、と店に入ろうとしたら中から怒号が聞こえてきた。
「財布も買った商品も置いてきただぁ? 買い出し忘れたんじゃないだろうね!?」
「ちゃ、ちゃんと買って来たニャ!! でも、その………あ、あの変な男が悪いのニャ!」
「人のせいにしてんじゃないよ!」
「失礼」
変な男とは自分のことだろう。動揺させたのは事実なので助け舟を出しに店に入る。
「客かい? 悪いね、まだ準備中なんだ」
「いや、彼女の忘れ物を届けに来た」
「ん?」
「あー!」
と、ドワーフでありながら背の高い女性に荷物を渡すとその背後から指差してくるアーニャ。
「此奴ニャかーちゃん! こいつが変なこと言うから、ミャーは!」
「変なこと?」
「…………ミャーに、その………見惚れて、にゃあ………」
尻すぼみして耳がへニョリと垂れる。赤くなった顔を隠すようにうつむくアーニャを見てドワーフの店主は頭を掻く。
「何だいそれぐらい、うちの客にもよく言われているだろ」
「………………」
「そ、そうだけど………なんか、そいつのは違うニャ!!」
「…………」
よく言われているで不機嫌になったり、違うと言われどこか嬉しそうになる綱夜。
「気を悪くさせたなら謝ろう」
「フニャ!? べ、別に気分が悪くなったわけじゃ………なんか、ザワザワして」
「そうか、なら良かった」
「にゃ………」
綱夜が安心したように微笑むとビシリと固まるアーニャ。彼女のそんな態度は珍しいのか店員達も『誰あの乙女』『知らネ』と話している。
「届けてもらって悪いね。まだ店は閉まってんだが、開店したらご馳走するよ」
「そういうことなら、出直そう」
と、店を出る綱夜。アーニャが慌てて追いかけてくる。
「ああ、魚を買ってこようか?」
「…………おミャー、ミャーと何処かであったことあるニャ?」
「─────いや、初対面のはずだ」
「ミャア………名前、は?」
「………クロキ・綱夜」
「聞いたことあるようニャ………」
まあ悪評は広まっているし、酒場の店員なら耳にしたこともあるだろう。彼女の事だから興味ないことは全然覚えないのだろう。
「そこまで気にするようなことでもない」
「ミャーが気にするニャ! なんか、やだ………思い出せないの、モヤモヤするのニャ」
「………ふはっ」
と、思わず吹き出す綱夜。自分が笑われたと思ったのか顔を真っ赤にするアーニャ。それをたまたま目撃した【アストレア・ファミリア】。
「………彼奴、表情筋仕事したのか」
「愛の奇跡ね!」
「アリーゼ! 流石にそれは失礼だ………」
「神々の言うケモミミ好き、と言う奴なのでしょうかね?」
「いや、あたしン時は普通だし猫耳好きってやつだろ」
「ほらほらみんな、人の好みをとやかく言わないの」
などと会話しながら、ライラは綱夜の顔を見て改めて呟く。
「アタシは彼奴の事、精霊とかに近い何かで長生きな分神サマみてぇに何考えてるか分からねえと思ってたが………滅茶苦茶顔に出るんだな」
それは、一目で嬉しそうとわかる顔だった。
「いらっしゃいませ! 話は聞いてますよ、綱夜さんですよね。私はシルって言います」
「…………………」
その場にたまたま居合わせた神々曰く、シルという店員を見る綱夜の目は例えるなら『娘のセーラー服を着た母親』を目撃したような目だった、との事だ。