茨城県で地震が相次ぐが、首都直下地震との関連は?
2026年1月25日、茨城県南部で 深さ51.9 km(速報値)・マグニチュード4(速報値)・最大震度3 の地震が発生しました。
ここで気になるのは、首都直下地震や前日1/24の茨城県北部の地震(M4.4)との関係です。
結論から言うと、今回の地震は首都直下地震の前兆ではなく、1/24の茨城県北部の地震とも別物です。
以下、なぜそう言えるのかを
①茨城県南部の地震の特徴
②今回の地震の位置づけ
③首都直下地震・茨城県北部地震との関係
の順で説明します。
① 茨城県南部の地震は「2タイプ」ある
茨城県南部では、大きく分けて 2つのタイプの地震が起こります。
A) 太平洋プレートの沈み込みに関連する地震(深め:60–70 km)
太平洋プレートが沈み込むことで、地下の岩盤が強く押される力の中で発生するタイプで、太平洋プレート上面付近(あるいはその近傍)で起こる地震が含まれます。
このタイプは、沈み込んだ海山が地震の集中(いわゆる“地震巣”)に関係している可能性が指摘されています。
東京科学大学中島先生の論文
「The Tokyo Bay earthquake nest, Japan: Implications for a subducted seamount」
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0040195125001143
例として、2004年 茨城県南部の地震(深さ約66 km、M5.7)があり、負傷者も出ています。
気象庁「2004 年 10 月6日 23 時 40 分の茨城県南部の地震について」https://www.jma.go.jp/jma/press/0410/07a/jishin041007.pdf
過去には 1895年茨城県南部の地震(M7.2)、1921年龍ヶ崎地震(M7級)などの被害地震も知られます(深さはそれぞれ概ね50 km、80 km程度とされる)。
龍ケ崎市「茨城県南部における地震の危険度」https://www.city.ryugasaki.ibaraki.jp/anzen/bousai/bousai_yomimono/bousai/2013081503283.files/03.pdf
B) フィリピン海プレート境界の地震(やや浅め:30–50 km)
もう一つは、フィリピン海プレートと大陸プレートの境目で起きるタイプの地震です。ここは、相模トラフ巨大地震が想定されている場所の北のはしにあたります。
代表例が
・1923年 大正関東地震(M7.9)
・1703年 元禄関東地震(M8前後)
です。
これらの地震では、茨城県でも強い揺れがあったと考えられますが、
「震源そのもの」は神奈川沖〜東京湾周辺で、
茨城県の直下が震源域に入っていたわけではありません。
つまり、「茨城は強く揺れる場所ではあるけれど、
巨大地震の“震源そのもの”になる場所とは少し違う」
という位置づけになります。
地震調査委員会
「相模トラフ沿いの地震活動の長期評価(第二版)について」
https://www.jishin.go.jp/main/chousa/kaikou_pdf/sagami_2.pdf
② 今回の地震はどちらのタイプか(暫定)
今回の地震は、発震機構(断層のずれ方)が「参考」扱いで確定ではありません。
ただ、P波初動の押し引き分布を見る限り、2004年の茨城県南部地震(深さ66 km)と似たパターンにも見え、
東西圧縮軸をもつ逆断層型
(=太平洋プレートの沈み込み帯でよくあるタイプ)
に見えます。
一方で今回の深さは 51.9 km。この深さは、一般的なプレート形状モデルからすると、
太平洋プレート上面(この周辺では70–80 km程度)より浅い
フィリピン海プレート上面付近に近い可能性がある
という位置です。
したがって現時点では、次のような整理が妥当だと思われます。
太平洋プレート沈み込みに伴う力(東西圧縮など)が、フィリピン海プレート境界付近にも作用し、その結果として起きた地震
(=「フィリピン海プレート境界に近いが、太平洋プレート沈み込みの影響も受けやすい場所」での地震)
※ただし、ここは速報値(震源の深さ・位置)を前提としているため、今後の再決定で解釈が多少変わる可能性はあります。
なお、中島先生の論文(Figure 13b)では、この周辺で 深さ50 km程度でも 北西—南東圧縮の逆断層型が得られている例が示唆されます。
東京科学大学中島先生の論文
「The Tokyo Bay earthquake nest, Japan: Implications for a subducted seamount」
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0040195125001143
今回の押し引きは「東西圧縮または北東—南西圧縮」にも見えるため完全一致ではありませんが、そもそもプレート境界が重なり合う複雑な領域で、力のかかり方が単純でないことを示している、と捉えるのが自然です。
③ 首都直下地震・茨城県北部地震との関係
1) 首都直下地震との関係
中央防災会議の資料では、茨城県が震源として想定される首都直下地震として、
茨城県南部の地震
茨城・埼玉県境の地震
など M7クラスが挙げられています(いずれもプレート境界の地震)。
中央防災会議「首都直下地震の被害想定対策のポイント」
https://www.bousai.go.jp/kaigirep/chuobou/jikkoukaigi/03/pdf/1-1.pdf
今回の地震は、想定震源域からやや外れて見えるうえ、規模も M4.0です。
M7級と比べると地震の規模(エネルギー)は桁違いで、M4はM7に比べて概ね 数万分の1程度です。
したがって、「巨大地震を引き起こす前兆」や「引き金」だと考える合理的な根拠はありません。
2) 1/24 茨城県北部の地震との関係
前日の 1/24 茨城県北部の地震は、
深さ 10 km程度
大陸プレート内部
で起きた地震です。今回(深さ52.8 km、プレート境界近傍)とは 起き方が違うタイプです。
さらに、両者は距離も 70 km以上離れており、今回と前日の地震はいずれも M4級で、断層サイズはせいぜい 1 kmスケールです。
この規模と距離関係では、直接的に影響し合うとは考えにくい、
という整理になります。
まとめ
今回(1/25 茨城県南部、深さ51.9 km、M4.0)は、首都直下地震の前兆ではない。
前日(1/24 茨城県北部、浅い内陸地震)とも、震源のタイプも距離も違い、関係は薄い。
現時点では、フィリピン海プレート境界付近で起きた地震でありつつ、太平洋プレート沈み込みの影響を受けた応力場の中で起きた可能性がある(※速報値前提)。



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