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15年目だから語りたいアニメ『アイドルマスター』の価値

あなたにとって『アイドル』とは?
そんなシンプルなテキストから物語が始まるTVアニメ『アイドルマスター』、その放送から今年で15年になる。

『アイドルマスター』シリーズとは、(”プロデューサーさん”たちには、いまさら振り返る話ではないが)2005年からスタートしたアーケードゲームを始まりとする、バンダイナムコエンターテインメントのゲームタイトル。
昨年20周年を迎え、その展開はアニメ・ライブ・コラボイベントなど多岐にわたり、経済規模は600億円とも言われるビッグコンテツである。

そんな中、自分がアイマスに触れたのは今から3年ほど前と、わりと最近の事。きっかけは、監督を務める錦織敦史のフィルモグラフィを追ってTVアニメ版を見た時、アイドルたちの可愛らしさと作品のクオリティの高さに驚かいた。
弱小の芸能事務所「765プロ」に所属する12+1人のアイドルと彼女たちを支えるプロデューサーが奮闘する1年の物語が描かれる。2クールを通して、それぞれのアイドルたちが悩み乗り越えて成長する姿、それを見守るプロデューサーの視点を通して、まさにゲームプレイに等しい体験が得られる。

ただ今作に関しては、『アイマス』というブランドの大きさも相まって、年々埋もれてしまっている”アニメ独自の魅力”があるように思う。放送から15年、アイマス20周年、そして錦織監督の新作が今年公開というこのタイミングで、”TVアニメとしての”『アイドルマスター』=「アニマス」を自分なりに振り返ってみたい。
(ものすごく初歩的な感想もあるので、もしベテラン”プロデューサー”がいましたらお手柔らかに)

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『アイドルマスター』
原作:バンダイナムコゲームス
監督:錦織敦史
シリーズ構成:待田堂子、錦織敦史
キャラクターデザイン:窪岡俊之(原案)、錦織敦史
アニメーション制作 A-1 Pictures
製作:PROJECT iM@S、TBS
放送:2011年7月7日 - 12月22日
話数:全25話 + 特別編1話


”みんなオンリーワン”のストーリー

TVアニメ版では、原作ゲームの設定やエピソードを拾いつつ、新規視聴者を基準としたアニメ独自のストーリーが展開する。またシナリオ制作の際に掲げられた“群像劇”であること、キャラクター全員にスポットを当てること、という2つの方針もTVアニメ版の大きな特徴だ。その具体的な構成や制作経緯についてはWikipediaにもわりと詳しく載っているので割愛し、ここでは簡単な構成の解説のみ引用させてもらう。


以下、Wikipedia
序盤の展開では主要登場人物の人柄を積み重ねて描くことで、後の見せ場に向けて視聴者の感情移入を促していく構成が取られている。中盤の山場を経て、物語後半では登場人物たちの掘り下げが行われ、最終的には「765プロのアイドル」の定義や方向性を問い直すことが試みられた。


これに付け加えるなら、大きな意味と小さな意味での構成の上手さ。
まず天海春香如月千早星井美希という、後にシリーズ恒例の”信号機”(イメージカラーが赤・青・黄)とも呼ばれるポジションの3人の扱いについて。「アニマス」では、いわゆる”お当番回”形式で他10人のエピソードを描きつつ、クライマックスを中盤・後半・終盤に分けて3人のドラマがゆっくり進行していく構成になっている。

まず最初の山場になる6話~13話では、美希をはじめとしたアイドルたちのストーリーが描かれた。ゲームで描かれた”覚醒したら強い”という彼女のキャッチーなキャラクターを活かし、地道な伏線張りから折り返しの13話で大活躍するという構成は、まさに”成長を見届ける”というアニメの導入も踏まえた道筋になっていた。続く後半戦では、千早と春香に関しては、「アイマス」の根幹に関わるキャラクターとして、2クールを跨いだ壮大な伏線が回収された。
キャラクターの成長を感動的に見せるためには、やっぱり1クール分くらいの時間は欲しいし、逆に大まかにメインを3人に据えたこと、それを2クールというの長尺の折り返しやクライマックスに上手く配置したことで、ストーリーのメリハリができた。

また小さな意味では、1話ごとの複合的なプロットもよく練られている。
1話の構成のパターン基本的に、アイドル1人のお当番回、クールの節目に全体ライブ回、その中間にあたるグループやカップリング回という2+1タイプに分けられる。だが先述のとおり、お当番回の裏でメイン3人のドラマが進行していたり、1エピソード内で2つのドラマが交錯していることも多々ある。特に導入あたる前半パートではその特徴が色濃く、プロデューサー回や伊織とやよいの回をはじめ、6-11話のエピソードにはすべて当てはまる。この辺りは、純粋に脚本のレベルの高さとその構成にかけた時間の長さが伺える。だからこそ、15話の生放送回みたいな冒険ができたのかもしれない。

「プロデューサー」の登場

これまで散々語られている事だろうが、「アニマス」最大の功績は”赤羽根P”ことプロデューサーの存在だろう。
ゲームのプレイヤーにあたる「プロデューサー」をキャラクターとして登場させるたことで、彼を主人公としたアイドルとの交流と成長がドラマの軸として機能している。特に第1話では、ゲーム画面を思わせるテロップの会話から、実際に赤羽根Pがアイドルたちの前に登場する展開が描かれ、まさにゲームの視点から物語へとスムーズに切り替える巧みな構成になっていた。後の内容に被るが、このメタ的な仕組みが『ジークアクス』や『エヴァ』にも共通する「ガイナックス」らしい系譜だったのは、最近見返して気づいたこと。

ただ、ここで少し触れておきたいのは1クールと2クールで、プロデューサーとアイドルの関わり方が少し変わっている事。先述の通り、前半が『アイドルマスター』の導入としてプロデューサーの視点を強調したものであるのに対し、後半からはアイドルの内面に寄ったストーリーが多い。例を挙げれば16話ではペットたちに助けられる響、20話では春香に手を差し伸べられた千早、そして24話では自分自身で答を見つけた春香と、アイドル自身が困難に向き合う一方で、主人公としてのプロデューサーの役割が少し薄くなってしまった部分は否めない。もっとも、TVの続編として制作された劇場版の内容を踏まえれば、プロデューサーの不在によって、ゲームの枠組みを超えたアイドルたちの成長していく姿を描く意図的なのものだったとも思う。だが現実に、コンテンツとしての「アイマス」が、アニメ・ゲーム・マンガで多方面に展開していく中で、「プロデューサー」というプレイヤーの立ち位置が形骸化していく部分があったのも確か。そういう意味では、プロデューサーとアイドルの終着点は、高雄統子が監督を引き継いだ『デレアニ』に託されたということだろうか。

女の子が最高にかわいい”錦織タッチ”

『グレンラガン』『シン・エヴァ』でキャラクターデザインを担当する錦織敦史が、監督とキャラクターデザインを務め、イラスト1枚でも伝わるそのセンスが存分に発揮されている。もともと3Dモデルのクオリティが評価されていたゲーム版に対して、線の緩みやちょっとした作画の崩れさえもポリゴンにない“イレギュラーさ”として、世界観に厚みを与えている。また終盤のシリアスな展開に対して、明るい画風によって自然とバランスが取れていた点も良いとこだった。
実際、監督がキャラクターデザイン/シリーズ構成/脚本/絵コンテ/演出/作監/原画までこなし、TVアニメとしては異例のワンオペに近い状況(もちろん様々なスタッフとの共作だが)だったりする。それは、もともと『アイドルマスター』の熱烈なファンであった錦織さんだから、なせる業かもしれない....。

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※錦織監督は『グレンラガン』の制作が佳境の中、
睡眠時間を削ってXbox 360版「アイマス」をプレイして、全キャラのエンディングを見たらしい

「ガイナックス」と「京都アニ」、そして「A-1」の合体

「アニマス」の制作会社は同じ年に『あの花』のヒットに沸いたばかりのA-1 Picturesだった。だが監督の錦織敦史(『天元突破グレンラガン』キャラクターデザイン他)・シリーズ演出の高雄統子(「『CLANNAD』絵コンテ・演出他)をはじめ、奇しくも「ガイナックス」と「京都アニメーション」出身のスタッフが集まったような編成になっているのが面白い。奇抜なクリエイターが多く、アニメーター的なセンスを前面に出したガイナックスおよびスタジオカラーやトリガー系と繊細なアニメーションと演出を得意とする京アニ。それぞれ高い技術を持ったスタッフが集まるスタジオでありながら、作風や成り立ちが異なる環境で育ったクリエイターが出会うことで多くの刺激があったと思う。そもそもアーケード立ち上げ時からキャラクターデザインを担当した窪岡俊之(『トップをねらえ!』『ジャイアントロボ 地球が静止する日』キャラクターデザイン)はガイナックスと関係の深い人物だったりする。

”化学変化”と”オムニバス”の魅力

前述のスタッフ編成の所以もあり、2クールを通して絵コンテや演出に数々のスタッフが参加している。演出デビューを飾った赤井俊文(『Fate/Grand Order』監督)をはじめ、ガイナックスやufotableにも所属した柴田由香(『バクテン!!』キャラクターデザイン)、名アニメーターでもある横山彰利(『カウボーイビバップ』『電脳コイル』演出)、業界ベテランの舛成孝二(『宇宙ショーへようこそ!』監督)、鶴巻和哉(『ジークアクス』監督)、今石洋之(『グレンラガン』監督)、雨宮哲(『SSSS.GURIDMAN』監督)が演出や絵コンテとして参加している。また作画面では飯塚 晴子(『ウィッチウォッチ』キャラクターデザイン、『リコリス』監督の足立慎吾とご夫婦)、松尾 祐輔(『ヤマノススメ』キャラクターデザイン)、川上哲也(『負けヒロインが多すぎる!』キャラクターデザイン)、すしお(『キルラキル』キャラクターデザイン)をはじめとするスタッフが参加した。また脚本関係では待田堂子(『らき☆すた』シリーズ構成)、髙橋龍也(『刀使ノ巫女』シリーズ構成、PCゲーム『ToHeart』の企画・脚本)等が名前を連ね、ベテランと新進気鋭のクリエイターが交わる刺激的な現場だったことが伺える。

また様々な経歴のスタッフが参加したことで生まれたオムニバス感も「アニマス」の特徴だ。千早のトラウマに触れるシリアスな回から、「生っすか」のようなメタフィクションまで、各話数で光る演出や作画の違いを楽しめるのは、その後のアニメシリーズにない良いところだろう。逆に、765プロのキャラ設定に厳格なルールを定めることで、それ以外は何をやっても成立する度量の大きさはシリーズ初期ならでとも言える。

最高の"二次創作アニメ"

2010-2015年頃は、まさに『アイマス』の世界が拡張していった時代。だが初期のアイマス人気を支えていたニコニコや2ちゃんだったというのも、今や定説。加えて「アイマス」では、ライブやラジオの発言をはじめ、開発初期からキャラクターに”中の人”のパーソナリティを反映させる機会が多かった。そんな公式と非公式がごちゃ混ぜになった、いわば”カオス”の中、「アニマス」が二次ネタを取り込んだことで、改めてファンの存在を公に認めたと同時に、ある種”一つの可能性”として楽しめるガイドラインを引いた部分もある。この二次創作的な流れが色濃いのも、今に続く「アイドルマスター」ならではの特色になっている。

一方で、その背景にはTVアニメ以前のコンテンツが、ファンの熱を上手く活かしきれていなかった状況もあったと思う。またこのTVアニメ自体も、キャストや石原章弘ディレクターをはじめとしたゲームのスタッフが試行錯誤してきた時間だったり、アニメ化を実現させた鳥羽洋典Pたちの奮闘、経歴の異なる新進気鋭のスタッフが集まった制作現場や、錦織監督がアイマスの熱烈なファンだったこと….、ファンとクリエイターのカオスな濁流が交わることで起きた超新星爆発だったようにも思える。そして、「アニマス」に限らず、あらゆる作品に共通することではあるが、今同じスタッフで集またとしてもおそらく同じ作品を作れないことを加えておきたい。
劇中のアイドルたちと同じように、命を削るような思いで作品に挑んだ結果だと思もう。そういう意味では、まさに、その一瞬にキラメいた奇跡に近い一本なのかもしれない。

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と、全文通して青臭い考察でしたが、最後までご拝読いただきありがとうございました。機会があれば、数字データや演出を切り取った考察もしてみたところです。

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