高市首相「日本はこれからレアアースに困らない」→「ミスリード」
ファクトチェック対象
高市早苗首相
「レアアース、2月になってうれしいニュースありましたよね。南鳥島の深い深い海の底6千メートル、そこからレアアース泥の引き揚げにようやく成功しました。10年以上前に発見されてから取り組みは進めてきた。私も担当大臣として、準備はしてきた」
「だから日本は、これから今の世代も次の世代もレアアースには困らない」
この発言について、佐藤啓官房副長官は5日午前の会見で根拠を問われ「自民党総裁としての発言に、政府の立場でのコメントは差し控える。レアアース(希土類)の安定供給確保に向けては、鉱山開発や供給源の多角化、研究開発が重要だと認識している」などと述べた。高市氏の事務所に根拠を尋ねたが、5日夜までに回答はなかった。
確認したのは採取の技術
レアアースは、スマホや防衛装備品などの精密機械に欠かせない資源で、米地質調査所(USGS)によると、2024年は世界生産量の7割を中国が占めた。日本が自国で生産体制を築けるかどうかは、経済安全保障上も重要となっている。
10年には尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件を受けて、中国が対日輸出を事実上禁止した。近年は、中国も外交上のカードとして意識し、輸出規制を強めている。
高市首相が紹介した「ニュース」は、今月2日にもたらされた。
自国供給をめざす政府主導の研究チームは2日、東京・南鳥島周辺の排他的経済水域(EEZ)で、水深約5700メートルの海底から、レアアースを含む可能性のある泥の引き揚げに成功したと発表した。この海域では、東京大の研究グループの2010年以降の調査で、レアアースを豊富に含むことが明らかになっていた(https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/articles/z0508_00070.html)。調査結果は英科学誌(https://doi.org/10.1038/s41598-018-23948-5
)に掲載された。
今回の試験は、機器の性能や作業手順を確認し、泥の引き揚げが技術的に可能かどうかの検証を目的とした(https://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20251223/)。船からパイプを下ろし、海底の泥に海水を混ぜて軟らかくして引き揚げる一連の工程を試し、実際に泥を採ることができた。泥の中にレアアースが含まれているかどうかの分析は、15日に探査船が帰港してからになる。
量、採算性の評価はこれから
技術が確認されても、実際に多くの泥を採り続けられるか、採算が見合うかは別の話で、これから研究チームが時間をかけて試験して評価する予定だ。
今回の技術確認をうけて、研究チームは27年2月から、1日最大350トンの泥を引き揚げることを目標に、本格的な採鉱試験に進むとしている。
また、その試験の結果をみて採算性を評価する。採算性がなければ民間が参入しづらく、安定供給につながらない。深海からの採掘をめぐっては、大型船で泥を連日引き揚げ、精錬に向けた前処理や本土への長距離輸送は、陸上鉱山での採掘に比べて構造的にコスト高になりやすいことが指摘されてきた。
研究チームによる報告書は、28年3月までに提出される見通し。
精錬技術、汚染対策も必要
レアアースの安定供給には、海底からの引き揚げだけでなく、不純物を取り除いてレアアースを取り出す精錬技術も必要になる。
さらに、精錬には塩酸、硫酸などを大量に使うため、処理工場の周辺で起きる環境影響が課題になる可能性があり、環境汚染対策の費用もかかってくる。
資源開発に強みを持つ三井物産の安永竜夫会長(日本貿易会会長)は、昨年9月の会見で「精錬していくプロセスが何十年も、中国以外で開発されていない」などと言及した。
【判定結果=ミスリード】
今回の引き揚げ、レアアースの自国供給へ第一歩を踏み出したことは確かだが、安定してどれだけ採れるか、民間が担えるほど採算性があるか、環境対策をした上で精錬できるかなどの見極めは、まだこれからで、誇張した表現。現時点で「困らない」と言うには根拠が薄く、誤解を招く。