俺は自分の中にあるギアを数段あげる
すると俺はさらに加速する
すでに音速は超えただろうか
(あと何分で着く?…急げ!急げ俺!)
俺の中で2年前の記憶が蘇る
砂漠で瀕死の状態で倒れていたユメ先輩…その姿がセリカちゃんに置き換わる
(繰り返すのか俺は!また同じように!)
あの時…もっと早く気付いていれば…もっと早く駆けつけることができたなら…もっと…もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと…俺が…強ければ…ユメ先輩は傷付かなかった…ユメ先輩とホシノを…2人を泣かせることなんて…無かった…
「チッ!出し惜しみしてる場合じゃねぇ!もう二度とあんなことを繰り返すのは御免だ!」
俺はそれを使う
「【神秘反転】…【恐怖開放】」
次の瞬間…俺の神秘は反転し恐怖へと変わる
髪は白くなり瞳は紅く染まる
走る速度が爆発的に上がり亜光速にまで達する
(そろそろ着くな)
俺は空に全力で飛ぶ
そして
「…見つけた」
俺は空気を足場にし…空気を蹴った
セリカは揺れを感じて意識を取り戻す。
「う、うーん……。へ?」
目を開けると、薄暗い空間が広がっている。そして天井・壁・床の順で見回し、今自分が長方形の中にいることが分かった。
何故こんなところにいるのか、記憶を遡る。
午前中に先生に会って。付いてこられて、追い払って。バイトに行って。そしたらホシノ先輩によって、先生と仲間を連れて来られて。定時に帰って、それで……。
そうして自分の身に起きたことを思い出す。
「そうだ、私攫われた!―――くっ……あ、頭が」
ヘルメット団に攫われたのだ。意識を失う前、Flak41改の爆発音を聞いたことから、それを喰らったのだとセリカは理解した。
頭も身体も痛むのも、それが原因だろう。
立ち上がろうとするが両手は後ろで縛られていた。いまだダメージが残ってるようで、立ち上がることは難しい。
長方形の薄暗い空間と、その中で積まれた段ボール箱。セリカは今いる場所を理解する。
「ここ……トラックの荷台。……ヘルメット団め、私をどこに連れていくつもりよ」
うつ伏せの状態のためか、時折くる振動に息を溢しながらセリカは現状を理解した。視線を動かして、ある場所に目を留める。
「……暗い、けど。あの隙間から外が見れそうね」
唸りながら、爪先で床を押して芋虫のように這う。そして荷台の隙間に顔を近づけて外の様子を確認した。
「……砂漠……線路!? 線路がある場所って……ま、まさかここ、アビドス郊外の砂漠!?」
一面の砂に点々と見える廃墟。砂に埋もれかけている線路も見える。そこから自身が今どの地点にいるのかを理解して、セリカは顔を青褪めさせた。
「……そ、そんな。ここからじゃ、どこにも連絡が取れない! もし脱出したとしても、対策委員会の皆にどうやって知らせれば……。どうしよ、みんな心配しているだろうな……」
愛銃はない。当然だ。ヘルメット団は万が一を考える。セリカがいる場所に彼女の武器を置くわけがない。
連絡手段はある。だが恐らく近辺の通信設備の問題で、繋がらない。
そもそも両手が封じられているため、どちらにしろ連絡は不可能だ。
どれだけ考えてもいい結果は見えず、最悪の結末しか思い浮かばない。そうしているうちに思考はどんどんネガティブな方向に沈み込んでいった。
「……このまま何処かに埋められちゃうのかな。誰にも気付かれない様に……。連絡も途絶えて……私も他の子達みたいに、街を去ったと思われるんだろうな……裏切ったって……思われるのかな。誤解されたまま、皆に会えないまま死ぬなんて……」
『死』。
その一言を口にして、身体中に寒気が走る。
一番嫌なのは、誰にも気付かれず、仲間達には裏切られたと思われることだ。
対策委員会の部室で過ごした最愛の日々。その風景が灰色に染まり、罅が入るイメージが頭に流れた。
もうあの頃に戻れないのかもしれない。せめて別れの言葉ぐらい残したい。そんなマイナスな感情に襲われ、耐えるもののまだ少女であるセリカにとって、涙を流さないのは無理だった。
「う、う、ぐぅ……! うっ、ううっ…だれか…たすけて」
次の瞬間
トラックが凄い勢いで揺れた
そして入口が開き…聞き覚えのある声が聞こえた
「セリカちゃん無事か?」
髪は白くなり…瞳は紅くなっていたけれど…その人は間違いなく
「ゆき…と…さん?」
ユキトさんだった
「そうだよ〜連邦生徒会の副会長にして怠け者で遅刻魔なユキトさんだぜッ☆」ピース&キラッ
「あはは…なんですか…それ」
「…良かった」
ユキトさんはそう言うと私を抱きしめてくれた
「ゆ…ゆきとさん!?」
「…怖かったろ…ごめんなセリカちゃん…遅くなった」
その言葉におふざけは一切なく…ただただ優しい言葉だった
自然と涙が溢れた
「こわ…かった…すごくこわかった…みんなに…もう会えないんじゃないかって…それで「もう大丈夫だよ…セリカ」ゆきと…さん」
「俺がいる限りアビドスの生徒は絶対に死なせない…俺が君を皆のところに必ず帰す…約束する」
私は…子供のように泣いた…