(社説)きょうは投票日 違和感に耳をすませて

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 信号待ちの交差点で。吹雪の向こうから届く声で。スマホの中で。急に決まった「選挙」が、私たちの生活圏に飛び込んで来た12日間だった。

 気になる党首を一目見ようと、街頭演説会場まで出向いた人もいるだろう。

 候補者や党首らが語った内容に、納得できただろうか。もしも、期待した話題が語られず、けむに巻かれたように感じたならば、投票までの時間、もう一度考えてみたい。

 暮らしはどうすればもう少し楽になるか。どんな社会に生きたいか。どんな国にはなってほしくないか。そのために必要な政策と、望まない政策は。その政策を実現・制止できそうな候補者や政党は。

 社説は、注目すべきだと考える争点を12回にわたり示してきた=表。とりわけ「安保政策」と、選択的夫婦別姓など「個人の生き方」の尊重に関わる問題への対応は、高市政権を特徴づけるものだ。

 ■「スピード」の陰で

 政治家は有権者に託された権力を持つ。力が強く発揮されるのは予算の配分や立法だが、「時間」の振り分けでも力をふるう。どの問題を優先し、どれほど時間を注いで取り組むかを決める力だ。

 12の争点の中には、高市首相も反対する選択的夫婦別姓のように、長年塩漬けにされる問題もある。一方で、打ち出の小づちを振るようには答えが出ない問題も多い。対応の「スピード感」に目を奪われず、開かれた場で議論がなされてきたか、結果が出ているかを、見る必要がある。「停滞」の対義語は「速さ」ではない。一見わかりやすい二者択一に陥って熟議を失ってはならない。

 失われるものには目をくれぬスピード解散・選挙そのものが、現政権の優先順位を物語る。予算審議は後回しにされ、469日前に一票を託したばかりの議員が活動できたはずの時間は戻らない。

 障害や病気があり移動手段の確保などが必要な人は、降雪期の急な実施で選挙権の行使も脅かされた。悪天候の地域では安全最優先だが、行ける人は、行けない人の思いも背負い投票に行こう。買い物ならば急に迫られた契約は断ればいいが、棄権は現状の黙認とみなされかねない。

 「争点つぶし」のためなら公約を他党に寄せてみせることもいとわない「選挙のプロ」たちと、有権者の間の情報の格差は大きい。公約で掲げられる美しい理念、アピールされる成果と、政党・政治家の実際の言動に乖離(かいり)がないかにも注意したい。例えば「平和」「子育てしやすく」「民主主義」といった言葉に、どんな意味がこめられているか。実現する手段として語られている内容は。その政策は何を目的にしているか。

 ■誰のための政治か

 気になる争点に関する候補者のこれまでの言動は、ネット上の国会会議録検索システムや記事で確認できる。政治家は、忘れっぽい。記憶をたどり記録を見返す一手間が、有権者を政治家と対等に近づけてくれる。

 例えば前回衆院選では投票の判断材料にした人も多かったであろう、裏金や旧統一教会との関係の問題。「誰のために政治をしているか」の不透明さが明るみに出た問題だったが、あれから霧は晴れただろうか。

 演説を聞くと、明るく威勢のいい主張に、胸が高鳴ることもある。でも、自分の中の「違和感」にも耳をすませたい。柔らかい言葉遣いの中に紛れ込んだ、外国人や性的少数者など特定の属性の人をおとしめる主張に、ざらりとしなかったか。問題を指摘する人もいる言葉を、決めゼリフのように繰り返されて笑えたか。政治は一時の恋人でなく、生活をともにする相手だ。刺激よりも、人間を大切にできる相手を選びたい。

 あまりに女性が少ない政治の風景の中にようやく誕生した女性首相が、とりわけ新鮮に見える場面がある。「首相が女性である」状態への支持や、「何か」が変わることへの期待をこめた一票でも、選挙では政策への支持とみなされる。首相の女性としての経験などから、期待する具体的政策があるという人は、公約や発言の中に見つかるか、事前に確認してみたい。

 選挙結果は、政治家への審判であるだけでなく、主権者である国民の、これまでの民主主義への通信簿である。

 選挙が終われば新しい学期が始まる。当選した議員に働きかける、ネット署名やグループを作って意見表明するなど、選挙以外で政策に関わる方法は多数ある。選挙結果を白紙委任と勘違いした暴走が起きぬよう、国会の外から、政府・国会への批判や監視、提言を続けることが重要だ。

 ■公示日翌日以降の衆院選関連社説

 1/28 経済政策 将来への責任を語れ

 1/29 個人の生き方 国家にのまれぬよう

 1/30 安保政策 厳格な歯止め議論を

 1/31 社会保障 「将来の私」想像して

 1/31 対中外交 打開の姿勢が見えぬ

 2/1 外国人政策 違い超える包容力を

 2/2 未来への争点 一歩引いて見渡そう

 2/3 対米関係 力の支配許さぬ道を

 2/3 労働政策 なぜいま規制緩和

 2/4 沖縄の基地 負担軽減に具体策を

 2/5 スパイ防止法 権利侵害を懸念する

 2/6 語らぬ首相 拭えない逃げの姿勢

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