中道、想定超える惨敗「厳粛、謙虚に受け止め」 立て直しは多難な道

 政権への対抗軸を目指した中道改革連合だったが、失速は激しく、想定を超える惨敗に終わった。多党化のなかで「多弱」に陥った野党は埋没。高市政権が国民的議論を欠いたまま政策転換を押し通そうとした場合、チェック機能やブレーキ役を果たせるのか存在意義が問われる。

 中道は2大勢力が緊張感をもって対峙(たいじ)する政治を目指したが、その足がかりすら作れなかった。

 9日未明に記者会見した野田佳彦共同代表は、惨敗という結果について「厳粛、謙虚に受け止めたい。短期決戦のなかで政策論争の機会を失した」と述べた。

 野党第1党の立憲民主党と、昨年秋に自民との連立政権から離脱した公明党の衆院議員が合流した中道。高市政権の「右傾化」に対抗し、綱領では「国家やイデオロギーのために国民を従わせる政治ではなく、人間の尊厳を守り抜く政治を我が国の中心に据え直す」とうたい、「多様性」「共生」を強調した。党勢低迷に苦しむ両党には大きな賭けでもあった。

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小選挙区で落選見込みとなり、支援者に感謝の言葉を述べて回る中道改革連合の馬淵澄夫氏=2026年2月8日午後8時26分、奈良市、内海日和撮影

 新党結成は、「急襲解散」を仕掛けた高市政権にしっぺ返しをする形に。野田氏は「政界再編の一里塚にしたい」と意気込んだ。

 しかし、選挙戦は終始、「高市人気」に押された。野田、斉藤鉄夫両共同代表は劣勢をはね返すように、首相が掲げる「責任ある積極財政」や非核三原則の堅持を明言しない姿勢などへの批判を展開。公明出身の斉藤氏は連立離脱の決め手となった自民の裏金問題に言及し、「(衆院選は)裏金議員の復活が目的ではないか。こんな選挙は許されない」と訴えた。

反転攻勢の糸口見えず…繰り返した批判

 党内からは「相手の批判ばかりするのはやめたほうがいい」との声が上がった。それでも批判の手を緩めなかったのは、他に反転攻勢の有効な手立てを見いだせなかったからでもある。

 昨夏の参院選では、無党派層が新興政党に流れ、既存政党への忌避感が浮き彫りになった。立憲を支援する労働組合の中央組織・連合の関係者は、衆院選で無党派層に支持が広がらなかった要因をこう分析する。「立憲代表だった野田氏と、公明代表だった斉藤氏が中道の『顔』となり、既存政党だと見なされたことが大きい」。党名の浸透を図る時間も足りなかった。

 さらに、頼りとした連合と公明の支持母体・創価学会も、長らく与野党で対立してきた経緯から、強固な共闘態勢を整えられなかった。

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落選が確実となり、支持者らに頭を下げる中道の海江田万里氏=2026年2月8日午後9時3分、東京都新宿区、友永翔大撮影

 衆院選の惨敗を受け、焦点は党の立て直しに移るが、前途は多難だ。

 立憲は公明と歩調を合わせるため、安全保障法制について「違憲部分の廃止」から「合憲」に立場を転じ、「原発ゼロ」を明示しなくなった。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設への賛否も定まらない。選挙戦では、他党から「選挙互助会」と批判された。「リベラル」から「中道」に軸足を移したことで、立憲支持層が離れていくとの懸念も抱えることになった。

 もう一つの譲歩は、公明出身者の「比例優遇」だ。中道は、立憲出身者が小選挙区で公明側の支援を受ける代わりに、比例名簿の上位に公明出身者を登載。小選挙区での完敗に伴い、党内の公明出身者の比率は高まる。立憲側には「公明に譲りすぎだ」との不満が渦巻く。

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厳しい情勢を受け、開票センターでの取材中に支持者に頭を下げる中道の中野洋昌共同幹事長=2026年2月8日午後8時26分、東京都港区、上田幸一撮影

 出足から勢いを欠き、内輪もめの火種を抱える窮状に、立憲と公明に残ったままの参院議員や地方組織の合流は見通せない。中道瓦解(がかい)の可能性もささやかれるが、幹部は存在意義を訴える。「高市政権が進もうとしている道は本当に危ない。中道のかたまりをなくしてはいけない」

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    木下ちがや
    (政治社会学者)
    2026年2月8日23時45分 投稿
    【視点】

    自民党陣営にとっては、党の歴史上最高の議席を獲得できるほどの「手ごたえ」はなかったのではないか。逆に中道改革連合陣営にとっては、これほどの大敗を被る「手ごたえのなさ」は感じなかったのではないだろうか。どちらの陣営からも、実感と結果との乖離の声が聞こえる。高市総理を推す民意の風は、両陣営のはるか頭上の成層圏で吹いたようだ。 突然の解散と慌ただしい新党の結成により、積み上げ型の組織戦が十分に機能しなかった面はいなめない。ただそれ以上に、東京都知事選、兵庫県知事選、宮城県知事選と、ここ数年急激に台頭したポピュリズムのウェーブがついに国政をつかんだことが、選挙戦全体の趨勢を決定づけたと思われる。既成政治を否定するアウトサイダー的手法が選挙戦のフレーム(構図)を枠づけ、その枠にSNSの情報が充満することで、大規模な投票動員が可能になる。地道な対話と宣伝による票の積み上げよりも、一人のカリスマが民意を代弁する政治のあり方には、保守・リベラル問わず危機感を覚える人は少なくないはずだ。 「私」ひとりの力で3分の2を超える絶対多数の議席を獲得した。「私」は一人いればいいわけだから、自民党議員は議場で賛成票を投じるただのコマに過ぎなくなる。そうなれば党組織も不要となる。今後自民党の組織基盤はますます衰退していくだろう。 だからこそ中道改革連合は、組織基盤を守り抜かなければならない。それは与党からカリスマが去り、衰退した与党が次のカリスマに依存するという悪循環を断ち切り、来るべき日に民意の受け皿になるためである。もちろん世代交代と党改革は必須ではある。だがそれは基盤的組織を活かす方向でなされるべきだ。今回の総選挙で街頭や地域活動に集った無数の人々の熱意と願いを組織の器にしっかりと保存し、次の闘いに備えなければならない。

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    伊藤昌亮
    (成蹊大学文学部現代社会学科教授)
    2026年2月9日3時30分 投稿
    【視点】

    高市氏の右傾化に抗するとして中道は左右対立の枠組みを強調しましたが、多くの有権者、とくに若い人たちにはそれは響かず、実際には新旧対立、それも疑似的なそれの観点から、印象による判断がなされたのではないでしょうか。そうすると、元気でフレッシュな高市氏に比べ、中道のお二人はどうしても「オールド連合」に見えてしまいます。 加えてより根本的な「古さ」として、リベラル派の思想そのものの「古さ」もあるでしょう。「反安保」「反差別」「反貧困」がその三本柱でしょうが、まず「反安保」は、「ずっとやってる」感があるのでもう訴求力がなく、一方で「反差別」は、「今や当たり前」感があるので争点化されにくく、さらに「反貧困」ですが、近年では貧困層よりも中間層の苦境のほうが問題化されやすい、という状況があります。 こうしたことからするとリベラル派は、その印象面でも思想面でも何らかの「新しさ」を見出す必要があるのではないでしょうか。

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