払った賠償金を公務員個人に請求、どんな仕組み? 5千万円超の例も
機械メーカー「大川原化工機」の冤罪(えんざい)事件を受けて東京都側が払った約1億8500万円の損害賠償について、捜査を担当した当時の警視庁公安部の幹部ら3人に対し、警視庁は計528万円の負担を求めた。違法捜査で生じた賠償金を、捜査に関わった警察官個人に負担させるのは極めて異例だ。
国や自治体などが払った賠償金について、問題に関わった公務員個人に負担を求めることは「求償権の行使」という。どんな仕組みで、過去にはどんな例があるのか。
「故意または重大な過失」があると
国家賠償法は、公務員の仕事によって他人が損害を被った場合は「国や自治体が賠償する」と定めており、公務員個人に負担を求めることは少ない。公務員が萎縮したり、職務の運営に悪影響が出たりする事態を防ぐためと考えられている。
ただ同法には、公務員に「故意または重大な過失」があった時に限り、国や自治体は、払った賠償金を公務員個人に請求できるとの規定もある。
過去には、学校のプールでの注水ミスなどにより、教育委員会が教員に水道代を請求した例がある。川崎市教委は2023年、プールの水をあふれさせたとして小学校の校長や教諭に対し、かかった水道代の半額にあたる約95万円を請求。校長側が払った。
個人の責任、どこまで
高額な請求を裁判所が認めた例もある。
19年に消防職員が自死したのは元上司のパワハラが原因だったとして、職員の遺族が上益城消防組合(熊本県御船町)を提訴。熊本地裁は24年2月の判決で、組合に賠償を命じた。
その後、組合は遺族に払った1億930万円のうち、この元上司に8800万円を負担させるために提訴。熊本地裁は25年7月、元上司に約5400万円の支払いを命じる判決を言い渡した。
組合がパワハラを防げなかったことも踏まえ、遺族に賠償したお金の「5割」を元上司に請求できると判断した。元上司は判決を不服として控訴している。
一方、都が求償権を行使した大川原化工機の冤罪事件は、組織として「捜査の暴走」を防げなかった問題であり、個人によるパワハラなどとは性質が異なる。
3人に対する請求は、大川原化工機側が「違法捜査を抑止するため」として求償権行使を求めたことがきっかけだった。組織による冤罪について、個人にどこまで責任を負わせるべきか、議論を呼びそうだ。
大川原化工機冤罪事件
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