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BOOTHの3Dモデル取扱高が約104億円に。日本発ECはVRChatアバター市場を牽引するか

ガジェットライター
(Image: pixiv)

2026年2月6日(金)、pixivが運営する総合マーケットプレイスBOOTHは「BOOTH 3Dモデルカテゴリ取引白書2026」を公開しました。そこに載る数字が、いまの「デジタルの服・体」ビジネスの熱量をはっきり示しています。

2025年の3Dモデルカテゴリ取扱高(流通総額)は、約104億円。2024年の約58億円にも世界が驚いたものですが、ついに100億円を突破しました。

ここでいう3Dモデルは、ゲーム制作などにつかうためのアイテム・アセットというより、アバターと、その服や髪型、小物などの自己表現のパーツが中心です。とくにBOOTHの場合、その多くがソーシャルサービス「VRChat」で使われる用途を強く意識したものだと、「BOOTH 3Dモデルカテゴリ取引白書2026」本文でも明確に触れられています。

VRChatは「好きなキャラ」ではなく「なりたい自分」になる場所

一般的なゲームやSNSのアバター選びは、「推し」「好きな作品」「可愛いから」など既存のキャラクターを選ぶ価値観が中心です。一方でVRChatは、ユーザーが"なりたい自分になる”ことを目的として、顔・体型・髪色・メイク・衣装の組み合わせを作り込み続ける文化が強くなってきています。

(VRChatにおいても、「推し」「好きな作品」「可愛いから」でアバターを選ぶ人もいます。事実、ドラゴンボールや呪術廻戦、ナルトやチェンソーマンなど、権利者には無許可で作成されたアニメキャラのアバターを好むユーザーも多く存在します)

VRChat公式の案内でも、アバターは「自分を表現する方法」であり、BOOTHやGumroadといった外部マーケットで購入して、Unityでアップロードする流れが説明されています。この導線は、アバターを更新し続ける自己表現の軸にします。結果として、アバターを彩るアイテムの購入や、新しいアバターを導入するなど、購入が継続しやすい構造になります。

なおVRChat自身もアバターマーケットプレイス機能を提供していますが、”着替える”というパーソナライズの要素が極めて弱く、残念ながらアバターを1回買って終わり、となりがちです。

伸びているのは「人数」より「回数」

「BOOTH 3Dモデルカテゴリ取引白書2026」で注目したいのは取扱高だけではありません。2025年の注文件数は約774万件に到達し、注文者数の伸び以上に注文件数が伸びている、つまり「1人あたりの購入回数が増えている」傾向が示されています。

価格帯では5,000~6,999円が最も多い取引レンジとされ、さらに年間10万円以上支出する層が一定数いることも示されています。

デジタルアバターやバーチャルファッション1つが数千円という相場感。一般的なスマホゲームの課金感覚とは違いますが、“自分の見た目そのもの”に払う金額としては、むしろ自然に見える人が増えているのかもしれません。VRChatではなくRobloxユーザーからのインタビューで知ったことですが、「毎日着替えたい。バーチャルでも同じ服を着て友達と遊ぶのがいやだ」という子どもがいました。現実でも同様のシーンに遭遇した保護者の方は多いと思いますが、バーチャル内の自分も本当の自分だと認識しているユーザーが増えつつあるのでは、と考えていいでしょう。

BOOTHが強い理由は、クリエイターの収益設計のしやすさにある

BOOTHがVRChat向け3Dモデル流通で存在感を増した最大要因は、手数料が低いことでしょう。すなわち、クリエイターが利益を得やすい設計にあります。

BOOTHヘルプセンターでは、ダウンロード商品のサービス利用料を「商品価格×5.6%+45円」と明示しています。

重要なのは、こうしたコスト構造が事前に見えることです。価格設定と利益見込みが立てやすく、個人クリエイターでも事業として回しやすい土台になります。

さらに、「BOOTH 3Dモデルカテゴリ取引白書2026」は「(アクリルスタンドなどの)物理グッズや同人誌中心だったユーザーが、3Dモデルも買うようになったケースが増えている」と述べています。

BOOTHはもともと同人・創作の購買文化を抱えており、そこで育った買い手の習慣が3Dモデルへ移行している、買い手がVRChatに参加するようになったきた、という見方もできます。

新たにクリエイターとしてチャレンジする価値はあるか

情報源を秘匿することを条件に複数のクリエイターから話を聞きましたが、VRChat向けバーチャルファッションのクリエイターで、月商1000万円を超えたという方がいることをお伝えさせてください。

一方で、誰もが簡単に成功できるわけではなく、VRChat内のトレンドの理解や制作力、発信・プロモーションなどの戦略も必要だ、と聞きました。

もし新たに「自分たちでも商売ができるか」を考えるなら、鍵は2つです。3Dモデル制作のスキルと、需要の見極めです。

まず需要の見極めですが、お客さんの作業負担を減らす工夫です。VRChatでは衣装をアバターに合わせて着せる(フィッティングする)作業が発生しますが、この作業は主にゲームエンジンのUnityを使って行います。

誰もがUnityの操作に慣れているわけではありませんし、YouTubeなどには非対応衣装のフィッティング手順や改変フローを扱う解説も多く、手間がかかる領域だと分かります。

このため人気アバターに着せやすいように、フィッティング用のデータが付属している(またはオプションとして追加購入できる)ことが売れ行きに影響します。

制作面では、見た目だけでなくデータとしての軽さと、動いたときの破綻のしにくさが重要です。クリエイターとしては、細部まで作り込み、誰が見ても惚れ惚れするような作品を作りたいという気持ちがあると思います。しかし美しくしたいからポリゴン数もテクスチャも重量級のデータとしてしまうと、同じバーチャル空間にいる他のユーザーに負荷をかけてしまいます。このことから、”重いアバター/ファッション”を嫌うユーザーがいることを知っておかねばなりません。

動いたときの綺麗さも無視できません。VRChatはフルトラッキングセンサーを用いてダンスやライブ、演劇など、身体表現を前提にした活動が盛んです。またTikTokやYouTubeショートでは、VRChatのショート動画を公開するユーザーが増えてきています。動いたときに破綻していると、ネタとしていじられるだけではなく、「このブランドの服は買うのをやめよう」となってしまいがち。故に、動いても破綻しにくいモデリング知識と検証が重要です。

課題は多いですが、個人やコンパクトなチームで継続的に取り組むなら、収益を伸ばせる余地はあります。一方で企業として取り組む場合、企業が求める規模の利益を達成できるかは不確実です。ただし「明日の商売につながるコミュニティの創造・維持」「ファン層の理解」などを目的にするなら、挑戦する価値はあります。

2026年の展望 市場拡大は続くか

ここから先は筆者の予測になりますが、VRChatのアバター文化やバーチャルファッション事業、しいてはBOOTHの市場拡大を後押しする要素は2つあります。

1つ目は、BOOTH自身が機能改善を予告している点です。メッセージ機能や「ライブラリ」の検索性改善、新しい支払い方法の追加などを挙げています。「買った後に探せる」「やり取りしやすい」「支払いが増える」は、リピートして購入したくなるキッカケになります。

2つ目は、海外、とくに英語圏のアニメ・マンガ受容の広がりです。KAWAIIの概念が浸透し、さらにコロナ禍の2020年以降、アメリカではアニメがサブカルチャーからメインカルチャーへと大きく転換し、日本発の作品も、従来より広く受け入れられるようになりました。すべての人が日本のアニメ的アバターカルチャーを容認しているわけではありませんが、日本製の最先端デジタルファッションを積極的に求めている、グローバルなアニメ・日本文化ファン層は確実に成長しています。

そしてBOOTHで扱われている3Dモデルはアニメ的タッチを核とした日本的デザインの商品が多く、文化的な受容が進むほど、日本発のデジタル自己表現への需要が世界中で育つ可能性があります。

VRChat版のクローゼットの今後に期待

「BOOTH 3Dモデルカテゴリ取引白書2026」の結論として、BOOTHの3Dモデル市場の伸びは「一部の人が急に買った」よりも、「買う人が増え、繰り返し買う行動が強まった」構造変化として読み取れます。

アバターとファッションは、現実の服と同じく「自分をどう見せるか」の道具です。そのVRChat版のクローゼットが、日本発の創作文化と結びつきながら、目に見える規模に成長してきた。2026年の成長にも期待をしていいと考えて良いでしょう。

Source: pixiv

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ありがとうございます。
ガジェットライター

むしゃりょうた/Ryota Musha。1971年生まれ。埼玉県出身。1989年よりパソコン雑誌、ゲーム雑誌でライター活動を開始。現在はIT、AI、VR、デジタルガジェットの記事執筆が中心。元Kotaku Japan編集長。Facebook「WEBライター」グループ主宰。

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