打たせようとは思わない 陰で支える打撃投手の心得
横浜DeNAベイスターズ チーム付広報 渡辺雅弘
プロ野球は約3週間にわたるセ・パ交流戦が終わり、再びリーグ戦がスタートしました。横浜DeNAベイスターズは交流戦を9勝6敗3分けで終え、順位は2007年に並ぶ過去最高の3位となりました。惜しくも優勝は逃しましたが、投打ともにチーム状態は着実に上向いています。特に好調なのは打撃陣で、交流戦のチーム打率は12球団トップの2割9分7厘、24本塁打は同2位でした。
そんな打撃陣を陰ながら支えているのが打撃投手(バッティングピッチャー)と呼ばれるチームスタッフです。今回は「チームサポーターリーダー兼チーム付ゲームアナリスト兼バッティングピッチャー」というチーム随一の長い肩書を持つ三橋直樹に打撃投手として心掛けていることを聞きました。
三橋「現役選手のように自分の仕事がチームの勝利に直結することはありませんが、陰ながらチームに貢献すべく毎日グラウンドで汗を流しています。ベイスターズの1軍には9人の打撃投手がいます。自分が投げることが多いレギュラーは佐野恵太、ネフタリ・ソト、宮崎敏郎、牧秀悟ですね。他のチームのキャンプや打撃練習を見る機会もあるのですが、交流戦の結果が表すようにベイスターズの打撃陣には迫力があります。ビッグイニングを生み出す力はセ・リーグではトップだと思います」
三橋「自分が打撃投手としてチームに加わった時期と、宮崎が入団して1軍に定着した時期がほぼ同じなんです。その頃からの付き合いなので早出の相手を頼みやすいんじゃないですかね。彼の持ち味は巧みなバットコントロールだと思うのですが、入団当時からその能力はとても高かった。そしてなんといっても根気強さがあります。ホームゲームでは毎日プレーボールの7~8時間前には球場にやってきて、独自の確認作業を繰り返しています。調子の良いときも悪いときもそれは変わりません。バットを振っている量はチームで1番だと思いますね」
三橋「状態がどうであれ、練習ではみんなしっかりとボールを打ち返すんですよね。だから投げていても状態が良いとか悪いとかを感じることはあまりありません。打撃練習の内容が必ずしも試合の結果に反映されるわけでもありませんし。1軍でレギュラーをはっている選手というのは、こちらが投げミスさえしなければ確実にボールを捉える技術を持っています。例えば、ソトは交流戦で調子を上げた選手の一人だと思いますが、打撃練習の内容自体が変わったという印象はありません。今年は入国が遅れてオープン戦を経ずに1軍に合流していたので、交流戦前まで波に乗れていなかったのは単に試合勘の問題だったのかなと」
三橋「自分たちが多少のボール球を投げたとしても、彼らはそれをバットの芯で捉えることができてしまうんです。でもそれが何球も続けば、とても繊細に成り立っている打撃フォームを崩してしまうことにつながりかねません。『足を引っ張ってはいけない』という緊張感が常にあります。自分が担当した選手が試合で打ってくれるのはもちろんうれしいのですけれど、『迷惑をかけなくてよかった』とホッとする気持ちの方が大きいですね」
「現役時代は『打たれない』のが仕事でしたが、打撃投手は『打たれる』のが仕事。でも、あえて『打たせよう』とは思わないようにしています。それぞれの打者の好きなコースはもちろん知っていますが、自分が狙うのは真ん中近辺。打者と呼吸を合わせること、そしていつも同じテンポ、同じスピード、同じフォームの緩急でいることを心掛けています。こっちが『打たせよう』としなくても、プロの打者は打ってくれます。自分が変わらないからこそ、打者にとっては意味のある練習になる。この辺は打撃投手の経験を重ねることでわかってきた部分です」
横浜スタジアムで東京五輪が開催される関係で、ベイスターズはしばらく東京ドームや神宮球場を本拠地として戦います。場所は違えど、ホームゲームの前には早出に励む選手がいて、それをサポートするために早くから球場にやってくる三橋のようなチームスタッフがいます。全てはチームの勝利のために。チームカラーである強力打線がますます勢いづくことを期待してください!