中村幸也氏逆転敗訴判決の意義
中村幸也氏逆転敗訴判決の意義
中村幸也氏とその長男であるゆたぼん氏が、ちはや氏を提訴した事件は、地裁での約700000円の勝訴から一転して、東京高裁で請求棄却となった(令和7年ネ3014号)。
この事件では、幸也氏が不特定多数人に対して「ゴキブリ」などと暴言を繰り返していたことから、反論を自招したといいうること、幸也氏とちはや氏らとの間で暴言の応酬となっていたことから、ちはや氏の投稿は、社会通念上許される限度を超える侮辱行為に当たらないとした。
正確にその部分を引用すると次のとおりである。
「被控訴人らもまた、インターネット上で、同人らに対する不特定多数の批判者に向けて、継続的に侮辱や罵倒の表現を多く行っていることが認められ、これに対抗する投稿を誘発しているともいえるのであり、本件各投稿は、このような被控訴人らとその批判者との間のインターネット上の中傷の応酬の中で行われた者であると考えられる。このような事情を考慮すると、上記の各投稿の中に、被控訴人らに対する侮蔑、揶揄の表現があるとしても、直ちに社会的相当性を逸脱するものとまではいえず、被控訴人幸也に対する侮辱に当たるとはいえない。」
従来、インフルエンサーなどの特定人が不特定多数人を誹謗中傷したのに対して、侮辱されたと感じた者がその特定人を誹謗中傷する投稿をした場合、かかる投稿は、社会通念上許される限度を超える侮辱行為であるとされていた。なぜなら、不特定多数人を誹謗中傷する言論は特定性がなく、同定可能性を欠くのに対して、その特定人に対する誹謗中傷は同定可能性があり、その表現が受忍限度を超えていれば侮辱行為と評価できるからである。
このことを端的に表したのが、日本一のインフルエンサーと謳われたはあちゅうこと伊藤春香が、令和2年5月25日にした投稿である。
「そもそも不特定多数に対して『こういう人はバカです』って喋るのと、特定の個人に向けて『お前はバカ』って言うのは全く別のことなのに
(前者はただの表現、後者は誹謗中傷)
それすらわかっていない人たちばかりでびびる。日本語能力?理解力?なんの問題なんだろう…。」
実際、はあちゅう氏は、「物の怪」と不特定多数人を揶揄する投稿に対して、「ゾンビ」と反論した一般人を提訴して開示請求では勝訴している(本訴は敗訴)。
ここで一つ注意喚起をしておくと、幸也氏は、「ゴキブリ」などの暴言をかなり繰り返しており、一度暴言を吐いただけの人物に対しても同じ基準が当てはまるかどうかは未知数でだし、そもそも幸也氏に対しても、同じ判決が出るとは限らない。「暴言を吐いている人物には何を言ってもかまわない」と即断することは危険であることは強調したい。
とはいえ、「不特定多数人に対して暴言を吐き、言い返してて来た者を提訴する」という手法は、これまで繰り返し成功を収めていた。このような「当たり屋」的な手法に対し、今回の判決が一定の歯止めとなることを期待したい。今回の判決は、
「前者はただの表現、後者は誹謗中傷」
という常識を、
「前者はただの表現、後者も適法」
とコペルニクス的転換を見せたものだからだ。
最後に、私の尊敬するインフルエンサーが平成31年2月9日に投稿した記事を紹介して、この原稿を終わりとしたい。
「いつかオセロがひっくり返る日がくる。」
By はあちゅう
判決文はこちら
福永ちだい第二訴訟判決+中村幸也逆転敗訴判決+杉並民事家事商事法律事務所対Google判決|山口三尊
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