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DXを頑張っても報われない構造を整理してみた
DXを進める中で、現場から不満の声が上がることがある。
効率化を頑張っても評価されない。仕事が楽になっても給料は変わらない。むしろ覚えることが増えて負担が大きくなった。浮いた時間に別の仕事を突っ込まれるだけ。ツールに詳しいからって何でも聞かれて本業ができない。頑張って改善したのに、成果は上司の手柄になる。
こういう声、DXを推進したことがある人なら聞いたことがあると思う。
推進する側からすると「会社のためにやってるのに」「なんで協力してくれないんだ」と思うかもしれない。現場の意識が低い、変化を嫌ってる、と捉えてしまうこともある。
でも、現場がそう感じてしまうのには、ちゃんと理由がある。個人の意識の問題じゃなくて、構造的な問題。今回はその構造を整理してみた。

構造① DXは経営者の都合であって、現場は求めてない

まず大前提として、DXは経営者の都合で始まることがほとんど。現場から「DXしたい」という声が上がることは、実はあまりない。
経営者は「生産性を上げたい」「コストを下げたい」「競争力を高めたい」と考えてDXを進める。それ自体は経営判断として正しいのかもしれない。
でも、現場からすると「今のやり方で回ってるのに、なんで変えるの」という感覚になる。困ってないのに変えさせられる。新しいツールを覚えさせられる。やり方を変えさせられる。
経営者にとってのメリットと、現場にとってのメリットが一致してない。このギャップが、いろんな不満の根っこにある。

構造② 効率化の成果が「コスト削減」に向かう

DXで業務効率化をすると、同じ仕事を少ない人数でできるようになる。1人あたりの生産性が上がる。
この成果をどう使うかには、大きく2つの方向がある。
  1. 人を減らして、コストを下げる
  2. 同じ人数で、より多くの仕事をする
多くの会社では、1の方向に進みやすい。理由は単純で、コスト削減は成果が見えやすいから。「年間○○万円の人件費削減」と数字で示せる。経営層への報告もしやすい。
一方で、2の方向は成果が見えにくい。「新しい仕事を作る」「付加価値を高める」といっても、すぐに数字に表れない。だから後回しになりがち。
結果として、効率化の成果は人件費削減に吸収されやすい。現場からすると「頑張って効率化したら、自分たちの仕事がなくなる」という構図になる。

構造③ 効率化しても仕事が減らない

「効率化したのに仕事が減らない、むしろ増えた」という声も多い。
これは、効率化で生まれた余力の使い道が決まっていないから起きる。空いた時間に別の仕事が入ってくる。結局、仕事量は変わらないか、むしろ増える。
しかも、新しいツールを覚える負担も加わる。操作を覚える、トラブルに対応する、周りに教える。この負担は現場が背負う。「楽になるはずだったのに、大変になった」という感覚が生まれる。

構造④ DX推進者が評価されにくい

DXを推進した人が正当に評価されにくいのにも、構造的な理由がある。
まず、DXの成果は数値化しにくい。売上のように分かりやすい指標がない。「業務時間が30%削減されました」と言っても、それが会社の利益にどれだけ貢献したのか、換算が難しい。
次に、DXの成果は「当たり前になると見えなくなる」という特性がある。効率化される前の苦労を、みんなすぐ忘れる。新しいやり方が定着すると、それが普通になって、改善した人の貢献が認識されなくなる。
さらに、成果が推進者本人ではなく、その上司の手柄になりがち。「部署の成果」として吸収されて、誰が頑張ったのかが見えなくなる。
そして、ツールに詳しい人には質問が集中する。「ちょっと教えて」が積み重なって、本業の時間が削られる。でも、その対応は評価されない。

構造⑤ 効率化しても給料が上がらない

業務が効率化されて、仕事が楽になっても、給料は変わらない。これもよく聞く話。
理由はシンプルで、多くの会社の給与体系が「労働時間」や「役職」に紐づいていて、「生産性」には紐づいていないから。
同じ仕事を8時間かけてやっても、4時間で終わらせても、給料は同じ。むしろ4時間で終わらせたら、追加の仕事を振られるだけ。効率化した本人にメリットがない。
会社全体としては生産性が上がって利益が出てるかもしれない。でも、その利益が現場に還元される仕組みがなければ、現場の人の給料は変わらない。

まとめ

整理すると、こういう構造になってる。
  • 構造① DXは経営者の都合であって、現場は求めてない
  • 構造② 効率化の成果は、コスト削減(人員削減)に向かいやすい
  • 構造③ 効率化で浮いた時間は、別の仕事で埋められる
  • 構造④ DX推進者の貢献は、既存の評価制度では測りにくい
  • 構造⑤ 生産性が上がっても、給与体系がそれに連動していない
これが「DXを頑張っても報われない」という感覚を生んでる。個人の努力の問題というより、会社の仕組みの問題として存在してる。

それでもDXを推進してる人たちへ

こういう構造がある中で、日本全国の企業でDX推進に取り組んでる人たちがいる。
評価されにくい。成果が見えにくい。現場からは「余計なことしないで」と抵抗される。経営層からは「で、効果は?」と成果を求められる。板挟みになりながら、それでも会社を良くしようと動いてる人たち。
誰に頼まれたわけでもないのに、自分から手を挙げた人もいると思う。「誰かがやらないと変わらない」と思って、損な役回りを引き受けてる人もいると思う。
正直、めちゃくちゃ大変だと思う。報われない構造の中で、それでも前に進めようとしてる。感謝されることより、文句を言われることの方が多いかもしれない。それでも止めずに続けてる。
僕はそういう人たちを本当に尊敬してる。
会社を変えようとしてる人がいるから、少しずつでも前に進む。その努力は、たとえ今すぐ評価されなくても、絶対に意味がある。
だから、もし周りにDX推進を頑張ってる人がいたら、「ありがとう」って伝えてあげてほしい。その一言だけで、救われることがあると思うから。
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