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これが私の民主主義

2015年8月28日 10時11分 (5月27日 05時08分更新)

イベントの参加者と(前列左から)TNGの笠谷航平君、広瀬歩さん、橘南さん=いずれも金沢市片町で

 安全保障関連法案に反対する学生グループ「SEALDs(シールズ)」が呼び掛けた23日の全国若者一斉行動で、金沢市でも10~20代の有志4人が政治を学ぶイベントを開いた。最終目標は、目先の安保法案阻止ではなく、みんなが政治を語りあう社会。安保政策の大転換を強行に進める安倍政権への批判が高まり、民主主義のあり方が問い直される今、若者が自らの意思で一歩を踏み出した。

2015.08.11 始動

大人と衝突 目が覚めた

 始まりは11日夜、金沢市青草町で開かれた第1回ミーティング。金沢の20代の男女2人がインターネットで一斉行動に向けた準備を呼び掛け、30人近くが集まった。しかし、20代以下は4人だけ。発言したのは中高年ばかりだった。
 「目標は、安保法案阻止のみ。デモで人数をアピールすべきだ」「どんな人間が集まるか分からない」。若者そっちのけで議論は白熱し、空気は重くなった。

第1回ミーティングで思いを語る橘南さん

 「これじゃ私たちの企画だと胸を張れない」と、呼び掛け人の1人の保育士橘南さん(22)=金沢市=が覚悟を決めた。「若者は安保法案に興味がないと思う」。大きな丸い目に力を込め、敬語を使うのもやめて、声を上げた。提案したのは、おしゃれな場所で開く学習イベント。まずは政治に目を向けるきっかけづくりが必要だと訴えた。
 「そもそも、どう人を集めるつもりなの」。中年の男性が突っ込んだ。橘さんは「まずは、どういう人に来てほしいかを考えたい」と反論した。けんか腰のやりとりに、女性市議が助け舟を出した。「失敗してもいいんだから、若者のやりたいようにやるべきだよ」
 橘さんは泣いた。厳しいやりとりにではない。「失敗しても」という言葉が悔しかった。友人に政治の話を振っても「聞くのが苦しい」と相手にされない日々が脳裏によみがえった。

高齢の男性から意見を聞く笠谷航平君=いずれも金沢市青草町で

 7月、安保法案の強行採決を見て「いま動かなきゃ、やばい」と危機感を抱いた。自力で仲間を集めたかったが、友人には強行採決すら知らない人も。知人の50代主婦に促され、この日のミーティングを呼び掛けたけれど、あまり乗り気ではなかった。でも、開いてみて驚いた。参加者の1人、富山県高岡市の笠谷航平君は16歳の高校1年生だった。本気で厳しい意見をくれる大人もいた。
 橘さんは「あの日から責任感を持てました。名ばかりの呼び掛け人ではいたくない」と振り返る。本当は目立ちたくはない。友人に政治を話すのも、恥ずかしかった。でも、今は違う。「政治を語るのも楽しいよ」と堂々と言えるように、やっと集えた仲間たちと、歩みを始めている。

結集 2015.08.15

考える 次世代のことも

 15日夜、第1回ミーティングで出会った若者4人が金沢市片町のカフェで、学習イベントの打ち合わせをした。講師の人選や会場を決め、この日最大の議題、団体名を考えた。団体名は、活動の方向性を表す看板にもなる大事な要素だ。

イベントの内容を語るメンバーの3人=金沢市広坂で

 「最終目標は何かから考えよう」。その提案に口を開いたのが、呼び掛け人の1人の映像作家広瀬歩さん(25)=金沢市。平たい帽子をよくかぶる控えめな青年だ。「打倒安倍政権とかじゃなく、安保法案のことが終わっても、社会に目を向ける意識を持ち続けるのがいいな」。口調は静かなのに、揺るぎない。前回のミーティングで言葉に詰まったのを反省し、「気の利いた言葉を探すより、自分の考えをずばっと言おう」と決めていた。
 自分たちが大事にしたいことを挙げ始めると、4人から次々と言葉が飛び出した。「意見交換」「排除しない」「これからを考える」-。目指すのは賛成と反対の対立じゃない。「頭の片隅で政治を考えて、肩肘張らずに話せる人を増やしたい」と広瀬さん。若者自身の言葉で理想の社会像が描かれ、膨らんでいった。
 団体名はThinking about Next Generationの頭文字でTNG。自分たちの世代だけでなく、次の世代の未来のために考え続ける誓いを込めた。

食事は立食パーティーの形式

行動 2015.08.23

初のスピーチ 共感の輪

 23日夜、金沢市片町のカフェで開かれたイベントには老若男女88人が集った。20代以下は20人余り。飛び入り参加も多かった。
 会場のカフェはテラス席付き。色鮮やかなハムやサラダが並ぶ立食パーティー形式で、バーカウンター前の席がステージだ。企画者の1人、高岡市の高校1年生の笠谷君が最初にスピーチし、「平和な日本が戦前に逆戻りしないか、すごく怖い」と安保法案への反対を語った。

付箋を使い意見を出し合った

 来場した若者らも次々マイクを握った。「法案がもし可決されたら、明日に不安を持ちながら生きる。嫌だなって」「自分たちの声を行動にしていくのがすごい大事だと思う」。人生初めてのスピーチで、自分なりに思いを吐き出した。
 金沢市の高校3年生前川結佳さん(17)も、そんな1人だ。衆院での強行採決に危機感を持ち、地元でイベントがあると知って親を説得。TNGにも加入した。イベントでさまざまな意見を聞き、「自分の考えの発信をやめちゃいけないと思った。国民の意見を反映しないで法案を通すのは民主主義じゃないから」
 20代の来場者でTNGに加わる人も。「1人1人の積み重ねが大きくなる」と橘さん。共感の輪は、北陸でもじわりと広がった。
若者のスピーチの一部をユーチューブで視聴できます。
https://www.youtube.com/channel/UCEXGmumE5044k_6dlXo0pWg

国会前で抗議行動をする奥田愛基さん

訴えて自分に問い直す

SEALDs 奥田愛基さん インタビュー

 北陸の若者は自らの言葉で民主主義を語り始めた。SEALDsも国会前デモで「民主主義って何だ」と叫ぶ。その言葉に込めた思いを、メンバーの明治学院大4年奥田愛基(あき)さん(23)に尋ねた。
 -なぜ今、民主主義か?
 安倍政権が、稚拙と批判される安保法案を憲法を無視して通そうとしている今の状況は、国の危機だと思う。問題は政治家の劣化だけじゃなく、それを許してしまっている国民にもある。「民主主義って何だ」とコールして、自分たち自身にも問い直している。
 日常的に政治を考えることが大切だ。デモでも集会でもアートでも音楽でもいい。僕らも知識を学び、考えるきっかけをつくるサロンを3月から開いている。
 -SEALDsの活動には批判や中傷も多い。
 なめられていると思う。だって学者には「感情的で論理がない」とは言わないでしょう? 正々堂々と法案の議論をしたい。見て見ぬふりをする人も、中傷を許す雰囲気をつくっている。
 一方で、リスク覚悟でデモをする高校生もいる。「こんな社会のままでいいの」と訴えているんだと思う。社会が変われるかは、賭け。今は最大のピンチで、最大のチャンス。未来は誰も分からないけど、信じる未来のために声を上げませんかと呼び掛けたい。
  担当・福岡範行 

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