総集編

関西生コン支部弾圧って? 
今からでも分かる連載「悪党たち」

取材=渡辺周、中川七海
ページデザイン=千金良航太郎

毎週水曜日の連載「悪党たち」は、第十話まで掲載しました。

延べ89人の組合員が逮捕された、労働組合「関西生コン支部」(関生支部)への弾圧。一体誰が、何の目的でこの空前の労組潰しを担ったのか。

生コン会社の経営者団体、それを支える大阪地検特捜部長の経験者たち。レイシスト、暴力団関係者、警察庁長官らが登場しています。

「悪党」たちの暗躍は他人事ではありません。非正規労働者が4割に迫り、困窮する人が増えている日本社会では、関生支部のような「闘う労組」が必要だからです。

企業の内部留保は2024年度末で637兆円。13年連続で過去最高を更新し、国家予算の5倍超を溜め込みましたが、労組の活動が弱い日本では給料に還元されません。

政財界にしてみれば、闘う労組は脅威です。労働者が団結すれば、利権と地位が脅かされるからです。関生支部への弾圧は、脅威を取り除こうとする権力側の意思が背景にあります。

「悪党たち」は、まだまだ続きます。今からでもストーリーについていけるよう、おさらいをします。読者の輪にぜひ加わってください。

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関生支部ってどんな労組?

関西生コン支部の組合員が街宣活動で掲げる「連帯」の旗=大阪市で2025年11月18日、千金良航太郎撮影

関西生コン支部の組合員が街宣活動で掲げる「連帯」の旗=大阪市で2025年11月18日、千金良航太郎撮影

まず、関生支部について説明します。

関生支部は、関西の生コンクリート産業で働く人たちでつくる労働組合です。ミキサー車の運転手や事務職の人たちが加入しています。

日本で労働組合と言うと、企業ごとに正社員だけが加入する「企業内労組」のことを思い浮かべる人が多いでしょう。労組があるのは、多くが大企業です。

関生支部は、どの生コン会社で働いているかは関係ありません。生コン産業に従事していれば、誰でも入れる「産業別労組」です。企業内労組と違い、非正規労働者も加入できます。

関西生コン支部の湯川裕司委員長=大阪市で2025年10月17日、千金良航太郎撮影

関西生コン支部の湯川裕司委員長=大阪市で2025年10月17日、千金良航太郎撮影

委員長は湯川裕司氏。2018年8月、45歳の時に逮捕され644日間も勾留されました。それでも心折れずに関生支部を率いており、組合員からの信頼が厚いリーダーです。

実は世界的にみれば、関生支部のような産業別労組が当たり前です。労働者が会社を横断して団結することで、経営側と対等に交渉する力を持っています。

企業内労組だとそうはいきません。「給料を上げろ」「ストライキをするぞ」と経営側に迫ったところで、「そんなことをしたらライバル会社との競争に負けてしまう」と返されれば終わりだからです。

日本企業は「家父長制に基づく家族主義」が特徴です。経営者を「親」、社員を「子」に見立て、社員は経営者に従います。本来の労組の役割を考えれば、企業内労組は労組ではありません。

しかし、労組と呼べない企業内労組は守られ、本来の労組の役割を果たしている産業別労組の関生支部が弾圧の対象になっています。

警察は、言いがかりをつけて組合員たちを次々に逮捕しました。

ストライキや、建設現場での法令遵守を求める「コンプライアンス活動」を威力業務妨害。経営側から「解決金」を受け取ることは恐喝に。解決金とは、会社の倒産や、不当解雇、セクハラなどがあったときに、労働者側の損害に対して払われるお金のことです。

検察は、勾留されている組合員に対し、組合脱退を迫りました。

社会として恥ずべき事態が、日本で起きているのです。

インタビューで検察からの「脱退強要」について証言する関西生コン支部の荒川勝彦氏

インタビューで検察からの「脱退強要」について証言する関西生コン支部の荒川勝彦氏

弾圧を仕掛けた「大阪広域協」って?

大阪広域生コンクリート協同組合=大阪市で2025年5月18日、渡辺周撮影

大阪広域生コンクリート協同組合=大阪市で2025年5月18日、渡辺周撮影

関生支部は関西一円で活動し経営側と対峙していますが、最も鋭く対立してきたのは「大阪広域生コンクリート協同組合」(大阪広域協)です。大阪と兵庫を中心に生コン会社164社が加盟していて、売上は年間約1500億円。日本最大級の協同組合です。

生コン会社は、セメントを仕入れて製造し、ゼネコンの建設現場に納品しますが、セメント会社もゼネコンも大企業です。生コン会社は中小企業で価格交渉力がないので、協同組合を作り、仕入れと販売を一括で担っています。

2017年、大阪広域協と関生支部との対立がピークに達します。大阪広域協が「生コン価格が上がれば給料も上げる」と以前から約束していたにもかかわらず、生コン価格が上がっても給料に還元しなかったからです。

約束を果たすよう迫る関生支部に対し、大阪広域協が動きます。「ヤメ検弁護士」たちで弁護団を結成したのです。ヤメ検とは元検察官の弁護士のことで、大阪地検特捜部長の経験者ら大物が名を連ねました。()内はいずれも検事時代の元職です。

小林敬弁護士(大阪地検特捜部長、大阪地検検事正)

高田明夫弁護士(大阪地検特捜部長、宮崎地検検事正)

新倉明弁護士(大阪地検刑事部長、熊本地検検事正)

小寺哲夫弁護士(大阪地検刑事部長、札幌地検検事正)

徳久正弁護士(大阪地検堺支部長、最高検検事)

さらに大阪広域協は、大阪府警で暴力団捜査を担っていた元警察官も雇い入れ、万全の体制を敷きました。

大阪広域協の「ドン」

関生支部は、セメントの輸送を止めるストライキを計画し、2017年12月12日を実行日に設定します。

ストを阻止するため、大阪広域協の「ドン」が乗り出してきました。副理事長の地神秀治氏です。

地神秀治氏=大阪広域協のホームページから

地神秀治氏=大阪広域協のホームページから

理事長は木村貴洋氏ですが、地神氏が広域協の最高実力者であることは衆目の一致するところです。地神氏は強圧的で、広域協加盟の生コン会社を力でねじ伏せてきました。

地神氏がとった作戦は、関生支部と協力関係にあった労組を引き剥がすことでした。「ストに参加したらえらいこと(大変なこと)になるぞ」と恫喝しました。「生コン産労」や「建交労」、「UAゼンセン」といった労組は関生支部を裏切り、ストには参加しないと大阪広域協に告げました。「全港湾大阪支部」は、「関生支部とは一心同体だ」と脅しに屈しませんでした。

関生支部は予定通り、12月12日にストを実行しましたが、大阪広域協は弾圧を本格化させていきます。

理事長の木村氏は12月18日、ナチスのアドルフ・ヒトラーを信奉するレイシストで、右翼活動家の瀬戸弘幸氏に連絡して協力を求めます。瀬戸氏は月70万円の報酬で、関生支部を攻撃する街宣活動を年明けから始めました。