【中国と国際関係】中国が嫌われている国トップ10!反中的な国々とその理由
世界が注視する中国への視線:ピュー調査が示す「否定的な印象」を持つ国々の背景を読み解く
近年、国際社会における中国の存在感が増す一方で、その台頭に対する警戒感や否定的な感情もまた、多くの国で高まっています。この現状を客観的に捉える上で参考になるのが、世界各国の世論調査です。今回は、特に信頼性の高いデータの一つである「ピュー・リサーチ・センター」による調査結果をもとに、中国に対して否定的な印象を持つ国々の現状とその背景を深掘りします。
この調査は、2023年に世界24カ国で実施され、中国に対する人々の「否定的な印象(Unfavorable View)」の割合を明らかにしたものです。その結果は、一部の国で驚くほど高い数値を示しており、今後の国際関係を占う上で非常に重要な示唆を含んでいます。
高まる中国への否定的な視線:顕著なトップ10の顔ぶれ
調査対象となった24カ国のうち、中国に否定的な印象を持つ人の割合が50%を超えた国は大多数に上りました。そして、特にその割合が高く、70%以上を記録したトップ10の国々は以下の通りです(割合は小数点以下を四捨五入)。
日本 (87%): 歴史的な戦争や満州事変などの負の遺産に加え、近年は尖閣諸島を巡る領有権問題、政治体制や価値観の相違が、国民感情に強く影響しています。
オーストラリア (87%): 主要な貿易相手国である一方で、中国の南シナ海での軍事活動への懸念、国内政治への干渉(サイレントインベージョン論)、新型コロナウイルス起源に関する調査要求への中国側の反発などが、否定的な見方を強めています。
スウェーデン (85%): 基本的人権や民主主義の価値を重視する立場から、中国国内の人権状況に厳しい目を向けています。特に、スウェーデン国籍を持つ桂敏海氏(注1)の中国での拘束事件や、当時の中国大使による挑発的な言動が、国民の強い反発を招きました。
アメリカ (82%): 米中間の経済摩擦(貿易戦争)や、政治的・軍事的な覇権を巡る競争が直接的な要因です。また、新型コロナウイルスのパンデミック初期対応や起源、そして新疆ウイグル自治区での人権問題も、国民の否定的な感情に拍車をかけています。
韓国 (80%): 高度なミサイル迎撃システム「THAAD(サード)」(注2)の米軍配備を巡る対立や、歴史的に中国王朝との間にあった複雑な関係性、近年の文化的な起源論争(例:キムチ)などが、否定的な見方の背景にあります。
カナダ (79%): 通信機器大手ファーウェイの孟晩舟副会長がアメリカの要請でカナダで逮捕された事件が関係悪化の大きな契機となりました。多文化国家であり、香港出身者のコミュニティが大きいことから、香港の自由への懸念も高い割合につながっています。
ドイツ (74%): 欧州最大の経済大国として中国との経済的な結びつきが強い反面、サプライチェーンのリスクや市場アクセス、そして中国国内の人権状況に対する懸念が高まっています。EUを牽引する立場として、価値観の違いも無視できません。
オランダ (73%): 自由主義的な価値観に基づき、中国政府の権威主義的な体制や人権侵害を強く批判しています。特に、中国政府による新疆ウイグル自治区での行為を「ジェノサイド(注3)」と認定する動議を欧州連合(EU)加盟国として最も早く可決した国です。
イギリス (71%): かつての植民地であった香港の返還(1997年)後、「一国二制度」(注4)が事実上形骸化していることへの強い不信感があります。アヘン戦争に始まる歴史的な関係も、現在の複雑な感情に影響を与えています。
フランス (70%): 人権や民主主義といった普遍的な価値を重んじる国として、中国国内の民族・人権問題への懸念が高いです。また、ニューカレドニアなどの海外領土を持つフランスにとって、インド太平洋地域での中国の海洋進出は無視できない問題です。
否定的な感情が高まる構造的要因
上記の各国の理由を見ると、否定的な感情が高まる背景にはいくつかの共通する要因が見て取れます。
人権と価値観の対立: 権威主義的な中国政府による国民への統制強化(言論の自由の制限、監視社会化)や、新疆ウイグル自治区、チベット、香港などでの人権侵害に対して、民主主義や自由といった価値観を共有する国々からの批判が強まっています。
地政学的な緊張: 南シナ海や東シナ海における領有権を巡る問題、軍事的な活動の活発化は、周辺国だけでなく、広くインド太平洋地域に関心を持つ国々の警戒感を高めています。
経済的摩擦と懸念: 公正な貿易慣行への疑念、知的財産権侵害(産業スパイ活動含む)、そして中国経済への過度な依存がもたらすリスクへの懸念が広がっています。
歴史的遺恨: 過去の戦争や植民地化といった歴史的な出来事が、現在の関係性に影を落としているケースも見られます。
特定の事件: ファーウェイ問題、桂敏海氏拘束事件、新型コロナウイルスの起源に関する問題など、具体的な事件が国民感情を悪化させる引き金となっています。
興味深いのは、否定的な感情の割合が比較的低い国が、ブラジル、メキシコ、アルゼンチンといった中南米諸国や、南アフリカ、ケニア、ナイジェリアといったアフリカ諸国に多い点です。これらの国々は地理的に中国から離れていること、または中国の「一帯一路」(注5)構想などによる経済支援を受けていることが、現状では否定的な見方を抑える要因となっている可能性が考えられます。
「やられたからやり返す」論理とその限界
動画の解説でも指摘されていたように、中国側の一部には、過去に欧米列強や日本から受けた屈辱(アヘン戦争以降の半植民地化など)を根拠に、「かつて我々はやられた。だから今、力を持った我々がやり返すのは正当だ」という考え方があるようです。この「復讐」や「報復」に基づいた論理は、中国国内のナショナリズムを高める上では機能するかもしれませんが、国際社会における協調や信頼構築の観点からは、多くの国に受け入れられがたいものです。
20世紀の帝国主義時代とは異なり、現代の国際秩序は対話と協力、そして国際法や普遍的な人権の尊重を基盤とすることが理想とされています。「やられたからやり返す」という発想に基づいた行動は、さらなる対立を生み、国際関係を不安定化させるリスクを伴います。多くの国が中国に対して否定的な見方を強めている現状は、まさにこのアプローチが国際的に共感を得られていないことの表れと言えるでしょう。
今後の展望
ピュー・リサーチ・センターの過去の調査を見ても、多くの国で中国に対する否定的な見方が上昇傾向にあることがわかります。例えば、日本で否定的な見方を持つ人が4割程度だった2002年から、わずか20年余りで倍以上の8割超えとなっています。スウェーデンでも約10年前の調査から否定的な割合が大幅に増加しています。
この傾向が続けば、中国は国際社会でさらに孤立を深める可能性があります。経済的な結びつきは維持されつつも、政治的・文化的な交流は停滞し、共同で解決すべき地球規模の課題(気候変動、パンデミック対策など)への協力も難しくなるかもしれません。
中国が国際社会でより建設的な役割を果たし、世界からの信頼を得るためには、自国の主張や行動に対する国際的な視線を真摯に受け止め、対話を通じて懸念を解消していく努力が不可欠です。特に、人権問題や透明性に対する国際社会の要求に対して、どのように応えていくかが今後の鍵となるでしょう。
今回の調査結果は、単なるランキングに留まらず、現代の世界が直面している価値観の対立、地政学的な緊張、そして過去の歴史が現在に与える影響といった複雑な現実を映し出しています。私たち一人ひとりも、この国際的な動向を理解し、自分自身の視点を持つことが重要と言えるでしょう。
注釈:
注1:桂敏海(けい びんかい)氏 - スウェーデン国籍を持つ中国系香港の出版関係者。中国共産党に批判的な書籍を扱っていたとされ、2015年にタイから失踪後、中国当局に拘束された。スウェーデン政府は一貫して解放を求めている。
注2:THAAD(サード) - Terminal High Altitude Area Defenseの略称。高高度迎撃ミサイルシステム。弾道ミサイルを迎撃するための地対空ミサイルシステムで、主に北朝鮮のミサイル開発に対応するため韓国に配備されたが、中国は自国の安全保障上の脅威となるとして強く反発した。
注3:ジェノサイド - 集団殺害、または特定の国民、人種、民族、宗教集団を、全部または一部破壊する意図をもって行われる行為。国際法で禁止されている。
注4:一国二制度(いっこくにせいど) - 中華人民共和国の主権の下、香港やマカオが社会主義体制とは異なる高度な自治(資本主義体制、独自の法制度など)を一定期間維持することを認める制度。香港については、1997年の返還から50年間(2047年まで)維持されるとされていたが、近年、中国政府による統制強化により制度の形骸化が指摘されている。
注5:一帯一路(いったい いちろ) - 中国が提唱する巨大な広域経済圏構想。アジア、ヨーロッパ、アフリカを結ぶ陸と海のシルクロード経済圏を構築し、インフラ投資などを通じて中国と沿線国の経済的な連携を強化することを目指している。


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