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【時事】レアアース 情報整理

今回何故これをピックアップしたかと言うと「私がわかってないから」です。ニュースで取り上げられるたびに「うむ、レアアースの確保は大事やな」とか言ってるくせに「レアアースってなんなん?」って聞かれると「そんな事も知らんのか。インディ・ジョーンズの一作目や」とか「あれだよあれ、CLAMPの転生モノのやつ」と答えてしまいそうです。まあ、大体合ってるとは思うのですが。

よーし、この機会に学んでいきましょう。ドヤ顔するために。日本の命運を握る「戦略物資」を知っておくと、少し世の中が見えてくるかもです。そしたら、ドヤ顔で講釈たれましょう。

01. レアアースとは

そもそもレアアースとはなんぞや、からです。レアっていうくらいなので「産出量が少ないんだろうな」って思ってたら、割とあちこちで取れるものなんですね。まあ、それでも「レア」な理由はありますが、これは後述。

01-01. そもそもレアアースってなに?

レアアースは「希土類」と翻訳されます。これを一言で言うなら「他の材料と混ぜ合わせると、その能力を高める」効果がある材質、単体で使うわけじゃないのですね。現代のハイテク製品に欠かせない「魔法の隠し味」のような金属たちのことです。ゲームで言うところのバフですね。

レアアースが発見されたのは1794年。日本で言うと江戸時代ですね。発見者はフィンランドの学者、ヨハン・ガドリンです。特徴は下記の通り。

・鉱物の中に少量存在しているために見分けにくい
・鉱石から抽出するのが困難
・分離が難しい
・用途が少ない

元素記号の表で言うと下記の黄色い箇所だそうです。ふむふむ、なるほどなぁ(わかってない)

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Spring8

特色と用途をざっくり。なるほど、多岐にわたって工業製品に使われているのですね。意識していないで使っている携帯電話や自動車、家電なんかにも使われているのがわかります。医療用の機械なんかは、これがないと製造が難しいのでしょうね。

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Spaceship Earth

「レアアースを元に、どんなプロダクトが出来ているのか」ビジュアル化している資料がありました。おお、私みたいなド素人にもわかりやすい。

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spaceship earth

01-02. どこで採れるの?

「レアアースは中国から輸入している」は、多くの人の共通認識でしょう。他の国からは輸入できないの?と思う人も多いと思います。実は他の国でも採れているのですね。中国以外だと、アメリカ、オーストラリア、ミャンマー、マダガスカル、インドなどが産出国です。まあ、そうは言っても、やはり埋蔵量はやっぱり中国が多いようですね。

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独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構「鉱物資源マテリアルフロー2021 レアアース」

01-03. 何故中国以外からの輸入が少ないの?

まず、日本の置かれている状況として「中国依存度が高い」のですよね。

上記記事によりますと「エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)によると、中国はレアアースの埋蔵量と生産量で世界首位であるほか、精錬量のシェアは9割を超える。日本が2024年に輸入したレアアース8品目の7割超が中国からだった」とあります。他国が100円で売っているのに、中国から輸入したら30円なら、そりゃ中国から輸入しますよね。これを次の章で書いていきます。先進国が不利なあれこれ。


02. 中国レアアースはなぜ安い?

他国比で圧倒的に安い中国産レアアース。日本が依存していた理由もコスト起因のところが大きいと思います。じゃあ、何故中国産のレアアースが圧倒的に安いのか?「環境対策コストをガン無視」と「人命軽視レベルで、リスクの大きな精製手法の採用」によるものです。先進国であれば、環境に配慮する義務がある、数十億〜数百億円かかる負のコストをかけずに済んでいたことが、価格競争力の源泉でしょう。


02-01. 環境コストを無視した圧倒的低価格

レアアースの精製には、強酸(硫酸など)を使って鉱石を溶かし、特定の元素を1つずつ抽出する「溶媒抽出法」という工程があります。先進国の場合であれば、 廃液に含まれる有害な重金属、強酸、化学薬品を無害化する巨大な水処理施設が必要です。これに莫大な建設費・維持費がかかります。

かつての中国では、多くの現場で廃液がそのまま河川や土壌に流されました。これにより、周辺地域では地下水の汚染、農作物の収穫減、家畜の奇形や住民の健康被害が多発し、「がんの村」と呼ばれる深刻な公害地域も生まれました。てか、「がんの村」って1つじゃないのか。実はこれ、テレビ東京が2007年に潜入取材しています。実際にがん村に赴いて、現地の方々から調査しています。

中国がこういう「がん村」の存在を認めたのは2013年。その存在は247箇所とのことです。100箇所どころじゃねぇじゃん。


02-02. 放射性物質が混ざっている

レアアースの鉱床(特にモノザイトなどの鉱石)には、不純物としてトリウムやウランといった放射性元素が混ざっていることが非常に多いです。精製過程でこれらの放射性物質が濃縮され、大量の放射性廃棄物が発生します。先進国では、このような廃棄物が出る場合は、厳重な管理(シェルター建設や数十年単位の監視)に莫大なコストがかかりますが、中国は管理が非常に緩く、これが低価格に直結していました。まあ、先進国ではこういうのは無理なんですよね。

1980年代にマレーシアで三菱化成(現・三菱ケミカル)がレアアース精製を行いましたが、放射性廃棄物の管理を巡り大規模な住民運動と裁判が起こり、撤退を余儀なくされた歴史があります。これはARE(Asian Rare Eaeth)事件と呼ばれており、現在でもまだその波紋はおさまっていません。

中国はこの「他国が嫌がる汚い仕事」を一手に引き受けることで市場を独占したのです。というか、他国が環境対応の費用を賄うのに苦慮する中、中国はここを無視したのですよね。環境も人命も軽視しているからこそ出来ることではあります。国際的には「寡占状態を作って、レアアース関連は一人勝ち」ではあるけど、国内的には「自国領土と自国の国民を汚してきた」反動はこれからも継続していきます。


03. レアアース関連時系列整理

これはなかなか興味深かったです。過去の件は知らない情報がありましたので、ちょっと整理。この歴史は知っておくと見識が広がると思います。


03-01. 1990年代まで

この時代はアメリカがレアアースの覇者でした。カリフォルニア州の「マウンテンパス鉱山」はかつては世界のレアアース供給の大半を担っていましたが、1990年代に入ると徐々に衰退しました。理由は中国の台頭です。中国が低価格戦略を仕掛け、コスト競争に負けた欧米の鉱山が次々と閉鎖してしまいました。結果として「世界中のレアアースを中国が握っている」という、実に極端な独占状態が完成していました。


03-02. 1990年代〜

この時期は中国依存度が90〜92%だったそうです。残りの8〜10%はフランス、ベトナム、インド、エストニアなど。ただ、これらも原料は中国産、加工のみ他国で行っているケースが多く含まれていました。


03-03. 2009年 経済産業省「レアメタル確保戦略」

後述のレアアースショック以前から、政府はレアアース確保のための方針を固め、以下の4つの柱で動きました。(遂行時期はバラバラですし、加速したのはレアアースショックが起点でしょうけどね)

1:供給源の多角化(他国からの調達)
日本政府(JOGMEC)と双日が、経営難だったオーストラリアのレアアース企業「ライナス社」に巨額融資。これにより、現在も続く「中国を介さない安定供給ルート」が確保されました。また、ベトナム・インドとの連携として、採掘・精製プロセスの共同開発を進め、調達先を分散させました。

2:省レアアース技術の開発
減らす・使わない方向ですね。磁石に不可欠なジスプロシウムなどの使用量を大幅に減らす、あるいは全く使わないモーター技術(ホンダなど)の開発を加速させました。ホンダ△(古い)

3:リサイクルの強化
都市鉱山って言われるのがこれ。使用済みのHDDやエアコンのモーターからレアアースを回収する技術を実用化しました。

4:戦略的備蓄
備えあれば憂い無し。国家備蓄と民間備蓄を合わせ、万が一の停止時にも産業が止まらないよう、備蓄日数を大幅に増やしました。

中国依存度を下げる、そもそもレアアースを使わなくていい技術を確立する、一度市場に出たレアアースの回収・再利用、備蓄体制。


03-04. 2010年(レアアース・ショック)発端

この時期は日中関係を凍てつかせる事件が起きました。尖閣での「中国漁船衝突事件」です。一色正春氏(sengoku38)が、当時の状況をYoutubeにアップして話題になったあの事件です。レアアースとは若干話題がズレますが、あまり覚えていない方とかもいるかもなので、一応動画を掲載します。

「中国漁船が悪いのに、何故中国が貿易圧力をかけてくるんだ、加害者じゃないか」と思ってしまうのですが、なかなかそうはいかないのですよね。当時の状況を振り返ると、中国側がレアアースを外交上の武器として使ったのは、自国の主張を押し通すための地政学的・戦略的な意図がありました。

司法手続きを阻止するための強硬手段
日本政府は、逮捕した中国人船長を日本の国内法に基づいて起訴しようとしていましたが、中国は「尖閣諸島は古来より中国固有の領土。そこで中国人が活動して捕まること自体が不当で、日本の裁判にかけることは日本の主権を認めることになるため断固拒否する」というロジックで反論。で、言葉による抗議だけでは日本が船長を釈放しないと判断し、「レアアース」を人質に取ったのですね。

日本はレアアース依存度が高かった
日本のハイテク産業はレアアースの90%以上を中国に依存していました。中国政府は、レアアースの輸出を止めれば日本の基幹産業が短期間で立ち行かなくなることを正確に把握していました。で、実際、輸出が止まって価格が暴騰し、日本の製造業は大混乱に陥りました。結果として、日本側が「これ以上の事態悪化は国益に反する」と判断せざるを得ない状況になりました。


03-05. 2010年(レアアース・ショック)結果

日本政府と企業は、ショック直後の2010年10月には「約1000億円」という異例の補正予算を組みました。

輸入再開は実は約2ヶ月後です。長期化は免れた訳ですね。(とは言っても、生産現場から見たら十分長いでしょうけど…)完全に正常化したのは2010年11月下旬〜12月です。

9月
漁船衝突事件が発生、中国が事実上の輸出停止(通関の遅延)
11月24日
当時の海江田万里経産相(または大畠貿易相)が、中国からの貨物が動き出し、日本への到着を確認したと発表。
12月以降
滞っていた船が順次入港し、輸入量は急回復。

中国側は公式には「輸出禁止」とは認めず、「税関での検査を厳格化しただけ」という姿勢でした。が、国際社会からの批判、WTOへの提訴の動き、さらには日本企業の中国離れがガンガン進んだことで、2ヶ月ほどで圧力を緩めたと見られています。中国からしても「お客さんが買ってくれない」になる訳ですからね。まあ、こんな事件があったけど、2010年でも中国依存度は90%ほどだったようです。まあ、サプライチェーンの移管はここがターニングポイントだったのは間違いないかなと思います。


03-06. 日本・米国・EUが中国をWTO提訴

2012年3月、日本・米国・EUは中国のレアアース輸出制限がWTO協定に違反するとして、世界貿易機関に共同で提訴しました。2010年の輸出枠削減と対日禁輸措置に対抗したものですね。

輸出数量制限(輸出クォータ)の禁止違反
WTOの基本原則であるGATT(関税および貿易に関する一般協定)第11条では、輸出入の数量を制限することを原則禁止しています。中国は自国の産業を守り、価格をコントロールするために、レアアースの年間輸出量に上限を設けていました。これを中国は「資源保護と環境保全のためだ」と主張。

2014年にWTOは中国の輸出規制を不当と認定しました。WTOの判断は「資源保護が目的ならば、国内向けの供給も同時に制限すべき。外国への輸出だけを制限するのは差別的であり、資源保護を口実にした自国産業の優遇である」というもの。

この勝訴により、中国による極端な輸出制限は一旦解消されました。しかし、その後、中国は「輸出制限」から「生産制限(国内での採掘制限)」や「中間加工品の囲い込み」へと戦略をシフトしたため、「加工品レベルでの依存度再上昇」という新たな課題に繋がっていきました。


03-06. 2020年以降 再度中国依存率向上

輸出制限は免れたものの、次は中国は「中間加工品」を軸に戦略を立てました。資源国でもあり、(環境問題を生み出したりするものの)加工までやっちゃうのはやはり強い…

中間加工品(ネオジム磁石など)へのシフト
かつては「鉱石」や「地金」のような「加工前の状態」で輸入していましたが、現在は日本国内で加工するよりも、中国で高度に加工された製品状態で輸入する割合が増えています。中国がかつての「資源供給」から「加工して輸出」へと進化しちゃったのですね。磁石の製造工程までを自国に囲い込んだため、結果として統計上の中国依存度が押し上げられました。

「戦略物資としての側面を得た中国産レアアース」
中国の圧倒的な支配力として、最も着目すべきは精錬能力だ。中国は世界のレアアース精錬の約9割を担っている。精錬過程では、大量の環境汚染物質が発生するが、各国が環境規制を強める中で、比較的環境規制の緩い中国が同工程での覇権を握った。各国はサ プライチェーン上で中国を通る必要があり、供給経路 を多角化することが難しい状況にある。

財務省広報「ファイナンス」財務省大臣官房総合政策課 渉外政策調整係 廣元未希

他国で採掘できたレアアースを輸入しようと躍起になっていたのに、その他国も「精製は中国依存になっていった」という、なんとも袋小路な展開。

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独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構 金属企画部調査課 千葉樹 2023.4.26

03-07. 2025年 高市発言を受けてからの動き

2025年11月、高市総理が国会答弁で「台湾への攻撃は日本の存立危機事態になり得る」と言及したことを受け、中国は即座に反応しました。

2026年1月6日、中国商務省は日本に対し、軍民両用品(デュアルユース)の輸出管理を強化すると発表しました。これにはレアアースの地金だけでなく、高性能磁石(ネオジム磁石等)やその製造技術が含まれています。

表向きは「安全保障上の審査」としていますが、実態としては日本向けの出荷手続きを意図的に遅延・停止させる「ソフトな禁輸」かな。日本では下記のような影響があります。

経済への直接的な影響(GDPへの影響)
大和総研の試算によれば、レアアース・レアメタル等の輸入が1年間途絶し、代替が困難な場合、日本の実質GDPは最大で1.3%〜3.2%(約7兆円〜18兆円規模)減少する可能性があるとの事。製造業を中心に、最大で約90万〜210万人の雇用に影響が及ぶ可能性が警告されています。自動車産業への打撃が突出しており、この業種単体では17.6%の生産減少に繋がるとの予想。レアアースそのものの輸入額は数百億円規模なんですが、それがないと数兆円規模の完成車(EV等)が作れない。ボトルネックというか、経済全体へのレバレッジ(増幅)効果が大きく働く流れですね。

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大和総研 2026年の日本経済見通し

野村総研の試算だと名目GDP引き下げは2.45兆円規模。

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野村総研 2026年日本経済の展望

04. 経済安保・サプライチェーンの強靭化

岸田総理時代に経済安保法案が通過しましたよね。地政学的にサプライチェーンにおいて他国の影響を受ける要素は「強靭化」が必要です。一カ国依存の状態だと、どうしても今回のケースのような時に打撃を受けてしまいます。昨今進められている重要な柱の3つを記載します。


04-01. 国産レアアースの画期的進展

2026年2月、日本にとって極めて重要な動きがありました。南鳥島沖の試掘成功: 2026年1月、探査船「ちきゅう」が南鳥島沖(水深約6,000m)で世界初のレアアース泥の揚泥試験を開始。2026年2月2日、海底からの泥の回収に成功したのですね。これはご存じの方も多いでしょう。

今後の計画:としては、2027年に日量350トンの回収実証を行い、2028年度以降の商業生産開始を目指して進められています。実現すれば、数百年分の国内需要を賄える可能性が。日本の資源弱国脱却に向けた最大の切り札となる可能性があります。(ここはとても大事で、かつ長くなるから後述)


04-02. 日米欧・日豪との強固な連携

高市総理は、中国の「経済的威圧」に対し、価値観を共有する国々とサプライチェーン構築を急いでいます。

04-02-01. 日米「Takaichi-Trump合意」
2025年10月に署名された「重要鉱物およびレアアースの供給確保に関する日米枠組み」に基づき、共同備蓄の検討や、米国製精製施設への共同投資が進んでいます。資源版の日米経済同盟と思っていただけると。

共同投資と迅速なプロジェクト選定
・合意から半年以内に、日米双方が優先的に支援する「採掘・精製プロジェクト」を特定します。
強力な金融支援
米国輸出入銀行(EXIM)が最大22億ドル、日本のJOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)などが官民の資金を投じ、中国以外(米国、豪州、ASEANなど)での供給網構築を加速させます。
緊急時の相互融通(備蓄協力)
供給が途絶した際、日米で備蓄分を融通し合ったり、在庫情報を共有したりするための常設組織を立ち上げました。
技術・基準の統一(脱・中国技術)
精製技術の共同開発を行うとの事。中国が独占する分離・精製プロセスを回避するため、次世代の精製技術やリサイクル技術での連携を強化します。
透明性の確保
児童労働や環境破壊を伴わない「クリーンな鉱物」のみを優遇する市場ルールを日米で主導し、中国産との差別化を図ります。人権デューディリジェンス的な考え方ですね。

日米首脳会談、署名式、ワーキング・ランチ
採掘及び加工を通じた重要鉱物及びレアアースの供給確保のための日米枠組み 合意文書2025年10月28日

04-02-02. 日欧の連携深化
2026年1月22日、日本とEUは重要鉱物の安定供給に向けた協力を再確認。EUも2026年に「欧州重要原材料センター」を設立し、日本のJOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)をモデルとした供給網管理を開始しました。

04-03. 政府による緊急支援と「精製工程」の国内回帰

弱点だった「採掘は他国、精製は中国」という構造を打破するための予算措置が強化されています。

390億円の予備費支出
2026年1月の中国の規制を受け、政府は急遽390億円を投じ、日本企業による新規の精製プロジェクトや代替調達先の確保を支援することを決定。

国内精製拠点の整備
豪州のライナス社などと連携し、これまで中国に頼っていた「分離・精製」の工程を、マレーシアや日本国内の拠点で完結させるための技術支援と設備投資を加速させています。


05. 日本のレアアース採掘:予備知識

中国に依存しなくてよくなるに越したことはないのですが、資源が乏しい我が国でそれが可能なのか…という状況が、好転する可能性があるニュースが飛び込んできました。

今はまだスタート地点ではあるものの、資源の量もかなり凄いようです。ただ、場所が深海なので、門外漢の私には「そんなん採集できるんか」と不安もあります。掘り下げてみましょう。


05-01. どこで採れるの?

場所は南鳥島近辺とのこと。自衛隊基地があるのですが、厚木から4時間かかるとのことで、やっぱ遠いですね。ポケストップはあるのかな…普通の携帯のエリア外でしょうし、ないかな…。

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JAMSTEC 南鳥島EEZ海域でのレアアース泥採鉱システム接続試験の実施について

似た名前の「沖ノ鳥島」が環礁で、人が上陸できるような島ではないのに対し、南鳥島はそこそこ立派に島です。自衛隊基地もあります。人が暮らせる訳ですよ。これに関しては河野議員のBLOGに記事がありました。

この南鳥島の近辺の「海底」にレアアースは眠っています。


05-02. どうやって採掘するの?

海底6,000メートルってことは、富士山の高さが3,776メートルだから「富士山を逆さにして2つ分」という深さ。ちなみに日本で一番深く潜れる潜水艦は「しんかい6500」ですが、これらの部品や技術がもうロストテクノロジー化して「しんかい6500はもう作れない」という話がありました。技術が進化しているのに、不思議なものですね。(脱線すまん)

閑話休題、このレアアース採掘で活躍するのが「地球深部探査船ちきゅう」です。船の作りはこんな感じ。

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JAMSTEC 地球探索船ちきゅう

アジマススラスタという聞き慣れない言葉がありますね。海上、船という条件では「一箇所に留まり続ける」のはなかなか難しいです。潮流があるからね。で、このアジマススラスタ(360度回転するプロペラ)でそれが可能になるんだそうです。GPSとプロペラ制御で、動いても数センチ単位。これがないとポキっとパイプが折れてしまう。で、真ん中のデリックというのが掘削やぐら。ドリルパイプの連結・昇降を高速で行う役割を担う部分。

ちきゅうの凄いところは「ライザー掘削」という仕組みだそうで。船と海底を「ライザーパイプ」という太い管でつなぎ、その中を通ってドリルを降ろす仕組みです。まず、パイプの中に「泥水」を流し込みます。この泥水には、刃先を冷やす、掘りクズを地上に運ぶ、地層の圧力(ガス噴出など)を抑えるという重要な役割があります。掘った後の泥やクズを海底に垂れ流さず、船の上で回収・再利用できるため、環境にも優しい設計。

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地球深部探査船ちきゅう 

ここは余談ですけど、中の人達はどんな生活をしているのだろう、と気になった方はこちらも併せてどうぞ。なかなか面白い記事でした。


05-03. 安全性は?

南鳥島沖などで発見された「レアアース泥」は、陸上の主要な鉱床に比べて放射性物質の含有量が極めて低いという、安全性・環境面で大きなメリットがあります。これにはちゃんと理由があります。

成因の違い

中国などの陸上にある主要なレアアース鉱床(炭酸塩岩など)は、地球深部のマグマ活動に伴い、レアアースと一緒にウランやトリウムといった放射性元素も濃縮されやすい性質があります。火山由来なんですよね。一方、深海にあるレアアース泥は、主に海水中のレアアースが魚の骨や歯の化石(アパタイト)に吸着して堆積したものであり、生成のプロセスが放射性物質を濃集させるタイプではありません。

廃棄物問題の軽減
陸上鉱山では精錬過程で発生する大量の放射性廃棄物が深刻な環境汚染の原因となりますが、海洋レアアース泥はこれらの有害物質をほとんど含まない「クリーンな資源」と評されています。

薬剤の使用量が少ない
海洋レアアース泥は、希酸(薄い硫酸や塩酸)に浸すだけで容易にレアアースを抽出できる特性を持っています。中国で大問題になっているのがこれ。そういった陸上の鉱石を砕き、強力な薬品や高温処理を繰り返す工程に比べ、海底から取れるレアアースは処理に伴う事故や汚染リスクが低減されます。

陸上のレアアース鉱山では、レアアース鉱石に濃集するトリウムやウランなどの放射性元素の処理が大きな課題となります。レアアース泥は、レアアース濃度が高い一方でこれら放射性元素の含有量が非常に小さく、開発時に放射性廃棄物を出しません。これは、開発の経済性に直結するのみならず、持続的な開発という長期的視点でも大きな意味を持ちます。また、泥からレアアースを簡単に取り出せるという点も、資源開発の上では非常に大きなアドバンテージです。

東京大学 海洋開発〜研究室から社会を変える〜 海底鉱物資源

06. 日本のレアアース採掘:その歴史

実はレアアース採掘が形になる起点は割と最近です。レアアースショックの後の2012年に「南鳥島沖で レアアース鉱床が確認され、日本の年間消費量を200年以上まかなえる可能性 があると紹介されています」という記事が出ました。で、今年の1月に初めて採掘が成功。この歴史を紐解いてみましょう。

06-01. 2012年 南鳥島沖でレアアースを発見

日本の経済水域でまとまった量のレアアースが確認されたのは初めてのケースでした。埋蔵量は国内の年間消費量の220年分以上とみられている。中でも、ハイブリッド車のモーターに使われるジスプロシウムは「日本の消費量の400年分以上あると推定される」という量。

朗報ではありますが、当時から懸念も示されています。レアアースの鉱床が発見されたのは、水深5600メートルの海底。日本の排他的経済水域の海底にあるレアアースを引き上げて資源として利用するには、深海からの採掘・採取するための新たな技術開発が必要。明るいニュースではあるが、実用的になるのはまだまだ未知数、という段階ですね。


06-02. 2018年 南鳥島沖のレアアース埋蔵量測定

2018年、東京大学の加藤泰浩教授の研究チームが論文を発表。研究チームは、深海の海底泥を採取して化学分析を行い、レアアースの分布を調査。その結果、約400平方キロメートル(横浜市とほぼ同じ面積)にわたるエリアに、レアアースを含む泥が分布していることが確認されました。量が莫大すぎてピンときませんよねw

レアアースの種類主な用途推定埋蔵量
イットリウム  :
蛍光灯、医療機器、レーザー (780年分)
ユーロピウム  :テレビ、PC、LED照明(620年分)
テルビウム   :蛍光灯、磁気材料(420年分)
ディスプロシウム:ハイブリッド車、風力発電 (730年分)


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TrendOffice レアアースがちきゅうで南鳥島に成功した海底資源採取の全貌と日本の未来への影響

06-03. 2022年 経済安全保障推進法成立

私がこの記事で書きたかった内容の一つがこの項目。2022年に成立した「経済安全保障推進法」により、レアアースを含む重要鉱物は「特定重要物資」に指定されました。岸田政権のレガシーの最重要項目がこの法案ですよ。

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CREX 特定重要物資とは 指定された11物資と経済安全保障推進法を解説

経済安保はレアアース確保に向けて、下記の方向で進められました。

サプライチェーンの強靭化
政府が民間企業の設備投資や備蓄を支援できるようになりました。

JOGMECの機能強化
独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が、海外の鉱山開発や製錬事業に出資・債務保証を行いやすくなるよう法改正が行われました。


06-04. 2026年 深海からの引き揚げに成功

地球深部探査船「ちきゅう」を用いた実証実験により、世界で初めて水深6,000mの海底からレアアース泥を連続的に引き揚げることに成功しました。資源が不足しがちな我が国にとって、これは大きなトピックと言えるでしょう。世界中の需要を満たせるような資源がそこにあるのです。

JAMSTEC提供動画として、この回収の様子が映し出されていました。すごいなぁ。こんな超深海から、ゆらゆら動く船でパイプぶっ刺して、泥を引き上げるとか、私みたいな凡人には思いもつかないです。

【海底レアアース泥採取ざっくり概要】
探査船「ちきゅう」深海6000mからの連続揚泥試験
特徴
閉鎖型循環揚泥システムを導入し、環境負荷を最小化。海底泥の高濃度レアアース(ネオジム、ジスプロシウム、イットリウム等)回収に成功。
回収量
1日あたり最大350トンのレアアース泥を安定的に揚泥。
今後の予定
2027年:商業採掘の実証実験、採掘・精錬システム最適化
2030年以降:商業生産・国内産業向け供給体制確立


07. 今後の課題

この章が最後ですね。おめでたいお話の後なのですが「そうそう浮かれてばかりもいられない」というお話をしなくてはなりません。手放しで喜ぶにはちょいと懸念があれこれあるのです。環境負荷、実用化までの期間、採算性などを掘り下げていきます。

07-01. 精製工程の危険性と環境負荷

レアアースの精製は、実は採掘そのものよりもデンジャラスで過酷です。

強酸・強塩基の使用
泥から特定の元素を抽出するために大量の化学薬品を使用します。この廃液処理を誤ると、周辺海域や土壌に甚大な被害を及ぼします。
放射性物質の混入
レアアース鉱床には、多くの場合トリウムやウランなどの放射性元素が随伴しています。これらを安全に分離・管理するプロセスは非常にコストがかかり、一歩間違えれば深刻な環境汚染につながります。
分離の難しさ
レアアースは化学的性質が互いに非常に似ているため、特定の1種類(例えばネオジムだけ)を取り出すには、何百回もの抽出工程を繰り返す必要があります。ポカリスエットとアクエリアスを混ぜて分離するみたいな感じでしょうかね(例えが雑すぎる)


07-02. 実用化までの時間軸

試験採取という段階はどうにかできたとしても、深海から引き揚げて「製品」にするまでには、まだ多くのステップが必要。「うしおととら」で例えますと、白面の者と対峙するまでにはまだ遠く、今は飛頭蛮に勝ったくらいのところかな。

揚泥技術の確立
水深6,000mという、エベレストが逆さまに入るほどの超高圧下から、継続的に大量の泥を引き揚げる技術はまだ世界でも確立されていません。現在は「試験採取」の段階です。
国内プラントの整備
日本国内には、現在これほど大規模なレアアース精製を担える商業プラントが十分に存在しません。インフラ整備だけで10年単位の歳月を要すると予測されています。まあ、これは海外に依頼する形になるんじゃないかなと思います。国内では環境基準的に厳しすぎる。
2020年代後半の商業化目標
政府は2020年代後半の商業化を目指しています。今は2026年でしょ?もうプロジェクトとしては残り期間が少ない。うまくいけばOKではあるのですが、技術的なトラブル一つで数年単位の遅れが出る世界。


07-03. 採算性の壁

「掘れば掘るほど赤字」という事態をどう避けるかが最大の焦点です。

課題項目内容莫大な操船・操業コスト
数千メートルのパイプを下ろし、巨大な母船を長期間維持する費用は、陸上鉱山とは比較になりません。日本には中国のような「陸上から採取」が難しいので、海底にその場所を求めたのですが(人が住んでないエリアですからね)、その分コストはかかっちゃいます。
市況の変動リスク
中国などの主要生産国が供給量を増やして価格を下げた場合、コストの高い海底資源は一気に競争力を失います。欧州や米国は、日本からの輸出に関して今のところ期待してくれてはいますが、それもコスト次第でどう転ぶかはわからない。
初期投資の巨大さ
数千億円規模の投資が必要となりますが、民間企業単独ではリスクが高すぎて手が出しづらい。国家単位のプロジェクトにはなるのですが、採算ベースのものになるかどうかはまだまだ未知数。


07-04. とは言え、自国で賄えるのが経済安保上はプラス

中国の意向によって供給が途絶えても、自国にそれがあるというのは、国内の製造業にとって非常にプラスです。政治的な情勢によって「原材料が入ってこない」よりも「多少高くても、必ず確保できる」は大きい。

この辺はずらずらずらっと書き連ねましたが、複数のサイトの内容である程度中身が共通しているものをまとめました。特に参考になったのは笹川平和財団 海洋政策研究所 (OPRI)の資料。(Google翻訳ありがとう)





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