「絶叫マシンよりバスが稼ぐ」100周年の地方私鉄グループ、上場でも続く同族経営の“合理的理由”
創業以来の同族経営
富士急行グループを語るうえで欠かせないのは、上場企業でありながら創業家・堀内一族による同族経営が続いている点だ。現在、上場している鉄道会社(持株会社を含む)のなかで、同族経営を維持しているのは富士急行と東武鉄道のみである。 現社長の堀内光一郎氏(65歳)は創業者のひ孫にあたり、1989(平成元)年の就任以来36年にわたってトップを務めてきた。就任当時、29歳で東証一部上場企業の社長としては最年少だったこともあり、注目を集めた。堀内一族は創業者・堀内良平氏以来、光一郎氏の父・光雄氏まで代々衆議院議員を歴任しており、政界との関係も深い。 2025年3月時点で、富士急行グループの筆頭株主は公益財団法人堀内浩庵会(持株比率12.09%)、次いで株式会社エフ・ジェイ(持株比率11.9%)である。前者は光一郎氏が理事長を務める公益団体、後者は同氏が代表を務めるグループ会社だ。光一郎氏個人の持株比率は1%に満たないが、これら関連法人を通じて同族経営を維持している。 上場企業、特に旧東証一部や現プライム市場においては、同族経営者の実質的持株比率が20%程度であっても、他の株主が結束して経営方針を否決する可能性は低い。 富士急行グループの取締役には光一郎氏の長男・基光氏(34歳)も名を連ねており、遠くない将来、社長に就任することが見込まれる。
別荘開発事業の一時停止
同族経営は、富士急行グループに限らず、長年にわたり功罪が語られてきた。 功の面としては、トップダウンで経営判断が迅速に下されること、長期にわたる“政権”により短期的な利益に縛られず中長期的な事業展開が可能になる点が挙げられる。 一方で、罪の側面としては、組織の硬直化や創業家の暴走を止められない構造が指摘される。 富士急行グループも例外ではなく、堀内一族による同族経営には批判がある。富士急ハイランドの絶叫マシンで事故が起きた際には、同族経営がもたらすガバナンス不全が問題視されたこともあった。 とはいえ、かつて同族経営だった鉄道会社の多くが普通の上場企業へと変わるなか、富士急行グループで今も同族経営が維持されていることは、株式市場を通じて中長期的な事業の持続可能性が一定の評価を得ている証左ともいえる。 一方で、不動産事業は懸案となっている。山中湖畔で計画していた別荘地の開発では、山梨県有地の賃貸借契約を巡り県を提訴しており、販売や仲介は一時停止中だ。県との折り合いがつけば事業の進展が見込まれ、不動産事業の拡大も期待される。 創業100周年を迎える中で、光一郎氏から基光氏への経営権移譲の行方は現時点で不透明だが、その手腕には引き続き注目が集まる。
銀河鉄道世代(フリーライター)