「藍子ちゃ〜ん、早く早くっ!」
「はいはい、見せたいものって一体何なの?」
ある日の朝、まどかに連れられた藍子は「秘密基地」のひとつ、薮の中に隠された古い廃倉庫へとやってきていた。
鍵を使って分厚い鋼鉄製の扉を開けて中へと入る二人。倉庫の奥の部屋に足を踏み入れたところで目にした光景に、藍子は唖然として、
「何コイツ……」
と呟いた。
そこには、二人の男がいた。
一人は柱と椅子に縛り付けられ、口をテープで塞がれてモゴモゴと呻いている。
藍子が見つめるのは、もう一人の男。全裸で両腕を体の後ろに拘束された彼は、足首のロープを天井のフックに結わえられ、上下逆さになって宙にぶら下がっている。ペ*スにはピンク色の『ビリビリ君』。そしてその頭部には、透明な球形の器具が被せられている。
潜水士や宇宙飛行士がかぶるマスクのようにも見えるそれは、藍子が特注した『完全気密フード』、通称『毒ガス金魚鉢』(言うまでもなくまどか命名)であった。確かに大きな金魚鉢にも見えるそれは、頭に被せることで首から上を覆い、首元でキュッと締まるゴムパッキンで完全に密閉される代物。
内と外を繋ぐ通気口は二箇所ある。
ひとつは、空気“だけ”は僅かに通す特殊なフィルターが張られた小さな穴で、そこから酸素を取り込むことで、中に密閉された者が短時間で窒息することを防ぐ。
そしてもうひとつは、ちょうど頭部が入れば鼻に近いあたりの部分に位置し、繋がれたチューブが伸びる穴。もっともそれは、通気口と言うよりは、「注入口」と呼ぶべきだろう。チューブには、開閉コックと逆流防止弁がついている。
――ここまでくれば、もう説明の必要もないだろうか。このチューブの口は藍子やまどかの肛門に繋がれ、大量の放屁ガスがフードの中に注入されるのである。
注入後、すばやくコックを閉めれば、頭部を覆う毒ガス室の完成。気密性抜群のフードの隙間は存在せず、特殊なフィルターは臭い成分の行き来を99.999%遮断するため、彼女達の腸で生成されたこの世で最も劣悪なガスは、いつまでもフードの中に留まって、中の人間を蝕み続ける。
『ビリビリ君』と『毒ガス金魚鉢』、藍子が作り出したそんな非人道的拷問具をふたつも取り付けられた上で逆さ吊りにされた男。透明なフードであるため、彼の表情がはっきりと読み取れる。目をギョロリと見開き、口をひん曲げて開いた、惨たらしい苦悶の死に顔が。――外から見ただけでは分からないが、フードの中には彼の頭部と共に、とんでもない量の卵っ屁が濃縮密閉されているのである。
そんな男を前にして、まどかはエヘヘッと笑う。
「コレねぇ、昨日の夜に酔っ払いの二人組がナンパしてきたから、ここに連れて来たの!昨日はバイトでお皿割っちゃってちょっとヘコんでたから、ストレス解消しようと思ってイジメちゃった♪」
昨夜、二人の男を容赦ないおなら責めで恐怖のどん底に突き落としたまどかは、「どちらにしようかな」で選んだ方の男に『毒ガス金魚鉢』を被せ、『ビリビリ君』を装着させた。
男性器を心底嫌悪するまどかはゴム手袋を二重につけて、
「うわぁ、超キモぉい……、グニャグニャしてるし最悪ぅ……。藍子ちゃんがいたら絶対藍子ちゃんにお願いするのになぁ……」
などと不平を漏らしながらそれを取り付けたが、いざリモコンのボタンを押し、ピピッという音と共に、
「あひゃぎゃあッッ!!!!」
と男が跳ね上がったのを見ると、にっこりと笑顔を浮かべた。
彼の足首に固く結ばれたロープを天井のフックに繋げ、電動リフトで引き上げた後、まどかは彼に向けてこれ見よがしに生尻をぷりっ、ぷりっ、と振ると、『金魚鉢』から伸びたチューブをその割れ目へと挟んだ。
それを見て、逆さ吊りにされた男は何が行われようとしているかを察した。
「ひぃいッ!!や、やめてッッ!!!そ、それはッ!!それだけはッッ!!!
お、お願いでずッ!!やめてッ!!やめてくだじゃいッッ!!!お願いじまずがらッッ!!!!」
と必死に懇願し、抵抗して暴れようとする男。だが、逆さ吊りの最も優れた点は、その者の抵抗という行為を完全に無に帰させることにある。
無駄な抵抗でクネクネと身を揺らす彼を見て、まどかはアハハハッ!とひとしきり可笑しそうに笑った後、
「や〜だよっ♪」
と言う茶目っ気たっぷりの一言と共に、
ぶぶぶぶしゅううううぅうぅうーーーーーぅうぅうーーうーーーーぅううぅううぅうっっ!!!!!!
と、長い、長い長い長い一発をチューブに向けて流し込んだ。
「やッや、やめッ――ふぐぎゃああああああああぁあぁああッッ!!!!!
やめてええぇえぇええぇーーーぇえええッッ!!!あぁあぁあぁああッッ!!!!!」
肛門から放出され、管の抵抗も計算された上で設計されたチューブの中を通り、まどかの腸内腐敗ガスはほぼ100%、他に漏れることなく『金魚鉢』の内部に送り込まれた。
チューブの出口から吹き出てくる生暖かい温風は男の鼻付近に命中し、その卵臭さで彼を苦しめる。そしてガスはその後も拡散することなく、フード内に溜まり続ける……。藍子が設計した通りの性能だった。
まどかの常軌を逸した長さの卵っ屁は、実に1分間近く出しっ放しで注入された。これでもう十分という域を遥かに超え、『金魚鉢』の内側に濃縮に濃縮を重ねて充満したところでようやく放屁を止めると、まどかは素早くチューブの根元についたコックを閉じて、にっこりと笑った。
「アハハッ、これでもう二度と中の臭いは薄まらないよ〜。あ、そうそう、気絶して苦しいのから逃げようって思ってもダメだからね?」
まどかは宙吊りのまま悶え苦しむ男にそう話しかけると、『ビリビリ君』のリモコンについているスイッチを、「マニュアルモード」から「オートモード」にスライドさせた。
実はこの『ビリビリ君』も、最近藍子が改良を加えた『ビリビリ君2号』であった。2号機で追加されたオート機能は、男の左胸に貼り付けられたシール状の多機能センサーと共に使用される。センサーは彼の心拍数、筋肉の緊張等をモニターする。「オートモード」に設定された『ビリビリ君』は、センサーからの反応を元に、「装着者気絶」と判定した際に自動で高電圧を流すのである。
「できるだけ気絶しない方がいいよぉ。ビリビリッてなると、タマタマもげちゃったんじゃないかってくらい痛いんでしょ? エヘヘ、気絶しないならしないで、私のおならを嗅ぎ続けなきゃいけないんだけどね♪」
バイトでミスをして落ち込んでいたまどかは、この頃にはもうすっかり上機嫌。
「また明日来るからね〜。それまで生きてられたら、そこから下ろして『毒ガス金魚鉢』も外してあげる!アハッ、じゃ、がんばって〜、バイバ〜イ♪」
もちろんまどかは知っていた。この状態で放置された男が、一晩保つはずがないということを。それでも敢えて希望を持たせるような発言をして、彼女は手を振りながら倉庫を後にする。
そしてその様子を、椅子と柱に縛られたもう一人の男は、泣きながら見守っていた――
「――っていう感じで、藍子ちゃんの作った『毒ガス金魚鉢』、ありがたく使わせてもらったからね!」
昨夜のことをキャイキャイ楽しそうに語ったまどかは、男が吊るされている下の床に置かれたタブレット端末を手に取る。
「おならもちゃんと加減して調節したし、卵っ屁注入して吊るした後も痙攣しながらしばらく暴れてたから1時間や2時間で死んじゃったってことはなかったと思うけどぉ……」
そのタブレットには、センサーから送られた男の心電図データのログが保存される。つまり、彼の心臓がいつまで動いていたかが記録されているのである。
「うん、あの後、5時間半は生きてたみたい♪」
満足げに頷くまどかと、言葉なく苦笑いを浮かべる藍子。
そのかたわらで、もう一人の男はカクカクと震えながら二人のことを見つめていた。
男二人の内、まどかは敢えて片方を腐卵ガス責め逆さ吊りに処し、他方への見せしめとした。
生き残らされた方の男は、一緒にナンパをしていた悪友が悶え苦しむ様子を嫌でも目にしなければならなかった。頭まで柱に固定され、俯くことも視線をそらすこともできない。背筋を伸ばして座らされた格好のまま、ただ吊るされた友人をまっすぐ見つめ続けなければならなかったのだ。
初めのうちは、透明なフード越しに何度も目が合った。
「ぐふッ、だ、助げで…ッ、助げでぐれ……ッッ!!!
ぐ、ぐじゃいんだよぉ、し、死ぬッ、卵臭すぎて死にそうなんだよぉ……ッッ!!!
ぅぅうッ、ぐ、ぐぜぇッ、こッ、ここからッ、出してくれよぉお……ッッ!!!!」
号泣し、嘔吐きながら助けを求める友人を目の前にしても、彼はそこから動いて助け出すどころか、口を塞がれているため声を掛けることすらできなかった。
あのフードの中がどんなおぞましい空気になっているのか、まどかからおなら責めを受けた上で縛られた彼も嫌というほど想像ができた。だからこそ友人を助けてやりたかったが、ただ見ていることしかできなかった。
しかも、悪臭に悶える声が徐々に弱々しくなり、限界を迎えてフッと意識が落ちると、ほんの1秒後、ピピッという電子音と共に、
「おぁぎゃぎいぃいッッ!!!!」
と下半身を仰け反らせるように跳ねて絶叫し、また悪臭に苦しみだす友人。もう見ていられなかったが、それでも椅子に縛られた彼には、見ないという選択肢は用意されていなかった。
――吊るされた男の体が力尽きるよりも先に、折れたのはその精神だった。
約4時間に渡ってもがき、苦しみ、助けを求め、それが叶わぬと知って絶望して泣き喚いていた彼は、次第にまともな言葉を発しなくなっていった。
「…ぁ…く…さい…卵…くさいよぉ……た…まご…く…さ……‥」
目をギョロッと見開きながらも両方の黒目はあさっての方向を向き、虚ろな表情で口をパクパクさせながら、ただ「卵」「臭い」というふたつの単語だけを繰り返す。何時間経っても全く薄まることのない高濃度腐卵臭に包まれ続け、精神が崩壊したのである。
「…くさ…い………卵…くさ……たま…ご………………、ぎゃぎッひぃッ!!!!」
そうしているうちに意識が飛べば、容赦ないピピッという音の後、思い出したように大声で叫んで目覚める。人間は精神が破壊されても、痛覚による苦しみ――特に男性の場合は生殖器の痛覚――は最後まで残る。それこそが『ビリビリ君』がとりわけ恐ろしく非人道的な拷問具である所以である。
――そんな彼がようやく終わりを迎えたのは、時刻にして午前4時少し前のこと。
「…た…まご…たま…ご……たま……ご………た…ま………ご…………………」
この頃にはもう、彼は涙も枯れ果て、瞬きする体力もなくなって見開いたままの充血した両目で虚空を見つめるような顔をしていた。口から出る言葉は、フード内の卵っ屁が彼の脳みそにまで染み渡ってしまったかのように、「卵」の一単語だけ。その声もか細くなり……、べろんっ、と口から舌が力なく溢れたのに合わせて、ついに途絶えた。
センサーが反応し、ピピッと音が鳴って彼のペ*スに高電圧が加えられる。
それでも、彼はピクリとも動かない。
その後、10秒程度の時間を置いてピピッという音が三度繰り返された末、『ビリビリ君』は「装着者死亡」と判断し、オートモードでの運転を停止した。
こうして、夜が明けてまどかと藍子が訪れるまで、倉庫の中に響くのは、椅子に縛られた男が友人の亡骸を前に啜り泣き、嗚咽をあげる音だけになったのだった――
「――まどかってホント、可愛い顔に似合わずエグいこと考えるわよね………」
「え〜?そう?照れるなぁ、それほどでもないよぉ〜」
「いや、褒めてないからね」
冗談めかして笑い、頬を掻くまどかと、半ば呆れながら冷静にツッコむ藍子。
藍子は吊るされた男のむごい死に顔を一瞥して小さく溜息をつくと、振り返って椅子に縛られた男の方を見た。
「……で、コイツは?」
「ナンパしてきたもう一人のお兄さんだよ〜。藍子ちゃんと一緒にイジメようと思ってとっておいたの!」
「口に何か入ってるけど……」
「エヘッ、も・ち・ろ・ん、私の脱ぎたておパンツだよ〜。たっっっぷりおなら染み込ませてあげたから、口に入れた瞬間、すんごい顔してたよ♪」
「まったくもう……、ウフフッ」
呆れ顔の藍子にも、まどかの無邪気な表情を見て、つい笑みが漏れる。藍子からすれば、まどかのこういうところが愛らしいのである。
「じゃあ、こっちのお兄さんはどうせ死んじゃってるししばらく吊るしたままにしといてぇ……、早速、始めちゃおう!」
まどかはそう言うと、男を椅子と柱に固定していたベルトを外し、足を引きずって床に寝かせた。彼はもう、暴れたり抵抗したりすることはなかった。まどかがベルトに手を伸ばしただけで、ビクッと身を震わせ、真っ青になったほどだった。彼は一夜を経て、暴れることが無意味だと思い知らされて、彼は一切の反抗心を失っていた。
手足は縛られたまま、仰向けになった男。まどかは彼の口に貼られた粘着テープを剥がし、詰め込まれたフリル付きのパンティを取り出す。テープが剥がされた瞬間、彼の口の中からもわぁっと溢れ出した卵臭は、まどかの隣にしゃがんでいた藍子の鼻にも届いた。一晩中、彼は口に充満する卵臭にも苦しめられていたのだ。
「あッッ、あぁあッ!!や、やべでッ!!もうやべでぐだじゃいッッ!!!!」
塞がれた口が解放されて、彼は再び涙を流しながら慈悲を乞う。が、まどかはそれには一切答えず、にこにこしたまま、容赦なく彼の顔を尻で押し潰した。
「やめるわけないでしょ♪」
ぶぐごッッ!!!!びぶううぅうぅうーーーーーーぅううううううぅうッッ!!!!!
「ギィイッッ!!!?キイェエェェーーーーーェエェエエェエエッッ!!!!!」
放たれた爆音放屁。
パンティの布を挟み、ゼロ距離でそれを受けた男は、縛られた足を必死に暴れさせながら、尻の下でくぐもらせながらも、甲高い悲鳴をあげた。
「……ぷっ、フフッ、何その声」
その叫び声を聞いて、思わず吹き出す藍子。
まどかも彼の顔に座ったまま藍子の方を見て微笑む。
「でしょ?このお兄さん、変な声で苦しむから面白いんだよ〜」
「ホント可笑しいわね。ニワトリみたい」
「アハハッ!確かに〜!コケコッコ〜♪」
ぶすびッばぶすうぅうぅううぅーーーーぅううーーーぅううぅううぅうッッ!!!!!
「ァギョッ!!ヒャヒギィイイィーーーーィイイイッッ!!!!!」
まどかが放つ派手な音の放屁に負けないほどに奇妙な声をあげる男に、まどかと藍子は顔を見合わせて笑う。
当然、彼にしてみれば必死そのもの。変な声を出そうという意識などなく、大の男でも思わず声が出てしまうほど臭い放屁を浴びて自然に出る絶叫なのだが、彼女達にとってみれば、ひとつの笑いのタネでしかない。
尻の下でも男が泣いていることを感じながら、まどかは彼に声をかける。
「エヘヘッ、私のおならプ〜、昨日より強烈でしょ? あの後お兄さんのために、もっと臭くなるようにちゃんと準備してきてあげたんだからね〜」
「ヒッ、ヒィギッ、ギィィエッ、ィィイ……ッッ!!!!」
そこで、相変わらず裏返った声で恐怖を表す男を見てウズウズしていた藍子は、ニヤつきながらまどかに、
「ねぇ、まどか、ちょっと私にもやらせて? そのニワトリ声、私もお尻で感じてみたくなっちゃった」
と声をかける。
「うん、いいよ〜。でも、壊さないでね?」
「もちろんよ、元々まどかの獲物だもの」
まどかは立ち上がり、それと入れ替わる形ですぐさま藍子の巨尻が男の視界一杯に広がって、ずむぎゅうっ、と密着する。
「ムギヒッ!!?ヒギャヒィイイッッ!!?!?」
「アハッ!お兄さん驚いてるみたい!藍子ちゃんのお尻がおっきすぎてびっくりしちゃったのかな?」
「何それ、失礼しちゃうわ。でもこの声、お尻に響いてなかなかいい感じ。嗅が甲斐ありそう、ウフッ」
――と、そこで、予想外の事態が起こった。
尻に敷かれた男が何を考えたのかは分からない。まどかの言うように、藍子のあまりにも規格外な尻の豊満さに驚いたのか、何もかも絶望して自暴自棄になったのか、はたまたパニックに陥って思考外の突発的な反射行動だったのか。――彼は藍子の尻の下で口を開き、舌を伸ばしたのだ。
偶然にも、口と舌の位置もピンポイントだった。伸ばした男の舌は、藍子の尻の割れ目に入り込んだ。そしてその舌先は、藍子の履くTバックパンティの布越しに、彼女の肛門を突くように触れたのである。
「ぁんっ!?」
藍子が特に敏感な性感帯は、右側の乳首、背中、そして肛門。
その行動と絶妙な位置関係が招いたのは、男にとっては不運な結末だったろう。
完全に不意をつかれた藍子は、驚いて声をあげ――思わず、肛門を緩めてしまった。
ふすっっっかああああぁぁあぁああぁあーーーーぁああーーーーーぁあぁあぁあ…………っっっ!!!!!
「あ、やば」
「ンヒギャアァアッ!!!?ギャヒッ!!!
ァンギョォァアアアァアーーーァアアーーァアァアアッッ!!!!!!」
そのすかしっ屁は、藍子が出そうと思っていた「軽めの一発」の五段階ほど上を行く、濃密濃厚な大放屁となってしまった。
予想外の刺激を受けて放たれた「うっかりすかしっ屁」の超絶的な腐卵臭濃度は、常人の致死限界レベルを軽く超えていた。
「やば」という藍子の一言虚しく、とめどなく吹きかけられた熱風に、男はこれまで以上に派手で奇妙で悲愴的な大絶叫をあげ、見たことがないくらいの尋常ではない勢いで暴れて、ついにはビグンッ、ビグンッ、と二度大きく痙攣し……、動かなくなった。
静まり返った室内。
確認するまでもなく分かる。彼は今の一発で死んでしまっている。
尻を持ち上げれば、煩悶に満ちた彼の死に顔が表れてしまう。藍子はなかなか立ち上がれず、彼の顔面に座り続けたまま、恐る恐るまどかの方を見る。
「ご、ごめん、まどか。その……、コイツが急に舐めてきたから、ついうっかり、ちょっとだけ濃いめのが出ちゃって……、だからその、これは事故っていうか……」
ここまで慌てる藍子も珍しい。
それもそのはず。藍子相手には特に、滅多なことがない限り怒ったりしないまどか。そんな彼女が怒りをあらわにする数少ない例外が、「冷蔵庫のプリンを勝手に食べられたとき」と「自分の獲物を勝手に殺されたとき」なのである。
「藍子ちゃん……」
影が差した、俯くまどかの表情。
だが、顔を上げたとき、彼女が浮かべていた優しい笑顔だった。……怖いぐらいに、優しい。
「いいよ、 大好きな藍子ちゃんだから許してあげる!――その代わり、出し足りなかったぶんは、全部藍子ちゃんに嗅いでもらうね♪」