ある日曜の朝。
珍しくデートの予定もない週末。まぁ先週は4回もデートしたし、藍子ちゃんも試験勉強だとかで忙しそうだし仕方ないかな。そんなことを考えながら、ベッドから起き上がらずにウトウトと二度寝に入ろうとしていたまどかのスマホにメッセージが入る。
『まどか、起きた?』
藍子からだ。
愛しの恋人からメッセージが来ただけでまどかの顔がぱぁっと明るくなる。
『起きてるよ〜。藍子ちゃんおはよ♪』
そして、彼女の返事に、またすぐ返ってきたリプライを見て、まどかの表情はさらに笑顔になった。
『今日時間ある?男釣りにいかない?』
彼女達二人にとって、「男を釣る」のは至極簡単なこと。
人がごったがえしている休日の若者の街で、二人で手持ち無沙汰な素ぶりをして暇そうにキョロキョロしていればいい。行き交う男性はほぼ間違いなく彼女達のことをチラ見してくる。あとは「いい感じ」の男に声を掛けられるのを待つだけだ。
二人で釣りの「待ち」をしている間、まどかは藍子の顔をちらりと見る。
「それにしても珍しいね、藍ちゃんの方からこんなお誘いなんて。今日女の子の日だっけ?」
「フフッ、違う違う。実はね……」
藍子はそこまで言って、まどかにそっと耳打ちしながら小さな声で囁いた。
「今日お腹に溜まってるガス、ものすっごいの♪」
それを聞いて、
「アハハッ、やだな〜藍ちゃんのはいつも物凄いって〜!」
と笑うまどかに、藍子の方も溢れる笑いを堪えきれないというようにニヤけながら、周囲を見回し、すぐそばには人目がないのを確認してから、まどかだけに聞こえるようひそひそと話し出す。
「いやいや、いつも以上の凄さなのよ。布団から漏れてきた自分の寝っ屁の臭いで目が覚めるなんて久しぶりだったわ」
「アハッ、ウソぉ〜!」
「ホントホント。たまに凄い音の寝っ屁しちゃって目が覚めることはあるけど、そうじゃなかったから、きっとスカシたんだと思うんだけど、もう朝の4時過ぎに起きちゃって、そのまま部屋が臭すぎて全然眠れなくてね。今日は試験勉強するつもりだったけど、我慢できなくなってまどかに連絡しちゃったの」
いつも冷静な藍子が珍しくウキウキしてはやる気持ちを隠せずにいる。それは、彼女の内側に溜まっている今日のガスが本当に超異常級である証拠。そのガスを抱える下腹のあたりを、まどはかこっそりさする。
「そんなに物凄いんだぁ。何かヤバいものでも食べたの?」
「そうねぇ、昨日はバイトの帰りにビビンバ丼食べたくらいだけど。でもこういうのって、食事だけじゃ一概に語れないじゃない?」
「あ〜、わかるわかるぅ。コレ食べてヤバくなったからって別の日に同じもの食べても、同じヤバさにはならないもんね〜。じゃあもしかして、お通じ、来てないとか?何日目?」
「うーん、そういえば……、これくらいかも」
藍子は左手でパーを作り、その上に右手で作ったチョキを重ねる。それを見て、まどかは笑いながら、藍子のお腹をぽんぽんっと軽く叩いた。
「アハッ!それはなかなか立派だねぇ〜! きっと食べたものとかそういうバイオリズムとか、色んなことが微妙なバランスで関係して、ピタッとハマった日に激ヤバになるんだね♪」
「フフッ、その通りね、きっと。……だからね、こんな日の“アレ”を男の鼻の中に出さないなんて勿体無いじゃない。それも、一人ヤるんじゃ絶対満足できない、ヤるなら二人か三人と思ってね。まどかと二人でいれば、二、三人は釣れるでしょ」
にやぁっと浮かぶ藍子の不敵な笑み。その妖艶で邪悪な笑顔は、まどかの胸も熱くさせたらしい。ぽーっと頬を赤らめ、藍子の目をじーっと見つめる。
「わぁ、藍ちゃん久々に鬼怖だぁ。ていうか今日は私にはヤらせてくれないの決まってるの〜?」
「ごめんごめん、でも今日は許して。もう目が覚めて自分のガス嗅いだときから、これを男の鼻にブチかましたらどうなるか想像すると、ウズウズしちゃって治らないのよ。だから今日は私にヤらせて?……最後にまどかにも嗅がせてあげるから」
どうやらまどかは、藍子の最後の一言を待っていたらしい。ぱっと顔を綻ばせた彼女は、にっこり笑って頷いた。
「んっ、なら許す♪藍ちゃんの鬼怖ガスいっぱい嗅ぐぅ♪」
この騒がしい雑踏の中、彼女達二人だけの会話の内容を、周囲の人間が知る由もない。二人の美女がひそひそと何か秘め事を話し合う様子は、むしろ妖しく見えることだろう。彼女達の言う「ヤる」という言葉にあてられる漢字が「殺る」であるということなど、当然、何者も知る由もない――
彼女達の「釣り」はいつも通り、容易に完了した。
男を待って15分、ナンパしてきた3人組のチャラ男が今回の犠牲者。
「こっち三人だし、そっちももう一人呼んでもいいよ」
などと言われたが、もちろん彼女達二人は断った。
うーん、3対2か……、でもそうとう上玉だし、複数Pでヤるのもいいか。そう判断した三人組は、彼女達の口車に乗せられ、ノコノコと郊外にある廃墟の「秘密基地」へ。――そこが鬼の巣とも知らずに。
一人目は、あまりにも呆気なかった。
「秘密基地」に到着した男達は、美しい彼女達のイメージとはかけ離れた廃墟にいささか困惑しながらも、
「いいもの持ってくるから、アイマスクつけて待ってて?サプライズだよ〜♪」
とまどかに上目遣いで言われて断れるはずもなく、ドキドキして目を閉じている間にあっさり両足を鎖で柱に繋がれてしまう。
そこからが、殺戮ショーのスタート。
慌てる三人のうち、最もそばにいた男の首筋をひっ捕まえた藍子は、抵抗する彼を引きずり倒し、流れるような身のこなしで顔面騎乗。目隠しをしたままの彼は、何が起きたのかも分からなかった。ただ「とてつもなく大きい、圧倒的な何か」に顔を潰されている、ということに当惑する彼は冷静になって考える暇すら与えられず、顔面騎乗から2秒後、
ふすうううぅうぅううぅーーーぅうううううーーーーーーぅうぅうぅうう…………っっ!!!!!
という熱いガスが顔面に直撃していた。
「むッッげええぇえぇえーーーーーーぇえぇええぇえッッ!!!?!?」
一発で即死だった。
断末摩の後に、1分も保たずに声を発しなくなった彼は、藍子が巨尻を持ち上げたときにはもう手遅れ。混乱と驚愕と絶望の死に顔で絶命していた。
「うーん、だいぶ加減したつもりだったけど死んじゃったわね……」
下腹のあたりをさすりながら、半分困り、半分呆れたように言う藍子。
それを見ながら、暴れる残りの二人を取り押さえて手錠をかける作業をしていたまどかは、
「アハハッ!藍子ちゃん、いきなりスカシは無理だよ〜!藍子スカシガスはただでさえ猛毒なんだから、ヤバイ日のなんて嗅いだら即死に決まってるじゃん!」
と言って笑う。
「もう、猛毒なんて失礼ね。まぁ、やっぱり今日のが別格っていうのは分かったし、一発でスカし殺すのはちょっと勿体なかったけど、尊い犠牲ってことにしとくわ」
藍子は小さく溜め息をつくと、こうなることを見越して持参していたあるものをハンドバッグから取り出す。
「じゃあまどか、そっちお願いね」
「オッケー!」
それは、茶褐色の小さな瓶。取り出した二本のうち一本をまどかに手渡し、キャップを開ける。
「おッ、おいッ!!どういうことだ、こ、これ外せッ!!!」
「つーかこの臭い、ゥエ……ッ、お、おい、何したんだよ一体ッ!!?」
そして、暴れる男二人の前に立つと、互いに目配せし、同時に瓶を彼らの口に突っ込んだ。
「がぼッ!!?ごぼ……ッ!!」
「な、なッ!!?がぼ……ッ!!」
突然得体の知れないものを口に入れられて当然抵抗するが、首を後ろに倒されて喉を開けられてしまい、瓶の中身の液体を体内に流し込まれる。苦いような酸っぱいような独特の味。まさか毒を飲まされた……? 慌てて戻そうとしても、何故か上手く吐き出せない。まるで胃に入った瞬間、すぐに吸収されてしまったような……
「アハッ、毒なんかじゃないから心配いらないよ〜!むしろその逆、その名も『ゲンキニナ〜ル』!」
「眠気覚ましのエナジードリンクってあるでしょ、翼が生えるとか何とかいうやつ。アレを市販できないレベルにまで強力にたものとでも思ってくれればいいわ」
確かに、それを飲まされた瞬間から、彼らは体の内側が熱くなり、唾液が減り、心拍数が上がっていくのを感じていた。そしてそのドリンクの意味を聞かされたとき、彼らの口の中はますますカラカラに乾くことになる。
「これを飲めば、一人目の彼みたいにちょっとやそっとじゃ死ななくなるからね〜。よかったね!アハハッ!」
「まぁ、言うなればあなた達を“頑丈なサンドバッグ”にするためのお薬ってところかしら。フフッ、だって今日のガスの調子じゃ、ドーピングしなかったらあなた達なんて一瞬で死んじゃってつまらないんだもの」
男達は、何が何だかわからなかった。が、彼女達が言う「死」がすぐそばまで迫っているということは、この周囲に漂う絶望的な硫黄臭から、本能的に直感することができた。
慌てふためき、「何をする気だ」「離せ」などと口にする二人の男。その二人を交互に眺めた後、藍子は向かって右側の男を選び、そっと手を伸ばしてアイマスクを外す。
視覚が回復した彼が目にしたのは、先刻街でナンパしたときにはクールで落ち着いた淡い微笑が魅力的だった美女が、歯を見せてニタァッと笑い、発情した獣のようにはかはかと息を荒らげて自分を見つめている光景だった。
「二人目はあなたね♪ウフッ♪」
ぶふぉおおぉおっっ!!!ぶぶぼおぉおぉーーーーーぉおおぉおおおおーぉおおっっ!!!!!
「いッうぎゃああぁああぁあああぁあぁああああッッ!!!!!
ぐじゃいぃいいぐじゃいよおおおぉおぉーーーーーぉおおおおおッッ!!!!!
ふぐむぎゅッッ!!!むぐうぅううぅううーーーーぅううッッ!!!!!」
二人目に対しても、「慣らし」など経ず、初めから容赦ないおなら責めが行われた。
普段の藍子であれば、最初はかなり手加減した一発を嗅がせ(それでも一般的なレベルから見たら十分すぎるほどの激臭である)、徐々に濃さを増していく……、という段取りを踏むことが多い。だが、今日の彼女は、まさに飢えた獣。腹に溜まった極悪級のガスを、男に嗅がせたくて嗅がせたくて仕方がなかった。そんな彼女にまどろっこしい段取りを踏む余裕などない。というか、元々こうやって使い潰すために三人も男を釣ってきたのだ。
逃げ出せないよう両足を拘束したことと、『ゲンキニナ〜ル』(もちろん、これもまどかの命名である)を投与したこと以外に小道具の使用はなし。床に引き倒した男の顔に自慢の超特大ヒップに落とし、放屁を連発。それは純粋なタコ殴り。彼女達の言葉を借りれば、「頑丈になったサンドバッグに、反動をつけたストレートパンチをひたすら叩き込み続ける」ようなシンプルな暴力。今日の藍子には、いつも使うような娯楽用の小道具は必要なかった。
今は、彼女達の人間を超越した腐敗放屁のことを身を以て理解した男の悲鳴を楽しむため、放屁直後に腰を上げて彼の顔の上に5ミリほどの隙間を作り、ひとしきりの叫び声を聞いてからまた巨尻をぶにゅうぅっと押し付ける、ということを繰り返している。
暴れて転げ回られると面倒なので、藍子は男の足首を掴んで上に引っ張り上げている。腰から下を持ち上げられ、背中は地に着いた状態で、頭は巨大な尻に敷かれる。力によって藍子に完全に支配された体位だ。
蹲踞の姿勢で股を開いてしゃがむ藍子。一見しただけでは気づかない立派な下半身のおかげで軸がブレることなく、蹲踞での腰の上げ下げが行われる様は、まさに精密な毒ガス拷問マシン。彼女の巨尻に比べるとあまりに貧弱な体の男が喚きながら暴れるのが滑稽に見えてくる。
「あぁん……、容赦ない藍子ちゃんいいよぉ…素敵……」
そんな様子を、まどかは少し離れたところに座り、うっとりとした表情で眺めていた。
その隣には、順番を待つ三人目の男。ガチガチと歯を鳴らして震える彼は、柱に体を結ばれた状態でパイプ椅子に座らされたまだアイマスクをしているが、聞こえる凄惨な悲鳴と彼女達二人の会話、そして鼻に届く信じられない臭いによって、状況は嫌でも理解させられていた。
まどかはわざわざ自分用の椅子を彼の隣に置き、並んで座って藍子のおなら責めを見物していた。もちろん、見ているだけではない。プロレスラーが子供を相手にするほどの圧倒的な力の差で行われる暴力的なショーに心踊らせ、空間に充満した藍子の臭すぎるガスを笑顔で吸い込んで楽しみ、……さらに興奮を高めるように、自分も放屁し、手にガスを握って自分自身でスゥーッと嗅いでいた。
ぶぅううッ!!ぶッしゅッ!!!
「スゥ〜〜ッ、…ん……っ、はぁ〜〜っ、くさぁ……っ」
気分が高揚するに従って、まどかの左手は自然と胸元に向かい、自分の乳房を揉みしだき始める。それと同時に右手では自分の放屁を握り込む。もちろん、握ったガスは自分自身で嗅ぐばかりではなく、隣に座る男にも届けられる。
ぶぶびいいぃいいいッッ!!!!
「――ほいっ!」
「ひぎッ!!!?ぐ、ぐっぜえぇえええぇえッッ!!!!!」
アイマスクをしている彼にとっては、予告なしで鼻に擦り付けられる握りっ屁。まどかにしては短めの一発で、直に嗅がされているわけでもないが、その臭いは一人の男を叫ばせるには十分。
この日釣ってきた男達を「使う」のは飽くまで藍子。まどかはその本番を観戦しながら、順番待ちの三人目の男を「ちょっとだけ使って」遊んでいるにすぎない。
ガスを握り込まれた右手を鼻の上に被せられ嗚咽をあげる男に、まどかは笑いながら、
「私の握りっ屁くらいで大騒ぎしてたらダメだよ〜。これだけ離れててもわかるでしょ、今日の藍ちゃんのおならは、こんな軽い握りっ屁とは比べ物にならないんだから!」
と話しかける。
震え上がる男に、まどかはさらに追い討ちをかけるように続ける。
「アハッ、二人目も結構弱ってきてるみたいだし、もうすぐ君の番だよ〜。藍ちゃんのを嗅いだら、私の握りっ屁が香水に感じるかもね♪」
「そ、そんな、ど、どんだけ、く、くさ、いの………」
声を震わせながら、か細い声を絞り出す男。もう本能ではこの異常な状況を理解させられているが、アイマスクをしている彼の理性がまだ現実を認めたがっていないらしい。
「ん?どんだけ、って、お友達の悲鳴、聞こえないの?」
まどかはそう言って、藍子の方をチラリと一瞥する。そこではちょうど次なる一発が放たれ、敷かれた男に叫ばせるために巨尻が持ち上げられようとしていた。
ばふぉおおぉおぉおーーーぉおーーーーーぉおぉおおぉおおおおぉおおっっ!!!!!!
「げへぇッ!!ぐぜええぇぇえええーーーぇええええッッ!!!!!
死ぬッッ!!!!死んじゃううぅううううッッ!!!!!
ふもぎゅううぅうーーーーーぅううううううッッ!!!!」
ひとしきり叫ばされた後は、ぶにゅっ、と口ごと顔を塞がれ、男の声は尻肉に阻まれる。
まどかは、友人の悲痛な叫びを聞いて真っ青に震え上がった三人目の男の耳元に顔を寄せると、そっと囁きかけた。
「分かったでしょ? ――“死ぬほど臭い”んだよ♪」