450万円→15万円。学生の個人開発を契約書なしで進めた結果
「そもそも、ただじゃないの?」
「しょうがないから15万円は払ってやろう」
これ、僕が5ヶ月かけて作ったアプリに対して、取締役から言われた言葉。
最初は450万円で話が進んでた。テスト導入も終わって、全店舗で実際に使われ始めてた。なのに、1月2日の会議で突然言われたのが「15万円で全権利をよこせ」だった。
学生という立場が、交渉力の弱さにつながったのだと思う。
でも、断ることにした。
同じような目に遭う学生を少しでも減らしたくて、この記事を書いてる。長くなるけど、全部書くので読んでほしい。
シフト管理が崩壊した日
僕は同じバイト先で3年間働いてた。アミューズメント施設で、全国に店舗があるそれなりに大きな会社。
シフト管理には、大手が提供してる業務用のサービスを使ってた。全国の店舗で導入されてたから、まさかこれがなくなるなんて思ってもなかった。
ところがある日、急にサービスを解約する旨の連絡がきた。
理由は詳しく知らないけどランニングコストが嫌だったらしくて、とにかくそのサービスは使えなくなった。代わりに導入されたのは、Googleスプレッドシートでの一括管理。シフトの提出はGoogleフォーム。
正直、めちゃくちゃ不便だった。
スプレッドシートって、誰でも編集できちゃうから、間違えて他の人のシフトを消しちゃったり、いつの間にかデータがおかしくなってたりする。セキュリティ的にも大丈夫なのかなって不安だった。
しかも共有でアクセスできたアカウントは、店舗の金庫情報とか従業員の時給とか個人情報も閲覧できてしまっていたのだ。
何より、社員さんの負担が目に見えて増えてた。毎週、フォームで集まったシフト希望を見ながら、手作業でスプレッドシートに入力して、被りがないか確認して、調整して……。その作業を見てるだけで、これ、絶対もっと楽にできるのにって思ってた。
フォームで提出して、スプレッドシートで管理。デジタル化してるようで、実質アナログと変わらない。なんていうか、デジタル化したつもりのアナログみたいな感じだった。
僕が作りましょうか?
僕はそれなりにプログラミングができた。ハッカソンにも何度か出たことがあるし、AIツールも使える今の時代、シフト管理アプリくらいなら自分で作れるんじゃないかなって思ってた。
ある日、社員さんがシフト調整で苦労してるのを見て、半分冗談で言っちゃった。
「僕が作りましょうか?」
本当に軽い気持ちだった。へえ、作れるの?くらいの反応で終わると思ってた。
でも、話はトントン拍子で進んでいった。
本当に作れるなら、ぜひお願いしたいと言われて、上の人にも話が通って、気づけばアプリ買取を前提にっていう形で正式に開発がスタートしてた。
冗談のつもりだったのに、引き返せなくなってた。
5ヶ月間の地獄
5月から開発を始めた。
この5ヶ月間は、今振り返っても地獄だったと思う。
まず、時間がなかった。大学の授業は普通にあるし、課題も出る。テストもある。そしてバイトも続けてた。開発の時間を確保するために、睡眠を削るしかなかった。
毎日、大学が終わったらバイトに行って、家に帰ってからコードを書く。気づいたら朝になってて、そのまま大学に行く。そんな生活が何週間も続いた。
実際に使う店長などに欲しい機能のヒアリングをしたり、プロトタイプを見せて反応を確認してみたりした。
技術的にも、わからないことだらけだった。
シフト管理アプリを作るのは初めてだし、実際に企業で使われるものを作るのも初めてだった。「動けばいい」じゃダメで、誰が使っても壊れないように、セキュリティもちゃんと考えないといけない。
独学で必死に勉強した。セキュリティの本を読み漁って、認証の仕組みを調べて、データベースの設計を何度もやり直した。
ランニングコストはできるだけ抑えてほしいっていう要望もあったから、サーバー代がかからないようにSupabaseっていうサービスを使って、極限までコストを削減した。これも初めて使う技術だったから、ドキュメントを読みながら手探りで進めた。
一番しんどかったのは、バグとの戦いだった。
これでいけると思ってテストすると動かない。原因を調べて直すと、今度は別の場所がおかしくなる。一生治らないんじゃないかって思うバグもあった。何時間も画面とにらめっこして、ようやく原因がわかった時の脱力感は今でも覚えてる。
それでも、これが完成すれば報われるって思って、なんとか続けた。
現場のスタッフにも何度もヒアリングした。実際に使うのは自分じゃなくて、バイト先の人たちだから。ここ、ちょっと使いにくいって言われたら作り直す。この機能があったら便利なのにって言われたら追加する。その繰り返しだった。
自分のためじゃなくて、誰かのために作ってる。その感覚が、しんどい時の支えになってた。
11月、ついに動き出した
11月、ついにアプリが完成して、社長や各店の店長に許可を頂いて実店舗での運用が始まった。
正直、本番環境で動かす日はめちゃくちゃ緊張した。テスト環境ではちゃんと動いてたけど、本番で何か問題が起きたらどうしよう。そんな不安を抱えながら、リリースの日を迎えた。
結果から言うと、大きなバグもなく、ちゃんと動いた。
その時はもう、ホッとしすぎてちょっと泣きそうだった。5ヶ月間の苦労が報われたと感じた。
でも、それ以上に嬉しかったのは、スタッフが実際に使ってるのを見た時だった。
自分が作ったアプリを、みんなが当たり前のように開いて、シフトを確認したり、希望を出したりしてる。これ使いやすいねって言ってもらえた時は、本当に嬉しかった。
自分が作ったものが、実際に人の手に渡って、役に立ってる。
その感動は、5ヶ月間の苦労を全部吹き飛ばしてくれるくらい大きかった。プログラミングやってて、一番幸せな瞬間だったと思う。
実際に運用が始まると、バイトとの両立は難しくなった。問い合わせに対応したり、細かい修正をしたり、やることはたくさんあった。だから11月からはバイトをしばらくお休みすることにした。
450万円で話が進んでた
運用が軌道に乗ると、いろんな店舗の店長や上層部との会議が始まった。
このアプリの機能はシフト提出や閲覧、作成といった基本機能から、掲示板や自動でシフトを組んでくれるAI機能のようなものまで作成していた。
最初に提示された金額は、450万円。正直大金だと驚いた。
これは、以前使ってたシフト管理サービスの1年分の利用料と同じ金額だった。自社でアプリを持てば、毎年その分のコストが浮く。学生で450万円というのはかなり大金だし、アプリ作成にかかった期間や今回が初めての取引であることを考えても妥当な金額だと感じた。
話は順調に進んでた。
シフトアプリだけじゃなくて、勤怠管理や在庫管理のアプリも作れば、もっとコストを削減できる。そういう話もしてた。保守運用は僕が会社の一員として関わっていくつもりだったし、今回は例外として、今後は時給で働くって話もしてた。
会議を重ねるたびに、話は具体的になっていった。契約書も作ったし相手の会社の社労士と経理にもチェックしてもらってOKサインがでていた。全店舗への導入も進んでた。
僕は報われた気がしてた。5ヶ月間、死ぬ気で作ったものが、ちゃんと評価されてる。これからもっといいものを作っていける。そう思うと、本当に嬉しかった。
1月2日、全てが崩れた
年が明けて、1月2日。
会議があった。
この日、取締役から言われた言葉を、僕は一生忘れないと思う。
「15万円で全権利をくれるなら、買い取ってやる」
最初、何を言われてるのかわからなかった。
450万円で話が進んでたはずなのに。導入も終わって、全店舗で使われてるのに。15万円?
頭が真っ白になった。
確かに、学生の僕にとって15万円は大金だ。でも、5ヶ月間かけて作って、導入して、運用までやって、15万円?
後から聞いた話で、さらにびっくりした。
取締役が言ってたらしい。
「そもそも、ただじゃないの?」
「しょうがないから15万円は払ってやろう」
僕が5ヶ月かけて作ったアプリを、タダだと思ってたらしい。
私の知らないところで社内最終会議が行われ、アプリの買取金額について議論したそう。
私のアプリの良さを知っていた現場の方々は便利だと言ってくれていたこともあり、取締役に対してかなり尽力してくれたみたいだ。最初は50万円で打診して、40万円、30万円と下げていったらしい。それでも取締役は首を縦に振らず、最終的に15万円ならって話になったらしい。
会議に同席してた企画の方は、僕にこう言ってくれた。
「足元見すぎて、さすがに最低な提案だと思う」
「こんな会社と一緒に働きたいって思ってくれるわけないよね」
「正直ありえないと思うから、遠慮なく断ってくれて問題ない」
その人は本当にいい人だった。エンジニアじゃないけど、この提案がどれだけひどいかはわかるって言ってくれた。でも、組織の中で声を上げても、上には届かなかったみたい。
これは交渉じゃない。搾取でしかない。
そう思った。
売っちゃおうかな、って思った
正直に言うと、ヤケクソになりかけた。
この時点で、給料は3ヶ月入ってなかった。バイトもお休みしてたから、収入はゼロ。貯金も底をつきかけてた。来年度、学校に通えるかもわからない状況だった。
15万円でもいいから売って、お金をもらって、ここから関係を築いていった方がいいんじゃないか。そう思いかけた。
15万円で売れば、とりあえず目の前の問題は解決する。その後、時給で働きながら、信頼関係を築いていけばいい。最初は安くても、実績を積めば認めてもらえるはず。
そんな風に自分を納得させようとしてた。
でも、ふと気づいた。
学生だからって、大手企業で使う自社アプリをこんな安い値段で売っちゃったら、今後も同じように搾取されるんじゃないかな。
「学生なんだから、このくらいでいいでしょ」
そう思われ続けるんじゃないかな。
結果的に自分の価値を、自分で下げることになる。
一度「15万円で売った人」ってなったら、それを覆すのは難しい。最初に安く売ったら、ずっと安く見積もられる。
かなり悩んだ末に断ろうと思った。
社長への直談判、そして拒否
納得がいかなかった。取締役一人の判断で、これまで積み上げてきた450万円の話が、たった3%の15万円にされるなんて。
もしこれが会社としての判断なら私は理解ができないと思った。
僕は、社長に直接会って話をさせてほしいと願い出た。このアプリが現場でどれだけ役立っているか、どれだけのコストを削減できているか、そしてこれまでの経緯を自分の口で伝えたかった。
でも、返ってきたのは非情な拒否だった。 「取締役が決めたことだから、社長が出る幕はない」と言われ会うことすら叶わなかった。
その瞬間、僕の中で何かがぷつりと切れた。 現場で必死にアプリを使ってくれているスタッフの顔や、改善のために夜通しコードを書いた日々が浮かんでは消えた。トップに話を聞く気すらないこの組織に、僕の資産を預けることはできない。
「もういい、全部やめよう」
僕は15万円を断り、アプリを自分の手元に残す決別を選んだ。
5ヶ月の成果は水の泡になった。
アプリは売らなかった。
つまり、今の僕は無職。もう3ヶ月は収入がない。
できるだけ早く次のバイトを見つけないといけない。
正直、不安でいっぱい。お金のこと、学校のこと、これからのこと。考えると眠れなくなる夜もある。このアプリをきっかけに起業しようと考えていたこともあって、全てが崩れてしまったような感覚に襲われる。
でも、あの場で「はい」って言わなくてよかったと思ってる。
5ヶ月間で作ったアプリは、僕の手に残ってる。技術力も、経験も、全部自分のもの。これは誰にも奪えないかけがえのないものだろう。
次にまた何かを作る時、同じ失敗はしないようにしたい。
正直、僕も未熟だった
今思えば、僕にも落ち度はたくさんあった。
まず、ビジネスの経験がゼロだった。営業もしたことないし、契約ってどうやって進めていくのかも全然知らなかった。「話が進んでる」っていう感覚だけで安心してて、それがどれだけ危ういことか、わかってなかった。着手金とかで最初から契約を結ぶべきだった。
契約書を交わさなかったのも、完全に僕の落ち度だと思う。買い取る、ちゃんと払うって言葉を信じてたけど、書面になってないと何の意味もなかった。450万円で話が進んでるって思ってたのは僕だけで、正式な書類は何もなかったから、相手は平気で15万円って言ってきた。
世間知らずだったと思う。学生だから仕方ないって言い訳もできるけど、それでも自分でちゃんと調べて、最低限の知識を持っておくべきだった。
もちろん、「ただじゃないの?」って言ってきた相手もどうかと思う。でも、そういう人がいるってことを想定できなかった僕も甘かった。
最初にちゃんと契約書を交わしてたら、こんなことにはならなかったのかな。今となってはわかんないけど。
最後に
5ヶ月間の開発は、本当にしんどかった。何度も心が折れかけた。
でも、後悔はしてない。
技術的にはめちゃくちゃ成長した。セキュリティのこと、データベースのこと、実際のユーザーの声を聞きながら開発すること。全部この経験で学んだ。
自分が作ったものが、実際に人の役に立ってる瞬間を見れた。あれは本当に嬉しかった。
ただ、もう少し賢くやれたなって思う。最初から契約書を交わしてれば、違う結果になってたかもしれない。それだけが悔しい。
もし同じような状況の人がいたら、僕の失敗が何かの参考になればいいなと思う。
追記
今はインターンを探してます。
5ヶ月間で得た経験と技術力があります。
ハッカソンにもよく出ているので、技術へのキャッチアップ力もあります。
興味を持ってくれた方がいたら、ぜひ声をかけてください。



現場とビジネスサイドのギャップで起きた悲劇ですかね。15万円で売らなかったことは正しいと思います。必ずいいことがありますので前に向かって進んでください。弊社ではインターン募集しております。もし興味ありましたらフォローしましたのでメッセージください。よろしくお願いします。
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