シュレーディンガーの猫は“不思議な話“ではなかった
シュレーディンガーの猫という思考実験について、詳しく知っていますか?
あ、こんにちは。僕は65歳文系の石を積んで遊んでるおじさんです。最近物理に興味が出て高校の教科書と参考書を買いました(照)
そんな僕が気になったシュレーディンガーの猫の話を追いかけてみた話です。
正直に言うと、僕はあまり詳しく知りませんでした。
「量子という小さなミクロの世界で起きている出来事を、もっと分かりやすく、現実のマクロな世界に置き換えて説明する話」—そんなふうに思っていたのです。
ところが、いくつかの本を読んだり、物理に詳しい人と話をしてみると、どうやら僕の思っていた話とは、ずいぶん違うものだと分かってきました。
波動方程式を発表し、量子力学を世に広めたエルヴィン・シュレーディンガー は、アルベルト・アインシュタイン と同じように、確率でしか語れず、日常感覚では掴みどころのないミクロな世界の説明のしかたに、強い疑問を抱いていた人物でした。
⸻
ミクロな世界の考え方を、そのままマクロな現実へと
視点を拡大していくと、どうにもおかしな話になってしまいます。
「量子力学の考え方を、そのまま現実の説明として使ってよいのだろうか?」
その疑問を、極端な形で突きつけるために考えられたのが、「シュレーディンガーの猫」という思考実験でした。
それが、いつのまにか「箱の中では生きた猫と死んだ猫が重ね合った状態だ」「箱の中を見た瞬間に猫の生死が決まる。しかも見た人の意識が関係している」といった、かなり飛躍した話として語られるようになってしまったのは、なぜなのでしょうか。
分からないなりにいろいろ調べてみると、量子力学とは直接関係のない解釈や、生き方の話にまで話を広げてしまう人が、どうやら少なくないようです。
そこで改めて、「シュレーディンガーの猫の思考実験とは、そもそも何だったのか」を、もう一度追いかけてみることにしました。
⸻
調べてみると、その名のとおり、これは実際の実験ではなく、想像上の装置を使った思考実験です。
ところがネットなどで引用されている説明を読むと、
「思考実験である」という断りがないものも多く、まるで本当に箱が存在したかのような印象を受けてしまいます。
想像されている装置は、次のようなものです。
量子的な振る舞いをする放射性物質があり、それが崩壊すると放射線が出ます。その放射線を検知する装置(これが観測)に連動して、毒ガスが発生する仕組みを考えます。
つまり、いつ崩壊して放射線を出すか分からない量子的な物質と、100%マクロな生き物である猫を、同じ箱の中に閉じ込めておく、という想像です。
このとき、放射線が検知されるまでは、毒ガスが出たのか、何も起きていないのかは分かりません。箱を開けてみれば、猫が生きているか死んでいるかは、そこで分かります。
ところが、観測されるまでのあいだを量子力学の計算として 波動方程式で書き出そうとすると、「生きている」「死んでいる」のどちらか一方に答えを決めることができません。
計算上は、生きている可能性と、死んでいる可能性の両方を含んだ状態として記述されてしまうのです。
ここから、「生きた猫と死んだ猫が重ね合っている」
「観測したときに初めて決まる」といった、有名な言い回しが生まれたようです。
⸻
シュレーディンガーが言いたかったのは、「猫が本当に生と死の重ね合わせになる」ということではありません。
彼が問いかけたのは、もっと素朴なことです。
「このように、波動方程式を現実の世界へそのまま当てはめると、こんな変な話になってしまう。それでも、この考え方は通用すると言えるのだろうか?」
一方で、この思考実験が提案された時点でも、量子力学の計算結果と実験結果はよく一致していました。理論そのものが疑われることはなく、量子力学は“計算の道具”として、どんどん応用されていきます。
実際、計算機械としてブラックボックスのように扱っても、ちゃんと答えが出るのです。
多くの物理学者は、現象を解析し、数式にし、実験で確かめ、その成果を次へ応用していく、という流れの中で仕事をしています。解釈の細かい部分は、物理学の主な関心事ではありません。
だから、「量子力学では心が現実を作る」といった話をしている人は、物理学の話をしているわけではないのです。
たとえるなら、映画『インターステラー』を見て、僕が宇宙や五次元について語っているようなものです。行ったこともないけど。
量子力学を学んだ人ほど、計算や実験の話以外は、あまり語りません。逆に、計算も実験も触れたことのない僕たちのような人間ほど、「量子力学では〜」と言いたくなってしまうのかもしれません。
これが、シュレーディンガーの猫の話を、じっくり追いかけてみた感想です。なぁーんだそうだったのかーという方がひとりでもいてくれるとうれしいです。


コメント