2026年も春季労使交渉「春闘」が始動した。物価上昇への対応で5%台の賃上げが実現した24年以降、高水準の賃上げが続いてきた。一方で、足元で物価上昇に追いつかないため「実質賃金」の低迷が続く。厚生労働省が発表する実質賃金は、25年11月まで11カ月連続でマイナスに沈む。

 こうした動きの中で始まった26年の春闘だが、賃上げの勢いは強まらない状況だ。連合は賃上げ率の目標を全体で「5%以上」とし、前年と同水準にとどまった。

 米国の関税措置が、自動車業界を中心に業績への打撃となっている。トヨタ自動車グループの労働組合でつくる全トヨタ労働組合連合会(全トヨタ労連)は、25年に要求方針で掲げた「昨年を超える積み上げ」の文言を削除した。全トヨタ労連の西野勝義会長は「賃上げは必要だが、労働組合が要求をすれば回答がもらえるという局面ではない」と話す。

 1月に日本経済研究センターがまとめた民間エコノミストの春季賃上げ率の予測平均値は5.02%で、25年の5.52%を下回る水準に沈む。一方で消費者物価は、政府のエネルギー負担の緩和策やコメなどの食料品の価格高騰が落ち着き、26年度は前年より低水準を予想する声も多い。

 ただ、BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「財政政策で物価を下げることは、新たな物価上昇圧力を生むため、実質賃金の上昇は一時的に終わる可能性がある」と見る。

トヨタ労組は「個人の頑張り反映」を柱に

 じり貧の状況に陥りつつある26年の春闘だが、打開策はあるのか。米国の関税措置の影響で業績に打撃を受けているトヨタ自動車労働組合は、賃上げ原資の配分を個人の頑張りに応じて配分するよう求める方針を示した。

 トヨタの賃上げ率は非公表だが、前年に「過去最高水準」としていた表現を今年は使っていない。一時金の要求水準も7.3カ月分と前年の7.6カ月を下回る。ただその中でも「期待を上回る能力を発揮している人に報いる」として、標準的な考課より上の組合員にはより賃金を引き上げるよう求める、例年にない要求を盛り込んだ。

26年の交渉要求を発表するトヨタ労組の鬼頭圭介執行委員長
26年の交渉要求を発表するトヨタ労組の鬼頭圭介執行委員長

 トヨタ労組幹部は「会社の収益環境が厳しい中では、労働組合として単に賃上げを求めるだけでは足りない。生産性の向上につながるメッセージも併せて伝えたかった」と語る。会社側も25年の交渉で、成果に応じた処遇改善の方向性を打ち出しており、これに呼応した形だ。一方で「労働組合としてはすべての組合員の賃金引き上げが求められる中、打ち出し方には悩みもある」と打ち明ける。それでも、頑張りに応じた配分を増やすことで、より多くの賃上げ原資を獲得する狙いだ。

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