なぜ「タバコを禁止できないの?」という「素朴な疑問」にどう答えるのか #エキスパートトピ
喫煙所問題などに関する記事を書くと「健康に有害で社会に大きな負担になるなら喫煙を禁止すればいい」というコメントをよく目にします。その疑問はもっともですが、タバコと喫煙習慣は長い歴史の間に多くのニコチン依存の人を生じさせ、政治、財政・税制、産業、法制度の中に深く組み込まれてしまい、単純に喫煙を禁止することがすでに難しい状態になっています。健康被害が明らかでも、厳しく規制をかければ、現在の喫煙率のままでは社会全体に歪みが生じる危険性があるのです。
ココがポイント
喫煙所は、食後の一服を楽しむ人たちでたえず満員。混雑が嫌なのか、路上でたばこを吸おうとする人も。
出典:MBS 2025/9/12(金)
モルディヴは2日、2007年1月1日以降に生まれた若者の喫煙を禁止した。
出典:BBCニュース 2025/11/4(火)
価格政策と禁煙支援、そして電子タバコを含む一体的な規制こそ、喫煙率を確実に下げる現実的手段だ
出典:ダイヤモンド・オンライン 2025/12/18(木)
エキスパートの補足・見解
タバコを全面的に禁止できない背景には、ニコチン依存というタバコ製品の特性があります。喫煙が禁止されれば、喫煙者を違法な入手手段へと追い込みかねません。日本も参加する国際的なタバコ規制条約(FCTC)が締結されていますが、規制内容は各国にまかされ、喫煙禁止までは求めていません。さらに、タバコは国や地域で大きな価格差があります。実際、タバコを禁止した国もありましたが、他国からの密輸が増えた結果、規制を緩めざるを得ませんでした。タバコの禁止を実行するためには取り締まりや司法対応などに莫大な行政コストがかかり、財政(たばこ税収)や既存産業などへの影響も無視できないものとなり、違法取引などが反社会勢力の資金源になる危険性も生じます。
心血管疾患やがん転移などとニコチンに関係が示唆される研究が蓄積しつつあり、ニコチンは単なる依存性物質ではないという共通認識が社会全体に広まれば、大きな転換点になる可能性もあります。今後、受動喫煙対策やタバコ増税などが進み、喫煙率が十分に下がってくれば行政コストの低減も期待でき、禁煙サポートなどと組み合わせていくことで、タバコが社会から姿を消す可能性も現実味を帯びてくると考えられます。