かつて遠江(とおとうみ)国、遠州と呼ばれた浜松市で「お好み焼き」を出された時、他県の人は、思いがけないポリポリとした食感に驚くかもしれない。みじん切りのたくあんをたっぷり入れて薄く焼いた「遠州焼き」は、昔から駄菓子屋でも楽しまれていた庶民的な味わいだ。
「浜松ではこれが普通。私が子供のころも駄菓子屋で『お好み焼きください』と言ったらこれが出ました」。地元企業「トリイソース」の営業担当、鈴木大憲さん(49)は言う。
約15年前、浜松のお好み焼きはどうも独特らしい…と気づいた同社関係者が、成り立ちやレシピを改めて調査した。それによると、発端は戦後の食糧不足のころ。具材を増やそうと、市内の三方原(みかたがはら)地域でダイコンが多く栽培されていることから手に入りやすかったたくあんを、生地に混ぜるようになったという。
子供のおやつになるほどの気軽さから「生地のたねの濃度はさらさらにし、1センチ未満に薄く焼いたうえで三つ折りにするのも特徴」(鈴木さん)。位置づけとしては、東京のもんじゃ焼きに近いのかもしれない。
地元文化を再認識しようと関係者らは平成18年ごろにNPOを発足。当初は「遠州風お好み焼き」と名付けてみたが「〝風〟が逆に偽物っぽい」との指摘があがり、シンプルな名前に落ち着いたとか。今では居酒屋メニューでも「遠州焼き」の名が広がってきた。
焼く時の鉄板の温度さえしっかり上げれば失敗することはなさそう。実際に作ると、たくあんと紅ショウガの塩加減や甘みが絶妙なのか、次々と焼きたくなるほど予想外においしい。
たくあんは細かく切るほうがポリポリ感が楽しめ、2種類入れてもおもしろい。ソースもいいが、しょうゆのあっさり味もおすすめ。満足感は極めて高く、大げさでなく「たくあんってこんなにおいしいんだ」と思える一品だった。(今村義丈)
材料(4枚分)
小麦粉(薄力粉)120グラム
卵 2個
牛乳 30ミリリットル
水 160ミリリットル
たくあん 18グラム
紅ショウガ 16グラム
ネギ 10グラム
キャベツ 80グラム
豚肉 20グラム
しょうゆかウスターソース、サバ・イワシの粉(かつおぶしでも可)、天かすなど
作り方
①小麦粉がダマにならないよう牛乳、水を少しずつ入れながら生地を作る。
②生地を落ち着かせる間に、たくあんは5ミリ角程度に細かく刻む。キャベツ、紅ショウガはみじん切り、ネギは小口切りに。
③生地に②やお好みの具材を入れ、溶いた卵も入れる。
④ホットプレートを200度に加熱。油を薄くひき、おたま1杯分の③を丸く広げる。豚肉を端で焼く。
⑤生地全体に気泡が出てきたら、豚肉をのせて裏返す。さらに1分ほど焼いたら、またひっくり返す。
⑥しょうゆやソースなどを塗る。サバ・イワシ粉は全体にふりかける。
⑦三つ折りし、さらに味付け・ふりかけをして、完成。