【スガキヤの謎】初任給28万円の衝撃!名古屋のソウルフードは、なぜ「ラーメン屋」のフリをした巨大食品メーカーなのか?各地から撤退の背景と、知られざる生存戦略を徹底解剖する
皆さん、こんにちは。北陸、富山で貿易商を営んでおります、ツイ鳥です。
今日は、ビジネスの世界において非常に興味深く、そして私たちの地元・北陸にも深く関係する、ある企業のニュースについてお話ししたいと思います。
東海地方の方にはお馴染み、あの赤い看板のラーメンチェーン「スガキヤ」が、驚くべき発表をしました。
「来年春(2026年春)入社の新卒正社員の初任給を、最大5万円引き上げます」
ええ、聞き間違いではありません。5000円じゃない、5万円です。これにより、大卒総合職の初任給は23万円から一気に28万円へ。
さらに、既存社員も昇給し、年間の休日も8日増やす(108日→116日)というじゃありませんか。
この人手不足とコスト高で、飲食業界全体が悲鳴を上げているこのご時世に、です。
「え、スガキヤってそんなに儲かってるの?」
「だって、ラーメン一杯430円だよね…?(なおセール時はもっと安い)」
「すごい決断だけど、大丈夫なの?」
様々な声が聞こえてくるようです。
しかし、このニュースを聞いて、私が真っ先に抱いた疑問は、少し違うものでした。
そもそも、スガキヤって、
一体『何の会社』なんだっけ?
こう言うと、名古屋の方には怒られてしまうかもしれません。「スガキヤはスガキヤ!わしらのソウルフード!」と。ええ、分かります。あの独特の和風とんこつスープ。名古屋の文化そのものですよね。
しかし、私のような北陸の人間からすると、少し事情が違います。実は、富山にもかつてはスガキヤの店舗がありました。私も子供の頃、ショッピングセンターで食べた記憶があります。
しかし、いつの間にか全店撤退してしまい、今ではその姿を見ることはありません。(2020年には北陸地方から完全に撤退しています)
一方で、スーパーの棚には、「寿がきや」ブランドのカップラーメンや袋麺、鍋の素などが、当たり前のように並んでいます。
となると、どうでしょう。
スガキヤは、フードコートでラーメンを売る「飲食店」なのか?それとも、全国のスーパーに商品を供給する「食品メーカー」なのか?
一体どちらが本業で、
どうやって利益を出しているのか?
今回の賃上げのニュースは、この「知っているようで知らない」企業の、真の姿を解き明かす絶好の機会です。
なぜ彼らは名古屋で圧倒的な支持を得たのか?なぜ全国展開しない(あるいは、できなかった)のか?そして、彼らはどこへ向かおうとしているのか?
今回も、皆さんから寄せられたであろう疑問を元に、私、ツイ鳥が徹底的に深掘りしていきたいと思います。
これは、単なるラーメン屋の話ではありません。
戦後の混乱期から始まり、日本の高度経済成長、流通革命、そして現代の人口減少社会に至るまで、時代の変化に巧みに適応し、独自のポジションを築き上げてきた、ある企業の生存戦略の物語です。
さあ、皆さん、熱いお茶でも用意して、リラックスしてください。知的好奇心をくすぐる、ディープなスガキヤの世界へ、一緒に旅立ちましょう。
Q1:スガキヤって、結局「ラーメン屋」なの?それとも「食品メーカー」なの?
まずこれでしょうね。これこそが、スガキヤという企業を理解する上での第一歩であり、核心部分です。
多くの人が抱いている「イメージ」と「実態」の間に、実は大きな乖離があるんです。まずは、その構造から解き明かしていきましょう。
第1章:「スガキコ」と「寿がきや食品」。二つの顔を持つグループの正体
私たちが一般的に「スガキヤ」と呼んでいる存在は、実は単一の会社ではありません。
「スガキコグループ」という企業集団であり、その中核には、全く異なる役割を持つ二つの主要な事業会社が存在します。
今回のニュースリリースを出したのは、そのうちの一つです。では、この二つの会社が、それぞれ何をしているのか、整理してみましょう。
1. スガキコシステムズ株式会社(店舗運営事業)
こちらが、私たちがイメージする「ラーメン屋のスガキヤ」を運営している会社であり、今回の賃上げの主体です。
主な事業: ラーメンチェーン「スガキヤ」(約260店舗規模)などの運営。
主戦場: 東海地方(愛知、岐阜、三重)及び近畿地方のショッピングセンターのフードコートなど。
役割: 消費者との直接の接点。ブランドの「顔」。
2. 寿がきや食品株式会社(食品製造事業)
そして、もう一つの柱が、この「寿がきや食品株式会社」です。おそらく、東海地方以外の方にとっては、こちらの方が馴染み深いかもしれません。
主な事業: 即席麺(カップラーメン、袋麺)、チルド麺、調味料(鍋の素など)の製造・販売。
主戦場: 日本全国のスーパーマーケット、コンビニエンスストア。及び海外市場。
役割: グループの収益を支える「エンジン」。
この二つの会社は、ルーツは同じですが、現在はそれぞれ独立した法人として、異なる市場で、異なる戦略のもとにビジネスを展開しています。(厳密には、スガキコホールディングスという持株会社のもとで連携しています)
ややこしいですかね?例えるなら、そうですね…。「自動車メーカー」と、そのメーカーが運営する「カーディーラー(販売店)」の関係に近いかもしれません。
片方は工場で「製品(車や部品)」を作り、もう片方は店舗で「サービス(販売や修理)」を提供する。
スガキヤの場合、片方が「食品(即席麺やスープの素)」を作り、もう片方が「食事体験(店舗でのラーメン)」を提供しているわけです。
さて、ここで重要なのは、「どちらが本業なのか?」ということです。
両方とも本業なのですが、ビジネスの規模、つまり「売上高」で見ると、その姿は一変します。次の章で、その衝撃の事実を見ていきましょう。
第2章:売上規模から見る真実。ラーメン屋のフリをした巨大食品メーカー
スガキコグループは非上場企業であるため、詳細な財務データは限られますが、公式サイトや各種報道資料から、その事業規模を推測することは可能です。
近年のデータ(2024年〜2025年頃の推定値)を元に、両社の売上高を比較してみましょう。
スガキコシステムズ(店舗運営):約100億円〜120億円
寿がきや食品(食品製造):約200億円〜230億円
いかがでしょうか。この数字を見て、驚かれた方も多いのではないでしょうか。
そうなんです。食品製造事業(寿がきや食品)の売上高は、店舗運営事業(スガキコシステムズ)の約2倍もあるのです。
グループ全体の売上高(約300億円超)のうち、実に約3分の2を、即席麺などの食品製造事業が占めている計算になります。
つまり、ビジネスの実態として見れば、スガキコグループは、「ラーメンチェーンも運営している、巨大な食品メーカー」と定義するのが正確かもしれません。
私たちがフードコートで見ている「スガキヤ」は、彼らのビジネスのほんの一部、いわば「氷山の一角」に過ぎなかったのです。
その水面下には、愛知県豊明市にある巨大な本社工場をはじめとする生産拠点と、全国津々浦々まで張り巡らされた物流・販売ネットワークという、巨大なビジネスの塊が広がっていたのです。
考えてみれば、当然かもしれません。
店舗ビジネスは、立地、営業時間、席数といった物理的な制約があります。1日に売れるラーメンの数には限界があり、人件費や家賃といったコストも重くのしかかります。
特にスガキヤは「安さ」を強めの売りにしているため、客単価は低く、利益率は決して高くありません。
一方、食品製造ビジネスはどうでしょうか。
工場で大量生産し、全国のスーパーやコンビニに卸す。一度生産ラインに乗せてしまえば、物理的な制約ははるかに少なくなります。
大手メーカー(日清食品など)との熾烈な競争はありますが、スケールメリット(規模の経済)を活かすことで、安定した収益を生み出すことが可能です。
食品研究においても、パイオニア起業だったりもします。
実はいうと「寿がきや食品」は、1962年に日本で初めてスープの粉末化に成功するなど、高い技術力を持っています。
驚きですか?粉末化においては、最初の開発は大手メーカーではなく、元祖はスガキヤなんですね。
他にも「台湾ラーメン」の元祖「味仙」とのコラボ商品や、各種鍋の素など、多様なヒット商品を持っており、中堅メーカーとして確固たる地位を築いているのです。
面白いですよね。私たちが持っていたイメージが、ガラガラと音を立てて崩れていく瞬間です。
でも、となると、新たな疑問が湧いてきませんか?
「もし食品メーカーが本業なら、なぜ利益率の低いラーメン屋を続けているんだろう?」「ただのノスタルジー?」と。
いえいえ、そんな甘い話ではありません。店舗事業には、グループ戦略上、極めて重要な役割があるんです。
第3章:店舗事業の真の役割。「走る実験室」とSPAモデルの神髄
一見すると非効率に見える店舗事業ですが、スガキコグループ全体の戦略において、非常に重要な役割を担っています。それは、単なる「広告塔」以上の、戦略的な機能です。
機能1:究極の「マーケティング」と「研究開発(R&D)」の場
食品メーカーにとって最大の課題は、「消費者のニーズを掴むこと」と「新しい味を開発すること」です。最もリアルなデータは、実際にお客様がお金を払って食べている現場にあります。
スガキヤの店舗は、まさに「走る実験室」です。
どのメニューが人気か、どのような味付けが好まれるか。日々、数百店舗から上がってくるリアルタイムの販売データと、お客様の生の声は、食品製造事業にとって宝の山です。
新しい味を開発する際も、まずは店舗でテスト販売し、反応を見る。そこで好評だったものを、即席麺として商品化する。このサイクルを高速で回せることこそが、彼らの最大の強みなのです。
機能2:製造小売業(SPA)モデルとしての完成
そして、この「製造」と「小売(店舗)」を一貫して行うビジネスモデルは、アパレル業界で言うところの「SPA(製造小売業)」に非常に近い構造です。ユニクロやニトリと同じですね。
彼らは、自社で企画・製造した商品を、自社の店舗で販売する。これにより、中間マージン(卸売業者などの利益)を排除し、コストを極限まで抑えることができます。
同時に、品質管理を徹底し、ブランドイメージをコントロールすることも可能になります。
スガキヤは、飲食業界におけるSPAモデルの先駆者だったと言えます。自分たちでスープを作り、麺を作り、そしてそれを自分たちの店で売る。だからこそ、他社が真似できない「低価格」と「独自の味」を両立させることができたのです。
こうして見ると、スガキヤという企業が、いかに計算され尽くした、したたかな戦略を持っているかが分かりますよね。
「ラーメン屋のフリをした食品メーカー」であり、
その実態は「高度に完成された製造小売業」
この一言に、彼らのビジネスの奥深さが凝縮されています。
ファンタジー物語でもありそうですね。
少女漫画でありそうな、小さなラーメン屋の若き店主。庶民派ラーメン屋をやっていたが、実はイケメンの“財閥御曹司”だったとか。
料理漫画でありそうな、ただの学食ラーメンと思いきや、その道を築き上げた“製造小売り界の伝説勇者”だったとか。
ギャップは物語の定番ですけど、スガキコグループも擬人化すると1つのファンタジー物語作れそうですね。
さて、話を戻しますがこれでスガキヤの「正体」はある程度掴めました。
しかし、そもそも、彼らはどのようにしてこの独自のビジネスモデルを築き上げ、名古屋という地で「ソウルフード」と呼ばれるまでの存在になったのでしょうか。
次のQ&Aでは、時計の針を戦後の闇市まで巻き戻し、スガキヤ誕生の歴史と、その驚くべき戦略について、深く掘り下げていきたいと思います。
Q2:なぜ名古屋で「ソウルフード」と呼ばれるまでになった?(歴史と戦略)
確かにそうですよね。一つの飲食店が、地域全体の「ソウルフード」と呼ばれるまでになるには、単に「美味しい」「安い」だけでは不十分です。
そこには、時代の流れを掴んだ卓越した戦略と、創業者の強烈な哲学が不可欠です。スガキヤの歴史を紐解くと、まさにその両方が揃っていたことが分かります。
第4章:すべては戦後の闇市から。甘味処が起こしたラーメン革命
スガキヤの物語は、終戦直後の1946年(昭和21年)、焼け野原となった名古屋の栄地区の闇市から始まります。
創業者である菅木周一(すがき・しゅういち)氏は、親族と共に、この闇市の一角に小さな店を開きました。
しかし、驚くべきことに、彼らが最初に扱ったのはラーメンではありませんでした。「甘味」だったのですね。
当時の日本は、深刻な食糧難。特に砂糖は貴重品でした。そんな中で、温かいお汁粉やぜんざいは、戦争に疲れ、飢えていた人々にとって、何物にも代えがたい贅沢であり、心の拠り所でした。
「甘党の店」と呼ばれたこの店は、特に女性に人気で、大繁盛しました。
しかし、周一氏は、人々の「食」への欲求の変化を敏感に感じ取っていました。闇市を行き交う人々が、向かいの中華屋に通う姿を見て、彼は確信します。
「甘いものの次は、腹を満たすものが求められるはずだ」
そう考えた彼は、1948年(昭和23年)、メニューに「ラーメン」を加えます。
そして、創業者の姓「菅木(すがき)」に、縁起の良い「寿」を冠し、店名を「寿がきや」と改めました。これが、現在まで続く「スガキヤラーメン」の原点です。
この創業期のエピソードには、ビジネスの成功法則が凝縮されています。
時代のニーズの的確な把握(マーケットイン):
戦後の混乱期において、人々が最も渇望していた「甘味」を提供したこと。これは、顧客の需要を起点にビジネスを考える「マーケットイン」の基本です。
スピード感のある業態転換(ピボット):
甘味処としての成功に安住せず、次の需要(食事)を見越してラーメン事業へと迅速にシフトしたこと。変化への適応力の高さを示しています。
そして、もう一つ重要な点があります。当時のラーメン屋(支那そば屋)といえば、男性客が中心で、女性が一人で入るには敷居が高い場所でした。
しかし、寿がきやは「甘味処」として
スタートしたため、
女性客や家族連れが多かった。
周一氏は、この客層を大切にしました。店名を柔らかいひらがな表記にしたのも、女性客への配慮があったと言われています。
この「客層の違い」が、後のスガキヤの運命を大きく変えることになります。
第5章:「和風とんこつ」の衝撃。業界の常識を破った味の秘密
菅木周一氏は、甘味処時代からの女性客にも受け入れられる、優しくて飽きのこない味を目指しました。
当時の主流だった醤油ラーメンとは違う、何か新しい味は作れないか。
彼は試行錯誤の末、ある革新的なアイデアに辿り着きます。それが、当時まだ東日本では珍しかった九州の「とんこつ」と、日本人に馴染み深い「和風だし」の融合でした。
豚骨をベースにコクを出しつつも、鰹節やムロアジ節といった魚介系の出汁をブレンドする。これにより、豚骨特有の臭みを抑え、旨味と香りが際立つ、全く新しいスープが誕生したのです。
これが、スガキヤの代名詞であり、半世紀以上にわたって愛され続ける「和風とんこつ」スープです。
この「和風とんこつ」の開発は、製品開発戦略として見ても非常に秀逸です。
差別化(ブルーオーシャン戦略):
当時の主流とは全く異なる味を開発することで、独自の市場ポジションを確立しました。今でこそ「ダブルスープ」は一般的ですが、スガキヤはその先駆けでした。
ターゲット顧客への最適化:
女性や子供でも食べやすい、マイルドで旨味の強い味を目指したこと。これは、自社の主要顧客層のニーズに完璧に応えるものでした。
地域性(ローカライゼーション):
東海地方は、味噌煮込みうどんなどに代表されるように、魚介出汁の文化が根強い地域です。この地域の味覚に合わせたことで、熱狂的に受け入れられました。
余談ですが、この和風とんこつ、実は「模倣」が非常に難しいと言われており、これも今までライバルが出づらかった要因とも言われていますね。
さて、革新的な「味」を手に入れたスガキヤですが、彼らが名古屋を制圧し、「ソウルフード」となるためには、もう一つ、決定的な戦略が必要でした。
それが「どこで売るか」、つまり「立地戦略」です。そして、その選択こそが、最大の発明だったのです。
第6章:ショッピングセンター戦略という大発明。「女性」と「子供」を狙え!
1960年代、日本は高度経済成長期に突入します。この時代に、日本の流通業界に革命が起こります。
それが「大型スーパーマーケット」の台頭です。名古屋を拠点とする「ユニー」(現在のアピタ・ピアゴ)や「ジャスコ」(現在のイオン)が次々と誕生しました。
創業者の菅木周一氏は、この時代の変化を誰よりも早く見抜いていました。
「これからは、家族みんなで車に乗って、大型スーパーに買い物に来る時代になる」
「買い物のついでに、気軽に食事ができる場所が求められるはずだ」
そして1969年(昭和44年)、彼は当時としては画期的な決断を下します。大型ショッピングセンター(SC)内に、「フードコート型」のスガキヤを出店したのです。
この決断は、控えめに言っても「先進的で天才的」でした。
当時のラーメン屋といえば、駅前や繁華街の路面店が当たり前。そんな時代に、清潔で明るいSCのフードコートに出店する。これは、スガキヤのビジネスモデルと完璧に合致していたのです。
1. ターゲット顧客との完全一致:
スガキヤのターゲットは「女性」と「子供」。SCの主要な顧客層と見事に一致します。甘味メニューも充実させていたため、「休憩場所」としての需要も取り込めました。
2. コスト構造の最適化:
路面店に比べ、フードコートは初期投資(客席やトイレは共用)や家賃を抑えられます。また、セルフサービス方式のため、人件費も削減できる。これは、低価格戦略を維持する上で不可欠でした。
3. ドミナント展開の加速:
ユニーやジャスコといった流通大手と提携することで、彼らの新規出店に合わせて、スガキヤも自動的に店舗網を拡大できました(いわゆるコバンザメ商法)。これにより、東海地方において圧倒的な店舗密度(ドミナント)を築き上げることに成功したのです。
そして、これが最も重要ですが、「子供の舌を掴んだ」ことです。
想像してみてください。マイカーを手に入れ、少しオシャレをして家族で出かける週末。子供たちは屋上遊園地で遊び、お母さんは買い物をする。
そしてお昼になったら、みんなでフードコートに集まり、スガキヤのラーメンとソフトクリームを食べる。
これこそが、高度経済成長期における「幸せな家族の風景」そのものでした。人間の味覚は、子供の頃に慣れ親しんだ味を一生忘れません。
スガキヤは、単なるラーメン屋ではなく、この「幸せな記憶」の一部として、人々の心に深く刻まれていったのです。子供が大人になり、また自分の子供を連れてくる。このサイクルこそが、「ソウルフード」となり得た最大の要因です。
第7章:「ラーメンフォーク」に隠された、コスト削減とデザイン哲学
スガキヤを語る上で、絶対に外せないアイテムがあります。そう、あのスプーンとフォークが一体化した、奇妙な形をした食器。「ラーメンフォーク」です。
これが誕生したのは1978年(昭和53年)。開発を主導したのは、創業者、菅木周一氏でした。
彼が開発を思い立ったきっかけは、シンプルでした。毎日大量に消費される割り箸を見て、「これは資源の無駄遣いではないか」と心を痛めたのです。
環境保護と経費削減。この二つの課題を解決するために、彼は「割り箸を使わずに、ラーメンの麺とスープを一緒に楽しめる食器」の開発に着手しました。
このラーメンフォークは、単なるエコなアイデア商品ではありません。ビジネス的にも、多くのメリットをもたらしました。
コスト削減: 割り箸の購入コスト、そしてゴミの処理コストを削減できます。
オペレーションの効率化: 洗浄や提供の手間が減ります。
ブランドアイデンティティの強化: この独特な食器は、「スガキヤならでは」の体験となり、ブランドの象徴となりました。
(※現在のモデルは、後に工業デザイナーの高橋正実氏とノリタケによってリデザインされ、ニューヨーク近代美術館(MoMA)のミュージアムショップでも販売されるなど、デザイン的にも高く評価されています)。
私がこのエピソードで感動するのは、創業者の視点です。ビジネスは、利益の追求だけでなく、その根底に、社会や顧客への「想い」があるかどうか。
それが、その企業が長く愛されるかどうかの分かれ道になるのではないでしょうか。
さて、ここまで、スガキヤがなぜ名古屋で絶対的な地位を築いたのか、その歴史と戦略を見てきました。革新的な味、時代の流れを読んだ立地戦略、そして徹底した効率化。見事ですよね。
しかし、となると、当然の疑問が湧いてきます。
「それほどまでに強力なビジネスモデルなら、なぜ全国制覇を目指さなかったのか?」
「なぜ、私の住む富山や、他の地域から撤退してしまったのか?」
次のQ&Aでは、スガキヤの「光」だけでなく「影」の部分、地域戦略と撤退の裏側に隠された、ビジネスの厳しい現実について、容赦なく掘り下げていきたいと思います。
Q3:なぜ全国制覇を目指さないの?(あるいは、なぜ地方から撤退した?)
非常に鋭い質問です。あれほど完成されたビジネスモデルを持ちながら、なぜスガキヤは東海地方中心の「ローカルチェーン」に留まっているのか。そして、なぜ一度は進出した地域から撤退してしまったのか。
そこには、飲食ビジネス、そして製造業ならではの、複雑な事情と「見えない壁」が存在するのです。
第8章:ドミナント戦略と「見えない壁」。東海集中主義の合理性
スガキヤの店舗展開は、東海地方への極端な集中が特徴です。これは、「ドミナント戦略」(特定地域への集中出店)に基づいています。
この戦略は、物流効率の最大化、地域での圧倒的な知名度獲得といったメリットをもたらします。しかし、スガキヤの場合、このドミナント戦略が、彼らのビジネスモデルと不可分に結びついている、もっと切実な理由があります。
それが、「サプライチェーンの壁」です。
「味の生命線」を守るための集中主義
スガキヤの命である「和風とんこつスープ」。この味を全店舗で均一に、かつ低コストで提供するためには、効率的な生産・物流体制が不可欠です。
彼らは、愛知県の自社工場(セントラルキッチン)でスープや麺を集中的に生産し、各店舗に配送しています。
これは、品質の安定とコスト削減に大きく貢献していますが、同時に「距離の制約」も生み出します。
工場から遠く離れた地域に出店しようとすると、どうなるか。
物流コストの増大: 配送距離が長くなれば、当然コストがかさみます。スガキヤのような低価格チェーンにとって、このコスト増は致命的です。
品質管理の難しさ: 特に生麺やスープは鮮度が重要です。長距離輸送は品質劣化のリスクを高めます。
新たな生産拠点の必要性: 全国展開を目指すなら、関東や九州などにも新たな工場を作る必要がありますが、それには莫大な設備投資とリスクが伴います。
つまり、スガキヤが「安くて美味しい」を実現できているのは、東海地方に最適化された、この効率的なサプライチェーンがあるからこそなのです。
「味の壁」というパラドックス
さらに、皮肉なことに、彼らの強みである「独特の味」もまた、全国展開の壁となりました。
あの和風とんこつは、東海地方の人々にとっては「魂に刻まれた味」ですが、他の地域では「独特すぎる」「魚臭い」と感じる人も少なくありません。
ソウルフードは、その地域性が強ければ強いほど、他の地域では受け入れられにくいというパラドックスを抱えているのです。
彼らが東海地方に集中しているのは、決して「野心がない」からではなく、ビジネスモデルとして「最も合理的」な選択だったと言えるのです。
ビジネスって、なんでもかんでも拡大すればいいってもんじゃない。自分の強みが最大限に活かせる範囲、つまり「射程距離」を見極めることが重要なんです。
しかし、実はスガキヤも、過去にはこの「射程距離」を超えて、全国展開を目指した時期がありました。そして、その挑戦は、苦い結果に終わっています。
第9章:関東、そして北陸からの撤退劇。何が起きていたのか?
スガキヤは、1980年代から90年代にかけて、関東、関西、そして私がいる北陸地方(富山、石川、福井)など、全国に店舗網を広げていきました。ピーク時には400店舗を超えていました。
しかし、その後の展開は、決して順風満帆ではありませんでした。
ケース1:関東地方の壁
特に関東地方は、競争が極めて激しく、味の嗜好も異なります。ブランド認知度も低く、「数あるフードコートの店の一つ」として埋没してしまいました。結果として、採算が合わず、段階的に撤退を余儀なくされました。
ケース2:富山(北陸地方)からの完全撤退
私の地元、北陸のケースを見てみましょう。富山県内にも、かつてはショッピングモールを中心に複数の店舗がありましたが、撤退。
そして2020年には、石川県と福井県からも完全に撤退し、北陸からスガキヤは姿を消しました。
これは、非常に示唆的な出来事です。
サプライチェーンの非効率性: やはり、物流コストの問題は大きかった。北陸は中京圏から近いようで遠く、特に冬場の配送は不安定です。
出店先の栄枯盛衰: 最大の要因は、出店先である大型スーパー(特にアピタなど)自体の集客力が低下したことです。地方都市では、イオンモールのような、より新しく、より大規模な郊外型ショッピングモールとの競争が激化しています。母体となるスーパーが衰退すれば、そこに入居しているフードコートも共倒れになってしまう。これは、ショッピングセンター戦略の宿命とも言えます。
強力なライバルの存在: 北陸には、「8番らーめん」という強力なローカルチェーンが存在します。彼らはショッピングモールではなくロードサイド中心で、食事需要をがっちり掴んでいました。
富山県内でも非常に強いローカルチェーンで8番に勝つには死ぬ気で努力しても、おそらく勝てないレベルで地元民に根付いています。
とはいえ私も、富山からスガキヤが消えた時は、少し寂しい気持ちになりました。子供の頃の思い出の場所がなくなるというのは、やはり切ないものです。
しかし、ビジネスは感情だけでは続けられません。
特に、スガキヤのように「効率性」を追求するビジネスモデルにおいては、不採算エリアからの撤退は、生き残るために不可欠な決断なのです。
では、この「撤退」という決断を、経営学的にどう評価すべきでしょうか。
第10章:もし私がスガキヤの社長だったら?「撤退」という名の英断(サンクコストの罠)
もし私がスガキヤの経営陣だったら、北陸からの撤退を決断できただろうか。
ビジネスにおいて、「攻める」ことよりも「退く」ことの方が、はるかに難しい決断です。なぜなら、そこには「プライド」や「過去への執着」といった、人間の感情が絡んでくるからです。
「せっかく苦労して開拓した市場なのに、今更撤退できるか!」
「もう少し頑張れば、きっと状況は好転するはずだ」
こうした感情に流されて、撤退の判断を先延ばしにしてしまう経営者は少なくありません。
ここで重要になるのが、「サンクコスト(埋没費用)」という概念です。
サンクコストとは、「すでに投じてしまい、どうやっても回収できない費用」のことです。例えば、新規出店にかかった内装費などがこれに当たります。
合理的な経営判断を行うためには、このサンクコストは完全に無視しなければなりません。
重要なのは、「過去にいくら使ったか」ではなく、「これからこの事業を続けることで、将来的に利益を生み出せるか」という一点だけです。
私も、過去にこのサンクコストの罠に囚われて、大失敗した経験があります。
数年前、東南アジアで新しい輸入ビジネスを立ち上げようとした時のことです。かなりの時間とお金を投じましたが、事業を開始してみると、想定外の規制強化やトラブルが続出しました。
「このままでは、絶対にうまくいかない」と、心の底では分かっていました。
それでも、「ここまで投資したんだから、なんとか元を取らなければ」という思いが強すぎて、撤退の判断ができなかったのは事実です。
結果として、さらに時間と経費を費やし、最終的には大きな損失を抱えて撤退することになりました。あの時、もっと早く「損切り」できていれば…。あの時の苦い経験は、私にとって大きな教訓です。
スガキヤの経営陣は、このサンクコストの罠に陥ることなく、非常に冷静な判断を下したと言えます。結果論にはなりますが、
特に、2019年以降のコロナ禍においては、彼らの「撤退力」が真価を発揮しました。彼らは不採算店舗の大量閉店(数年間で100店舗近く)を断行しました。
これは、短期的には痛みを伴いますが、赤字を垂れ流す店舗を温存するよりも、固定費を削減し、財務体質を強化することの方が、長期的な生存のためには不可欠です。
そして、浮いたリソース(人員、資金)を、強みを持つ中京圏や、本業である食品製造事業に集中させる。まさに、経営戦略の教科書通りの「選択と集中」を実践したのです。
「撤退」は「失敗」ではありません。それは、未来に向けて「再出発」するための、勇気ある戦略的な決断です。
さて、こうして「選択と集中」を進め、経営基盤を固め直したスガキヤが、次なる一手として打ち出したのが、今回の「大幅な賃上げ」です。これはいったい、何を意味しているのでしょうか。最後のQ&Aで、その深層を読み解いていきましょう。
Q4:初任給5万円アップの衝撃!スガキヤの未来はどこにある?
いよいよ最後の問いです。今回のスガキコシステムズによる大幅な賃上げと待遇改善。これは、単なる「景気の良い話」ではありません。むしろ、彼らが直面している深刻な危機感と、未来に向けた強い意志の表れだと私は見ています。
第11章:人手不足時代の生存競争。賃上げの裏にある切実な危機感
まず、大前提として理解しておくべきは、現在の日本、特に飲食業界が直面している、「深刻な人手不足」という現実です。
少子高齢化による生産年齢人口の減少に加え、コロナ禍を経て、多くの人材が飲食業界から流出しました。企業間の人材獲得競争は、かつてないほど激化しています。
特に、スガキヤのようなチェーン店の店舗事業は、構造的に厳しい状況に置かれています。
労働集約型の限界: 店舗運営は依然として多くの人手を必要とします。
賃金水準とイメージ: 客単価が低いため利益率も低く、それが賃金水準の低さや「厳しい」労働環境というイメージに繋がっていました。若者は、賃金だけでなく、働きがいや休日数をシビアに見ています。
こうした状況下で、人材を確保できなければどうなるか。人手が足りず、店舗を維持できずに閉店に追い込まれてしまう。「人手不足倒産」です。
今回の「初任給28万円」と「年間休日116日」という決断は、こうした危機感の裏返しです。
「このままでは、将来を担う優秀な人材が確保できない。事業の存続自体が危うくなる」
彼らは、目先のコスト増というリスクを取ってでも、将来への投資、つまり「人材への投資」を優先したのです。
なぜ「優秀な人材」が必要なのか?
重要なのは、彼らが求めているのが単なる「労働力」ではない、ということです。将来的に、店長、エリアマネージャー、そして本社で経営戦略を担う「幹部候補生」として活躍できる、優秀な人材を求めているのです。
店舗ビジネスの高度化: 今後は、DX(デジタルトランスフォーメーション)による効率化、データ分析に基づいたマーケティング、そして顧客体験の向上が不可欠です。これらを推進できる、高度なマネジメント能力を持った人材が求められています。
グループシナジーの創出: 店舗運営と食品製造の両方のビジネスを理解し、グループ全体の成長を牽引するリーダーが必要です。
今回のスガキヤの決断は、他の飲食チェーンや、地方の中小企業にとっても、大きなインパクトを与えるはずです。「あのスガキヤですら、ここまで待遇を改善した。うちも何か手を打たなければ…」と。
企業は、従業員を単なる「コスト」として見るのではなく、価値を生み出す「資本」として捉え、投資していかなければ生き残れない。そんな時代になったということですね。
さて、人材への投資を強化したスガキヤですが、彼らはこれからどのような成長戦略を描いているのでしょうか。
第12章:未来予測シナリオ:スガキヤはどこへ行く?(地域深化と海外展開)
スガキコグループは、「店舗」と「製造」の二つのエンジンと、「中京圏」という強固な地盤を持っています。そして今、そこに「人材」という新たな燃料を注ぎ込もうとしています。
あくまで私の個人的な妄想ですが、今後のスガキヤの進化について、3つの方向性を考えてみたいと思います。
方向性1:中京圏ドミナンスの「深化」と「洗練」
最も現実的なのは、本拠地である中京圏でのドミナントをさらに強化することです。規模の拡大を追うのではなく、「質」の向上と「深さ」を追求する。
店舗体験の向上: 従来のフードコート型だけでなく、より快適で洗練されたデザインの店舗や、地域住民の憩いの場となるような新業態(例えば、高級路線の「寿がきや」の強化など)を展開する。
ブランドの再定義: 「安さ」だけではない、品質やサービス、そして「ソウルフード」としてのストーリー性を強調したリブランディングを進める。
優秀な人材が、こうした店舗の高度化を推進することで、中京圏における地位を盤石なものにしていくでしょう。
方向性2:食品製造事業の「全国ブランド化」と「海外展開」
グループの収益柱である食品製造事業は、さらなる成長を目指すでしょう。
ヒット商品の開発強化: 店舗事業で得た知見と、獲得した優秀な人材を投入し、「和風とんこつ」に続く、新たなヒット商品を生み出す。
海外市場への展開: 国内市場が縮小する中、海外市場への展開は重要なテーマです。日本のラーメン文化が浸透しているアジア市場を中心に、まずは即席麺で市場を開拓し、将来的には店舗展開も視野に入れる可能性があります。実際、過去には台湾への進出経験もあります。
方向性3:DXによる「次世代型フードサービス」への変貌
そして、最も野心的な方向性が、テクノロジーの力を最大限に活用し、ビジネスモデルを変革することです。
徹底したDXと自動化: AIやロボティクスを駆使した、超効率的な店舗運営モデル(例えば、自動化されたラーメン店など)を開発する。これにより、人件費や物流コストの壁を突破し、再び他地域への展開を目指す可能性もゼロではありません。
彼らの強みは、やはり「店舗」と「製造」の両輪を持っていることです。この二つが連携することで、他の企業には真似できない独自の価値を生み出すことができる。スガキヤの逆襲は、これから始まるのかもしれません。
さて、ここまで、スガキヤという企業の物語を深く掘り下げてきました。しかし、これを単なる「へぇ、そうなんだ」で終わらせてしまっては、もったいない。
この物語の中には、私たち自身のキャリアや生き方に役立つ、普遍的な教訓が詰まっています。
第13章:この話を私たちの毎日に置き換えると?(私たち自身の物語として捉える章)
ここからは、少し肩の力を抜いて、このスガキヤの物語を、私たち自身の毎日にどう活かせるか、一緒に考えていきましょう。
教訓1:「二つの顔」を持つことの強さ。キャリアのポートフォリオ
スガキヤの強みは、「店舗事業」と「食品製造事業」という、二つの異なる収益の柱を持っていることでした。一方が不調でも、もう一方が支える。
これは、私たち個人のキャリア戦略にも応用できます。一つの仕事、一つのスキルだけに依存するリスクは、この変化の激しい時代において、あまりにも大きすぎます。
例えば、皆さんの「本業」と並行して、何か別の「顔」を持つことはできないでしょうか。
副業(複業): 収入源を増やすだけでなく、新しいスキルや人脈を得る機会になります。
専門性の掛け合わせ: 例えば、「営業」のスキルと「プログラミング」のスキルを掛け合わせることで、独自のポジションを築くことができます。
これらの「もう一つの顔」が、新しい情報や刺激をもたらし、本業にも良い影響を与えるかもしれません。皆さんのキャリアの「ポートフォリオ(組み合わせ)」は、最適でしょうか?
教訓2:「撤退力」こそが、未来を切り開く力
スガキヤの歴史は、挑戦と同時に「撤退」の歴史でもありました。彼らは、状況の変化に応じて、時には過去の投資(サンクコスト)を無視してでも、勇気を持って撤退を決断してきました(第10章参照)
私たちも、この「撤退力」を見習う必要があります。
仕事、人間関係、あるいは長年続けてきた習慣…。「これまで続けてきたから」という理由だけで、惰性で続けていることはないでしょうか。
もし、それが未来の可能性を狭めていると感じるなら、勇気を持って「やめる」決断をすることも重要です。
「やめる」ことは「逃げ」ではありません。
限られた時間とエネルギーを、本当に重要なことに集中させるための、戦略的な決断です。
教訓3:時代の変化を読み、「居場所」を選ぶ力
スガキヤが成功した最大の要因は、時代の変化(大型スーパーの台頭)を読み、自分たちの強みが最も活きる「場所」(フードコート)を選び取ったことでした(第6章参照)。
私たちも、自分のスキルや経験が、どの業界、どの会社で最も輝くのかを、常に見極める必要があります。
今いる場所が、自分にとって最適とは限りません。常に市場の動向にアンテナを張り、自分の「市場価値」を客観的に把握すること。
そして、必要であれば、新しい「居場所」へと移動する柔軟性を持つこと。それが、この不確実な時代を生き抜くためには不可欠です。
スガキヤの物語は、私たちに「変化への適応力」「多角的な視点」「そして時には立ち止まる勇気」の重要性を教えてくれます。
さて、最後の章では、このスガキヤの事例を踏まえて、私たちが未来のために資産をどう育てていくべきか、投資家としての視点から考えてみたいと思います。
第14章:もし私が、未来のために資産を育てるなら(未来のための羅針盤としての投資観)
ここまで、スガキヤという企業の独自の戦略と、時代の変化への適応について見てきました。
では、私が、この事例から未来の資産形成を考えるなら、どのような視点を持つでしょうか。(※スガキヤグループは非上場ですが、そのビジネスモデルから学べることは多くあります)。
視点1:「独自の強み(堀)」を持つビジネスを探す
投資の世界には、「経済的な堀(Economic Moat)」という言葉があります。競合他社から自社の利益を守る、独自の強みや参入障壁のことです。
スガキヤの堀は、明確です。
独自の味(和風とんこつスープ)と地域での圧倒的なブランド力
製造から販売までを一貫して行う垂直統合モデル(SPA)
徹底した効率化によるコスト競争力
これらの堀があるからこそ、彼らは半世紀以上にわたって生き残り、安定した収益を上げ続けることができています。
私たちが投資先を選ぶ際にも、この「堀」を持っているかどうかを見極めることが極めて重要ではないでしょうか?
「その企業は、他社にはない独自の強みを持っているか?」「その強みは、簡単に真似されないか?」
一時的なブームに乗っているだけの企業ではなく、長期的に競争優位性を維持できる「本質的な強さ」を持つ企業に投資すること。それが、資産を守り育てるための鍵となります。
視点2:「製造小売業(SPA)」モデルの強さに注目する
スガキヤの事例は、製造小売業(SPA)モデルの強さを改めて示してくれました。
自社で企画・製造から販売までを一貫して行うことで、コストを抑え、品質を管理し、顧客のニーズを素早く商品に反映させることができる。
これは、他の業界においても非常に強力なビジネスモデルです。ユニクロやニトリはもちろん、例えば、独自の技術を持つ機械メーカーや、サプライチェーンを掌握している企業なども、このモデルに近い構造を持っています。
投資先を探す際には、単なる小売業や、単なる製造業だけでなく、その両方の強みを兼ね備えた「SPA」的なビジネスモデルを持つ企業に注目してみる価値は大きいでしょう。
視点3:「人材への投資」を惜しまない企業を選ぶ
今回のスガキヤの「大幅な賃上げ」は、長期投資家にとって非常に重要なシグナルです。
短期的な利益だけを追求し、人件費を削ろうとする企業は、長期的には衰退していきます。なぜなら、ビジネスを動かすのは「人」だからです。
スガキヤのように、人材を「コスト」ではなく「未来への投資」として捉え、積極的に投資する企業は、長期的には強い競争力を持ち、成長していく可能性が高いと言えます。
投資先を選ぶ際には、その企業が「人」を大切にしているか、という視点も持つべきです。
もちろん、これらの視点を持っていたからといって、必ず投資が成功するわけではありません。
しかし、一つの企業の歴史や戦略を深く掘り下げることで、ビジネスの本質を見抜く力が養われます。その力こそが、情報に惑わされず、自分自身の頭で考え、納得のいく投資判断を下すための「羅針盤」となるはずです。
エピローグ:一杯のラーメンから見える、時代の景色
さて、皆さん、長きにわたる「スガキヤ」を巡る旅、いかがでしたでしょうか。
たった一つのニュース、「初任給5万円アップ」という情報から、私たちは戦後の闇市にまで遡り、高度経済成長期の熱狂、全国展開の挫折、そして現代における生き残りをかけた戦略まで、壮大な物語を見てきました。
一杯のラーメンの裏側には、これほどまでに多くの知恵と汗、そして時代の変化に適応しようとする、企業の絶え間ない努力が隠されていたのです。
スガキヤが名古屋のソウルフードとなり得たのは、決して偶然ではありません。
自分たちの核となる強み(スープ)を見失わず、しかし、その形や売り方(甘味からラーメンへ、路面店からフードコートへ)は時代の要請に合わせて柔軟に変えていく。
そして、常に「お客様が何を求めているか」という原点に立ち返ること。
私たちがこの物語から学ぶべきは、過去の栄光にすがるのではなく、常に変化を受け入れ、適応し続けることの重要性です。
北陸からスガキヤの店舗が消えてしまったのは寂しいですが、彼らのビジネス戦略と、その根底にある哲学は、これからも私たちに多くの学びを与えてくれるはずです。
私たちも、スガキヤのように、自分たちの強みを見極め、変化を楽しみながら、しなやかに、そしてしたたかに、この時代を生き抜いていきましょうじゃありませんか。
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
皆さんの明日が、今日よりも少しだけ示唆に富んだ、味わい深いものになることを願って。
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【著作者紹介】
本記事の著作者「ツイ鳥」こと「コクム=ジョージ」は日常的には、北陸にて、各国の業者とやりとりしながら商品輸入や商品企画を行ってたりする貿易商です。
成り立ちなど、プロフィール詳細は以下のページに。
またビジネスコピーライターとして、商品文章や製品説明などの制作に携わっていますが、ここでご紹介している事例紹介・解説は、ツイ鳥独自の視点―最新テクノロジーやAIに関する知見をもとに、論文検索や研究レポートの調査、草稿作成、そしてアイデア出しを経て構成されたものであり、記事内はAI生成されたコンテンツで作られた箇所も多いため、従来のライター業務ではなく、別の著作者としての活動です。
なお、ツイ鳥はX(旧Twitter、https://x.com/596)でも定期的に最新の論文や研究成果・事例紹介を紹介しており、読者の皆様に新たな知見やインスピレーションを自由気ままに楽しんでもらっています。
当noteには、AIと人間の協働による多彩なコンテンツが多数掲載されています。次世代の新しい読み物として、ぜひ他の記事もご覧いただき、フォローして最新情報をお楽しみください。
※【当記事のコンテンツ生成について】
当記事も著作者紹介でも書かれている通り、ChatGPT(OpenAI)、Claude(Anthropic)、および Gemini(Google)などの先進的な AI ツールを活用、論文検索・研究レポートの調査、草稿製作やアイデア出しを行っています。各サービスの利用規約に基づき、生成テキストを初稿として利用しているものです。
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