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【前編】イグノーベル賞の先行研究ってどんなの?~ボディペイントが虫よけに!?~

「しらべちゃうアニマル」のくまちゃんです。

ぬいぐるみが3体並んでいます。左からキツネ、くま、ヤギ
しらべちゃうアニマルのくまちゃん(真ん中)

「しらべちゃうアニマル」と「くまちゃん」の関係は、
「すみっコぐらし」と「しろくま」の関係みたいなものだと思ってください。


パンダちゃん「今年もイグノーベル賞を日本人が受賞か~」
パンダちゃん「全くのゼロから、こんなおもしろいアイデアをひらめくなんてすごいな~」
くまちゃん「パンダちゃん、それは違うんだ。先行研究というのがあります」
パンダちゃん「先行研究?」

くまちゃんTips:先行研究とは

先行研究とは、近いテーマで他の人が先に発表した研究のことだよ。
研究というのは、他の人の過去の研究を踏まえた上で、「他の誰もやっていない新しいこと」を発表するものなんだ。

論文は必ず、冒頭で関連する他の人の論文を紹介することになっているよ。過去のことを調べないと、何が新しいのかもわからないからね。
研究者は過去の論文を調べて、「引用」することで「ちゃんと分野の知識を調べている」「二番煎じになっていない」ということを証明するというわけ。

先行研究の仕組みを図にしたもの。過去の研究を引用して、他の誰もやっていないことをプラスする

くまちゃん「もちろん受賞研究が独創的で、すばらしいものであることには変わりありません」
パンダちゃん「なるほどね~先人の積み重ねが有ってのことなんだね。教えてくれてありがとう」
くまちゃん「え…!? そんなことより君…」
くまちゃん「すっごくおしゃれで素敵な帽子だね!!」

ところでくまちゃん疑問を持ちました

イグノーベル賞を受賞した研究の先行研究ってどんなの?

そこで、今回は「イグノーベル賞を受賞した研究の先行研究ってどんなの?」という問題について、調査してみました!
くまちゃんにはウケたネタを擦り続ける覚悟、あります。


今回、調査するのは2025年の受賞研究のうちこちらです。

ウシにシマウマ模様を書くことでハエよけになる!?

トロフィーの画像に文字。2025年生物学賞受賞「ウシにシマウマのような縞模様を描くことで吸血性のハエに刺されるのを避けられるかを検証した論文」

2025年生物学賞受賞
Cows painted with zebra-like striping can avoid biting fly attack
(ウシにシマウマのような縞模様を描くことで吸血性のハエに刺されるのを避けられるかを検証した論文)

今回も、論文を検索したり論文の引用関係を調べたりできる『Web of Science』という論文データベースを使って、この研究が引用している論文について調査していくよ。

受賞論文を読んでみよう

この研究は、黒い牛にシマウマの縞模様を描くことで、ハエからの攻撃を防ぐことができるのではないかと仮説を立て、それを実証したんだって。

どうやって調べたの?

実験で身体に、
「①白色の縞模様を描いた牛」
「②描いていない普通の牛」
「③黒色の縞模様を描いた牛」
を比較した結果、①の縞模様の牛についたハエの数は有意に少なかった
畜産において農薬を使用せずにハエから家畜を守る手段とできる可能性があるそう。
シマウマのような縞模様を「描く」ことが、生きた動物への吸血ハエの攻撃に及ぼす影響を評価した初めての研究なんだって!

実験について図にしたもの、3種類の牛を比較検証した。

この論文が引用している文献は50本。それらの文献から直接・間接的に影響を受けていると考えていいでしょう。その中から興味深いものを紹介していきます。

紹介する論文は、
・イグノーベル賞の先行研究にイグノーベル賞!?
・シマウマ模様のコートをウマに着せる実験!?
・人間を対象としたボディペインティングの研究

の3本です。


なんと先行研究に2016年のイグノーベル賞「物理学賞」を受賞した研究が含まれていたよ。

論文①『イグノーベル賞の先行研究にイグノーベル賞!?』

An unexpected advantage of whiteness in horses: the most horsefly-proof horse has a depolarizing white coat
馬の白さの意外な利点:最もアブに強い馬は偏光効果のある白い毛皮を持っている)

ハンガリーの研究チームによる2010年の研究で、「白い馬」が「黒い馬」と比較してアブを引き寄せにくいことを示したんだって。水平偏光が原因で、ハエにとっては黒や茶の馬の方が魅力的に見えるとのこと。

実験について図にしたもの。複数の手法で白と黒を比較した。

この論文はハエが忌避する模様の先行研究の一つとして示されているよ。


他の先行研究も見て行こう

論文②『シマウマ模様のコートをウマに着せる実験!?』

Benefits of zebra stripes: Behaviour of tabanid flies around zebras and horses
(シマウマの縞模様の利点:シマウマと馬の周りを飛ぶアブの行動)

シマウマの縞模様が吸血バエを防ぐといわれていたが、そのメカニズムはわかっていなかった。この研究は生きたシマウマの近くで吸血バエを詳細に観察した初めての研究なんだ。さらに異なる色のウマの周囲における吸血バエの行動を観察・比較している。

どうやって調べたの?

具体的な実験方法はこう。
普通の馬に以下の3 種類の布製コートをランダムな順序で装着する、
1着目「濃い黒色」
2着目「明るい白」
3着目「白黒のシマウマ模様」。
30分の間ビデオを回し、近くのハエの動きを観察する。

実験について図にしたもの、3種類コートを着せたの馬を比較検証した。

結論としては、シマウマの縞模様は遠くからハエが近づくのを阻止する効果はみられなかった。しかし、近くに来たハエの着地を阻止する効果が見られたそう。

要するにハエから見て、遠くから見るとシマウマも普通の馬もあんまり変わらないんだけど、いざ近づくと縞模様により減速がうまくできなくて、着地に失敗してしまう効果があるってこと!


さらに他の先行研究も見ていこう。

論文③『人間を対象としたボディペインティングの研究』

Striped bodypainting protects against horseflies
縞模様のボディペイントはアブから身を守る

縞模様のアブ阻止効果を、人間を対象に研究した論文です。
多くの先住民族において、ボディペインティングの文化が存在している。それらの人々が居住する地域では、吸血性のアブが生息していることが多い。

そこでこの研究は、ダークブラウンの肌に白い模様を描くことで、アブを防ぐことができるのではないかと仮説を立てた。

どうやって調べたの?

検証実験では以下の、3つの人体模型(マネキンみたいなやつ)が使用された。
「①白」
「②茶色」
「③茶色に白い縞模様を描いたもの」。
模型にはアフリカとオーストラリアの部族のボディペインティングをマネしたものを描いたとのことです。

実験について図にしたもの、3種類のマネキンを比較検証した。

結果は言わずもがな。ボディペイントの模型のアブ被害が有意に少なかったそう。四足歩行の動物ではなく、人間でも縞模様でアブを防止することができる、ということの実証にはじめて成功した研究ってことだね!!
虫が多い水辺とかに遊びに行くときはボーダーのロングTシャツを着ていくといいかも…

この論文は、縞模様がアブの着地を防ぐ仕組みが、輝度変調や偏光によるものと示した研究の1つとして引用されているよ。


引用の関係を図にしたもの。3つの先行研究から受賞研究に矢印が向いている

先行研究を見ることで、今回の受賞論文が決して「突飛で奇抜なもの」ではなく、むしろ堅実に先行研究を調査し、リスペクトした上で創造性を発揮しているとわかったね。
すごい。なんだか教育的な結論に着地してしまったぞ。


さて、ここまでイグノーベル賞の先行研究を見てきたけど、どうだったかな?
突飛なアイデアが、突然出てきたわけではなく、先行研究をちゃんと調査し、文脈を踏まえて新しい価値を示している、ということがわかったね。

そして、今回の受賞研究も、今後新しい研究にとっての先行研究となって、知的探究の道は続いていくんだね。

実は、この記事は続きます。後編では、イグノーベル賞で発見されたレシピを実際に作ってみたりするよ!
後編はこちら!↓


宇宙空間を漂うぬいぐるみ3体。連綿と連なる知の財産

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