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お嬢こと千切豹馬と恋の駆け引きのお話/Novel by こしょう

お嬢こと千切豹馬と恋の駆け引きのお話

3,064 character(s)6 mins

お嬢が大好きだけれども告白する勇気のない女の子のお話。

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「お嬢〜!」
「…だからお嬢じゃないって」
「でもみんなからはお嬢って呼ばれてるでしょう?」
「それは不服だけれども」

見かけた紅い長髪に後ろから声をかけると、あからさまに不機嫌そうな表情でこちらに振り返ると流れるように髪の毛が舞う。キューティクルで守られている艶めかしい髪は本当に陽の下に居るのかと思うほど綺麗だ。
大きな瞳に髪色と同じ瞳、すっと通った鼻筋の事もあり、さながら見た目はお人形さんのようで不機嫌な表情でもやはり美しいと惚れ惚れしてしまう。

「で、用は何」
「お嬢さっき告白されてたけど返事はどうしたの?って聞きに来た」
「デリカシーというものは持ってないのか?」

デリカシーなんてものはもうとうの昔に置いてきた。そうでもしないとお嬢が誰か知らない女の子の彼氏になってしまう。だから私はなるべくお嬢の近くに居ることにして他の女の子が近づけないようにしてきた。私からお嬢に話しかければお話してくれるし、逆もまた然りでお嬢が私に話しかけてくれる事もある。
自分からお嬢に告白する勇気すらないからこそ、このなんとも言えない丁度いい距離の"友達"関係をずるずると引きずっている。
もし告白して振られたらこの関係がなくなってしまうのではないかと不安になり自分の想いを告げる事は出来ない。

「えへへ、それは置いといて」
「置いとくな」
「OKしたの?」
「………うん、した」
「……え、」
「だからOKしたよって」

お嬢の口から出る言葉は「断ったよ」という言葉を期待していたのに、出てきた言葉は「OKした」という絶望のワード。
…え、お嬢はもう誰かの彼氏…?もうお嬢の横には居れない…?思考が、止まる。

「どうした?大丈夫か?」

お嬢の声が聞こえて、ハッと意識を目の前のお嬢に戻す。動きも口も止まった私を不審に思ったようで俯いていた私の顔を覗き込むように私を見ていた。
これ以上お嬢に何かを疑われてはいけない。
話せ、止まるな。けれど口が渇いてしまい声が出せない。唾でなんとか渇きを誤魔化し、喉奥に送り込んだ。

「っ、ぁ…だいじょう、ぶだよ。そっか、そうなんだね、おめでと」

なんとか捻り出した言葉はなんとも淡白でいつもの私の言葉ではなかった。
もっといい言葉があったはず、もっと声を元気に張れたはずなのにこれが今の私の精一杯で思った以上に重たい一撃をもらってしまっていたようだ。
胸が痛い、心臓がぎゅうと握られているかのように。息が吐けない、吸えない苦しい。
涙がじわじわと奥から溢れ出てきてしまいお嬢に見られまいと顔を逸らそうとするも、それはお嬢の手によって阻まれお嬢から目線を逸らすことを許されなかった。

「お、じょう」
「なぁ、なんで泣いてるの」
「っこれは、目にゴミが、」
「本当に?」

顔を逸らさないように私の両頬をお嬢の大きな手が包む。隠し通せなかった涙はお嬢の手を濡らしていくもお嬢は気にせずただただ私の目を見つめる。お嬢の瞳には今、私しか映っていないのにこの瞳に映るのは私じゃなくほかの女の子になる。
それがたまらなく悔しい。その子が妬ましい。
けれどそれを私が口に出す資格はない。その子はちゃんと自分の想いを言葉にしてお嬢に告げた。
私はそれすらしてこなかった。こんなにも近くに居たのにも関わらず、お嬢に断られることが怖くて何もしてこなかった。

「その涙はどういう理由?いいよ、言ってみなよ」

言えるわけない、言えないよ。
仮に今言ったところでもう手遅れなんだよ、お嬢。でも諦めがつくのなら、この想いを言葉にしていいのなら手遅れでもいい。後悔のないようにしたい。

「、お嬢の事が…好き、だから…っ」

お嬢の事、好きなの。
ちゃんと1人の男性として大好きなの。
その甘く響く声も、この鍛え抜かれた身体も全部が好き。
この恋は叶わなかったけど、お嬢の事を好きになれた事は本当によかった。とても楽しい日々を送れたのだから。
揺らぐ視界でお嬢の顔は見えないけれど、お嬢の事…千切豹馬くんの事が好きでした。
堰を切ったように涙が止まらない。

「ようやく言ったか。遅いんだよ本当にお前は」
「………え?んっ、」
「泣くぐらいなら早く言えばいいのに」

親指で目元から涙を拭われ視界がクリアになっていき、その先に見えたお嬢の表情は誰が見ても心が奪われてしまうように優しく微笑んでいた。
どういう、事?遅い?何が?…告白が遅いってこと?
それよりなんでお嬢は彼女が居るのに私に優しくしているの?

「おじょ、か…かのじょに怒られる、よ」
「何が」
「私なんかに優しくしてたら、怒られるって、こと」
「ああ、その事。嘘だけど」
「………なに、が」
「告白受けたって話」

お嬢の放たれた言葉に理解が追いつかない。
うそ…嘘?お嬢が告白を受けたというのがウソだって事?
その間も勝手に零れる涙を拭い続けてくれるお嬢の手つきは優しいまま。「悪いな、タオル今教室だから」と目が痛くならないように力加減に気を付けてくれている。

「お前がずっと俺の事を『お嬢』って呼ぶたびに男として意識されてないんだろうなって思ってさ。俺も悔しくなってつい意地悪言ったけど、まさかここまで泣くほど俺の事好きだなんて」
「っ、……」
「言っておくけど俺は何とも思ってない女に自ら声掛ける男じゃないからな」

お嬢の言葉が一つ一つ私の身体の中に入って溶け込んでいく。
…ねぇ、お嬢。それって期待していいの?私の勘違いじゃなければお嬢も同じ気持ちだって思っていいの?
お嬢の手に自身の手を重ね、唇を動かす。

「お嬢は…千切くんは、私の事どう想ってますか、」
「好きだよ。お前の事しか好きじゃない」

千切くんの口から、千切くんの声で届けられた想い。
夢じゃない、嘘じゃない。これは現実なんだ。
結局涙は止まらなくて折角千切くんが拭ってくれたのにまた溢れてくる。
「お前泣きすぎ」って千切くんは笑うけれど、好きな人と想いが通じ合うってすごい奇跡なんだよ。だからこれは嬉し涙なの。
すると千切くんの顔が近づいて来たので反射的に目を閉じると、おでこにふに、と柔らかい感触が一つ残された。
目を開けるとそこには満足そうに笑う千切くんが居て、「俺はサッカーが人生の全てでサッカーを優先する。けどちゃんとお前の事も好きだから俺の事嫌いになるなよ?」と告げられた。

「こちとらサッカーに全てを捧げる千切豹馬くんをずっと見てきたんだから、私の事甘く見ないでよね」
「ふっ、はは!そうだな、さすが俺の惚れた女だ。悪かったな」

ずっとサッカーをしている君を見てきたのだから今更サッカーばかりで私を構ってくれないなんて嫌!みたいになる女じゃないんだからね。
ただ、千切くんの心の中のどこかに『私』という存在が居てくれればいいの。
だから千切くんは夢を追いかけ続けて、千切くんの夢が叶うその日まで、私は君の横に立ち続けるから。
どうかその日まで、ううんその日以降も千切くんの横に立てますように。


(それより千切くんじゃなくて豹馬って呼べよ)
(それはハードルが高いというか…)
(俺は豹馬って呼ばれたいんだけど)
(…じゃあ千切くんが私の事を下の名前で呼んでくれたら私も呼ぶ)
(そう告げるとすぐさま千切くんの唇が私の耳元に寄せられ、ゼロ距離で私の名前を呼ばれ立っているだけの力などどこかに逃げてしまい、その場にしゃがみこむ他なかった)

Comments

  • lilium

    これは少女漫画から出てきた千切くん。みんな惚れちゃうやつ。

    June 23, 2023
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