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千切豹馬と彼氏の好きなタイプを演じてる根暗彼女の話/Novel by ななみる

千切豹馬と彼氏の好きなタイプを演じてる根暗彼女の話

18,655 character(s)37 mins

自分に自信のない千切彼女が匂わせ女の出現で揺らぐ話。
ちょっと千切のキャラブレてるかもしれません、ご注意ください!

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https://wavebox.me/wave/44mdt4nvernu9649/
waveboxも置いてますのでよかったら。

ヤンデレな千切を書くつもりが女々しい感じになった気がして反省してます。でも普段男前なキャラのそういうのもありかな、なんて思ったり。

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アラームの音で目を覚ました。目を開けた先の世界は窓からの日差しでうっすらと明るい。優しい色合いのブルーのカーテンから透ける朝の光はなんだか水の中にいるみたいだ。

まだ寝ていたいと訴えかける眠気を振り払い、体を起こそうとして回されていた腕に気が付く。無視して起き上がろうにもあたしの腕よりもずっと逞しい現役アスリートの腕は手ごわくて無理だった。
まぁ、どうせ彼も起きなきゃいけないし起こしてしまうか。薄く口を開いた中性的な美しい造りの顔は枕で頬が潰されてその柔らかさが見て取れて可愛らしい印象を受けた。

あたしはつい見とれてしまったその頬をぺちぺちと叩いた。そうすると彼はだんだん眉間にしわを寄せて払うように頭を振った。まだ夢の中にいるようなゆったりとした、でも強い意志を感じるその動作にもう少し寝かせてあげようかとも思ったけど、起こされなくて困るのは彼だ。それに少しでも早く起きてもらって二人で時間を共有したい乙女心もあって、今度はゆさゆさと肩を揺らしてみる。

「ひょーまくん、起きて、ねぇ起きてくださーい」
「んー、いまなんじ…」

大きく体をゆすられてしかたなく、といった様子で一度少しだけ目を開けてでもすぐに閉じてしまった彼がかすれた声で聞いてくる。枕に横向きに乗っていた顔を枕に埋めるようにしてるのは彼なりの抵抗なんだろうか。鮮やかな彼の髪はネイビーやブルーでまとめたあたしの寝室の中では水槽の中の熱帯魚のように美しく映えていた。

「もう7時だよ」
「…そ……あと5分寝る」

寝返りで開いていた距離を詰めるように胸にぴったり抱き込まれてしまった。途端にあったかい彼の体温にあたしも眠気がぶり返すけどなんとか堪えなきゃいけない。抱き込まれると彼の香りがあたしを包み込んで彼の匂いを強く感じる。
同じシャンプーに服も同じ洗剤で洗ってるのにどうして豹馬くんからはこんなにいい匂いがするんだ。そんなどうでもいいことに頭を動かしてどうにか五分二度寝せずに踏ん張った。
再度起こすと「ん~」と唸りながら体を起こして首を横に倒しぐーと伸ばしながら「おはよ、」と優しさをかたどったような声でまだ横になったままのあたしの頭を撫でる。手の重みにこの目の前の美人さんが男なことを改めて思い知らされる。豹馬くんの一つ一つに魅力を見出してしまうあたしは病気かもしれない。


「おはよう」
「おら、お前も起きんぞ」
あたしの上に覆いかぶさるようにして上体を倒した彼の腕が背に回った。あたしはされるがまま起き上がらせられて、それだけかと思っていたらそのままお姫様抱っこされてしまった。腕を回した体は安定感があって本当ならこのまま体を預けてもいいけど、華奢で可愛い彼女でいたいあたしはそうもいかない。慌てて下ろしてほしいともがいた。

「ちょ、重いよ!だめ下ろして!」
「んー」
「ちょっとっ!」
「やだ?今日最終日なんだしいいじゃん、俺明日から一人だぞ」
「そうだけど!でも!」

見上げたイケメンに少し悲しそうにそう言われてしまえば嫌とはいえない。ましてや彼氏で、豹馬くんにこうされるのはほんとは嫌じゃないから尚更だ。温かいぬくもりは心地いいし彼がそばにいること実感させてくれる。あたしは彼からの懇願と自分の本心に後押しされてしょうがなくあたしの重みを豹馬くんに知られてしまうのを我慢することにした。
そのまま身を任せるとリビングのソファーまで危なげなく運ばれた。けど次会うまでにもう少し体を絞っておこうと心に決めた。それは豹馬くんと気兼ねなく触れ合うために必要な努力だ。

「朝飯なにがいい?」
「あたし作るよ?」
「だめ、俺が作るからお前はテレビでも見てて。俺特製トースト焼いてやる」

あたしをソファーに下ろした豹馬くんは隣に座ることなくテレビのリモコンをあたしに持たせて一人キッチンに消えてしまった。ずいぶん、甘やかしてもらってる。そんな感想の出るお姫様待遇。そんなに態度に出ちゃってるんだろうか、寂しいって。

シーズンオフに入ってすぐ帰国してくれた豹馬くんはそれでも今日朝食を済ませたらイギリスに帰ってしまう。この時間が終わってしまうのが惜しいと空港で彼を迎えた瞬間からずっと思っていた。
なるべく好かれるようにかわいこぶっていい彼女でいようと取り繕ってるあたし。なのに態度でバレてるんだとしたら口で言われるよりもうざいかもしれない。対局の存在であってほしいめんどくさい察してちゃんに気づかぬうちになっていた自分に自己嫌悪で黙り込んだ。

豹馬くんの好きなタイプは穏やかで理解のある人だ。彼の彼女でいるにはそうでなきゃいけない。

切り替えるように持たされたリモコンの電源ボタンを押してテレビをつけた。朝の時間はどこの局も情報番組であたしは彼がいない期間はいつもスポーツニュースをはしごするようにザッピングするくせがついていた。明日からも画面越しに一方通行で会えるかもしれない彼を探すんだろう。

「葵ー」
「んー?」
「なに飲む?」
「カフェオレー!」
「あいよー」

キッチンから顔だけ出して聞いてくる豹馬くんに元気に見せるように笑って答えた。気合を入れなきゃ。空港で見送るときは笑顔で送り出して年末の休暇までの間、彼が思い返すのが物わかりのいい、かわいい彼女であるといい。

豹馬くんは軽く笑ってまたキッチンへ引っ込んでいった。その後は豹馬くん特製トーストとやらを食べて空港へ向かった。
同じベッドで目を覚ましてただ朝ごはんを一緒に食べただけの朝。なのに普段なかなか会えない恋人との時間はそれだけでもなににも代えられない時間だった。休み明けの仕事の憂鬱な案件とか嫌なものがぜんぶ頭から吹っ飛ぶような時間。豹馬くんと一緒にいるとき、あたしは一人じゃぜったいに叶えられない幸せな気持ちになる。恋愛なんて人生のプラスαでおまけみたいなものだって女子会していた過去のあたしには想像もできない未来だった。


「じゃあ、いってくるな」
「うん、いってらっしゃいーまたね」

タクシーで空港まで向かって手荷物検査場の前までたどり着いてしまった。周りには同じように見送りに来ている人も多くて中には抱きついているカップルもいた。
あたし達は繋いでいた手を離されてさらりと豹馬くんがあたしの頭を撫でる。前髪を崩さないようにという配慮か控えめなそれ。

本当は今ここであたしだって抱きつきたいくらい離れがたい。でもそんなことをする度胸もない。万が一週刊誌にでも撮られたらとでも思うと本当は手をつなぐのも避けたいくらいだった。

だって、そんなことで豹馬くんの負担になりたくはなかった。彼にはサッカーにだけ専念していてほしかった。どうでもいいことに豹馬くんのキャパシティを割いてはほしくなかった。それは彼を思ってではなくて彼にとって煩わしい存在になりたくないという利己的な考えだ。

頭から心地よい重みが消えて豹馬くんは手荷物検査場へ消えていった。その姿が見えなくなるまであたしはその場を離れなかった。……あっという間のオフだったな。次は年末、かぁ。半年先の未来へ期待を繋げながら行きは二人でタクシーで向かった道を電車で一人自宅へと戻った。テーブルに並んだ二人分の食器を目に焼き付けてシンクへ持っていく。ソファーに脱ぎ捨てられた彼のパジャマを洗濯するのはまだ先でいい。


Comments

  • のらりくらり
    June 12, 2024
  • cocho
    August 15, 2023
  • ロキ
    August 4, 2023
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