不確実性の高い状況で迷わないための2つの判断軸
こんにちは、コマースドメイン リユースLaboディビジョンで、UXリサーチャー/プロダクトマネージャー/インサイトストラテジストを務めている角田と松尾です。
本記事では、先月開催されたプロダクトマネージャーカンファレンス2025(pmconf 2025)で登壇した内容をもとに、私たちが0→1の価値創出に取り組む中で辿り着いた「不確実性に対抗する判断軸」をご紹介します。
プロダクトマネージャーカンファレンスとは
2016年から開催されている日本最大級のプロダクトマネージャー(PdM)向けイベント
※本記事は少し長めですが、0→1フェーズのディスカバリー(課題発見)と検証を、体系立ててまとめています。
リユースLaboディビジョンとは
私たちが所属する「リユースLaboディビジョン」は、Yahoo!オークション、Yahoo!フリマなどのリユース領域のサービスを運営する組織の中で、既存サービスの改善ではなく「0→1の価値創出」に特化した少数部隊です。
ミッションは、リユース領域に新しい価値やイノベーションを生み出すこと。正解のないテーマに向き合いながら、日々ディスカバリーと検証を繰り返しています。
0→1の実例:「グッズ交換」機能
私たちの取り組みの一例が、Yahoo!フリマの「グッズ交換」機能です。
アニメグッズやカプセルトイなどのランダムグッズ交換は以前からSNS上で行われていましたが、相手探しの手間や住所交換への不安、トラブルのリスクといった課題がありました。
これらの課題に対して、匿名配送でできるだけ安全に交換できる仕組みを提供したのがYahoo!フリマのグッズ交換です。その結果、「売る・買う」しかなかったフリマに「交換する」という新しい価値が生まれました。
不確実性の正体と、判断軸の必要性
こうした0→1の価値創出において、私たちが最も悩んでいたのが「不確実性」でした。
このアイデアは本当に価値があるのか、誰に向けて作るべきか、進めるべきか、やめるべきか。
検証を重ねてユーザーの声や数字が集まっても、最後の意思決定で迷ってしまう――そんな経験を何度もしてきました。
そして気づいたのは、多くのプロダクトが失敗する理由は「不確実性の高さ」そのものではなく、不確実性に対抗する「判断軸」がないまま意思決定してしまうことではないか、という点です。
そこでたどり着いたのが、再現性のある2つの思考法「4%ルール」と「N1思考」でした。
新しい価値を探す最初のステップは、「アイデアの芽」を見つけること。その判断軸が「4%ルール」――少数でも強く熱狂する人がいるかどうかを確かめます。
次に必要なのは、その芽をどのように育てるか。ここで活きるのが 「N1思考」――特定の一人の深い課題に向き合うことで、プロダクトの解像度を高めていきます。
この2つが揃うことで、迷わず、「ブレないディスカバリー検証」が可能になります。
4%ルール:少数の「熱狂」から芽を見つける
最初に4%ルールについてご説明します。
これは、あるコンセプトテストの例です。平均点は4.5点(10点満点)でしたが、満点(10点)をつけた人が5.8%いました。
平均点だけを見ると「微妙かな」と感じますが、私たちはこの結果をGOと判断します。
理由は、未来を決めるのは平均ではなく「熱狂」だと考えているからです。満点をつけた人が4%以上いるかどうか——これが私たちの重要な基準です。
なぜ「4%」なのか
どんなに優れたサービスでも、最初から全員に受け入れられることはありません。
多くのヒットサービスでも、市場の約20%に届けば成功と考えられており、さらにイノベーター理論によると、特に熱量が高い先行層はその約20%、つまり市場全体の約4%だと私たちは考えます。
この4%が「これは価値がある」と強く共感しているかどうかが、イノベーションが生まれるかどうかの分岐点となります。
なぜ「満点」を重視するのか
アンケートでは無難な選択肢が選ばれやすく、特に日本人は「満点」をつけることに慎重な傾向があると言われています(出典元)。
だからこそ、あえて満点をつけるという行為自体に、強い価値認識と熱量が表れていると考えています。
4%ルールの本当の目的
私たちは4%ルールを「当たるアイデアを探す」ためではなく、「当たらないアイデアを早く削る」ために導入しています。
ディスカバリー初期はアイデアが増える一方で、すべてを丁寧に検証する時間もリソースもありません。
そこで、熱狂者が4%未満のアイデアは序盤で思い切って削り、芽のあるものだけにリソースを集中させます。この判断軸によって、意思決定の迷いが大きく減りました。
N1思考:アイデアの芽を育てるための判断軸
4%ルールで芽を見極めたあと、次に行うのがN1思考です。
N1思考とは、実在する「目の前の1人」を深く理解し、本気で喜ばせる考え方です。
架空のペルソナは複数の価値観が混ざりやすく矛盾しがちで、チームの共通認識を持ちにくくなります。
一方、実在する1人であれば、背景・理由・行動が一本につながり、議論がぶれにくくなります。
N1思考の2つのステップ
このN1思考を使って、アイデアの「芽」を育てていくには、主に2つのステップで実施していきます。
1つ目のステップは「その課題は本当に解決すべき課題なのか」を見極めます。
2つ目のステップは「そのN1が『絶対にほしい』という解決策」を考えます。
ステップ① 「その課題は本当に解くべき課題か」
本気で困っている人が実在しなければ、そのアイデアは「あったらいいな」で終わり、誰にも使われないサービスになってしまいます。
私たちは「行動」を見るのが最も確かだと考えています。課題を解決するために、わざわざ時間や手間というコストをかけて行動しているなら、それは「どうしても解決したい」という強いサインだからです。
こうして見つけた代表的な1人を、チームの共通ペルソナ(N1)として定義します。
ここで、過去の私たちが作っていたペルソナ例を載せます。
当時はこれくらいの粒度で、架空のペルソナを立ててしまっていました。
では、実在するN1に絞るとどうなるでしょう。
同じ「子育てをきっかけに使わなくなった」という課題でも、かなり課題の解像度がはっきりします。
N1に絞ることで、課題の前後関係や文脈がつながり、解決すべき対象がクリアになります。
ステップ②「N1が『絶対にほしい』解決策を考える」
N1ができて、課題の解像度があがったら、次はプロトタイプを試作し、実際に触ってもらいながら改善を重ねます。
「絶対にほしい」「早く使いたい」と切望する1人が存在するか。
いなければ、その時点で課題を解決できていないサインなので、潔く撤退します。
「N1は特別すぎないか?」という問い
よく出てくる疑問が、「そのN1って、その人がたまたま特別な人なんじゃないの?」という問いです。
この問いに対して、私たちは次の考え方に共感しています。
スケールを考える前に、まずは特定のユーザーにパーフェクトな体験をつくること。
1人でもいい。それをクリアにしてから、スケールを考えればいい。
――というメッセージです。
この言葉は「熱狂をつくるには、まず1人に深く向き合う必要がある」と教えてくれています。
そして実際、プロダクトの世界でも新しい価値は多くの場合1人の強いニーズから始まっています。
OXOに見る「1人から始まる価値」
たとえばOXO®(オクソー)というキッチンツールブランドがあります。
OXOは、創業者が関節炎でピーラーを持つのもつらかった「妻1人」のために開発したことが始まりと言われています(出典元)。
太くて柔らかいグリップや手になじむ形状を何度も試作し改善を続けた結果、今では多くの人にも受け入れられ、世界中で支持されるユニバーサルデザインの象徴になりました。
1人を徹底的に喜ばせることが、結果として多くの人を惹きつける。
私たちはこの事例が、N1思考の価値をよく表していると思っています。
検証ステップまとめ
「4%ルール」と「N1思考」の判断軸を用いた検証ステップをまとめます。
①4%の熱狂は存在するか。
②行動しているほど本気で困っている課題か。
③本当に助けたい代表的なN1は誰か。
④N1が「絶対にほしい!」と切望したか。
この4ステップを踏むことで、私たちは不確実性が高い中でも迷いを減らし、前進することができました。
またこの2つの判断軸の共通しているのは、
「大多数がなんとなく使いたいものではなく、少数が【絶対に使いたい】ものをつくる」
「全員ではなく、その1人を本当に喜ばせる」
という逆説的なアプローチです。
これが0→1期の未来を切り開く突破口になると私たちは信じて活動しています。
おわりに
このプロセスはまだ未完成です。特に難しいのは、「検証で分かったこと」と「(リリース後の)実際の行動」の乖離をどう埋めるか。
それでも0→1の不確実性を少しでも減らすために、私たちは判断軸を磨き続けています!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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