Steamで低評価レビューをつけることはインディーゲームコミュニティが活性化するために本当に正しいことなのか
このたびは、自分の不用意な発言により不快な思いをされた皆さまに、心よりお詫び申し上げます。該当の投稿は、関係者の方々にご迷惑をおかけする可能性を考慮し、削除いたしました。…
— SparkWingGames(すぱうい) (@sparklewing925) November 19, 2025
先日インディーゲーム制作者のSparkWingGames(すぱうい)氏(以下、すぱうい氏)のポストが大きく話題となった。これは私がインディーゲームをプレイし、レビューする立場として今まで悩んできたことに加えて、更に多くのことを考えるきっかけとなったため紹介し、私の考えを中心に書いていきたい。
すぱうい氏の開発した【Slot & Dungeons】はSteamにて発売中だ。
なおゲームについては未プレイであり、販売促進目的での投稿でないことを明記させていただきたい。
話題となったポストとその反応
冒頭のすぱうい氏のXポストにある通り、話題となったポストは削除済みである。話題になった当時、議論の中心となったのは以下のSteamレビューに関するものであった。
このレビューのスクリーンショットとともに、すぱうい氏が作成したゲームに約80時間の総プレイ時間を費やしているのに「ボリューム的に半端」としたレビューに疑問があった、という内容だった。
"ボリューム"とプレイ時間の相関に関しては界隈でも様々な意見があった。
これに加えて、すぱうい氏のXのリプライを見て「炎上商法的に低評価レビュー晒しをしたのでは?」と多くの方が言及していることもあり、より大きな範囲に話が広まっていった。
❌ 不用意な発言
— アーゴット大好きクラブ (@i_love_urgot_2) November 20, 2025
⭕️ 意図的な炎上商法 https://t.co/Vd3vM3KxYB pic.twitter.com/vMpxFTGVKX
私はいちSteamキュレーターとして「レビューを販売促進に利用すること」は高評価のレビューに対して少しの感謝とともにすべきものであると考えている。そのためこのリプライを見る限りでは私は炎上商法としてレビューを使用することに否定的な立場であることを表明しておく。
内容については一度置いておいて、「開発者が自身の制作したゲームの低評価レビューに言及すること」の是非についてまずは考えていきたい。
開発者が「低評価レビュー」に対して求められる姿勢
まず、Steamが想定している「開発者に求められる評価の受け取り方」の一例を紹介していたポストを紹介する。
これSteamのコミュニティモデレーションガイドにも明記されてることなんだけど、開発側が検閲的なことをするの悪影響でしかないんですよね。これは掲示板のドキュメントだけどやってることは一緒。
— paprika (@paprika_gg) November 19, 2025
開発者本人がこういうことしてるの見て正直ビックリした。 https://t.co/9yu0iLRE2j pic.twitter.com/rzbXBefNsP
顧客に不満を表明してもらいましょう。 検閲はしないでください。ユーザーは検閲に敏感です。 否定的なコメントにイライラするのはやめて、製品開発に集中してください。 重要な問題を修正し、製品を通してユーザーを満足させることに力を入れてください。
ユーザーは否定的な意見やコメントも自由に行って、開発者はそれを糧に圧倒的な作品を作り閉口させる。これがSteamが求めるユーザーと開発者の関係性のように受け取れる。
これはとても簡潔で誠実な関係だと私は思う。こんなところが面白くて、こんなところがつまらない。開発者に伝えて、よりよいものを待つ。シンプルだ。私もその建設的な議論と批評が行われる世界を望んでいる。
でも低評価レビューって、難しくない?
そんなことは…わかっている。より良いゲームが生まれる土壌の一部に私もなりたい。それでも私はずっと低評価のレビューをつけることができないのだ。
開発者が求める「高評価しかしないユーザー」になりたいわけではないし、低評価レビューをすることで自分が傷つくのを恐れているからでもない。それにまだ、今現在もどうしたら良いか悩んでいる。
ここからは「レビューをする私」の話として考えを整理していきたい。
低評価レビューが開発者に与える影響
私は現在までにSteamで低評価レビューをつけたことがない。もちろん私がまだレビューをし始めて日が浅いということもあるが、意図的にそれは避けて来た。これには多くの理由がある。
購買意欲を削いでしまうのではないか?
開発者は数年をかけてゲームを制作している。
リリースまでに多くのリソースを割いて制作している作者が、やっとの思いで発表したものが全く面白くないものであった時に私は「これをおすすめしない」と公の場で言えないのだ。もちろんこれは憐憫の情も大きいが、それだけではない。
Steamのレビューは御存知の通り、購入できるストアページの下部で見ることができる。これは例えるなら八百屋のキャベツの値札の横に、味や鮮度の感想を貼るようなものだ。
レビュー数が少なくなりがちなインディーゲームではストアページについた赤いバッドステータスはとてもよく目立つ。私が書いたレビューが、開発者が完成したゲームをよりよく見せるために作成したトレーラーやプレイ動画を相殺、あるいは凌駕するものになるかもしれない。
もちろんそうなれば、売上は私のせいで減少するだろう。
ずっしりと大きく綺麗なキャベツの横に「中身がスカスカで味もマズかった!」とは書けない。頭の中の誰かが言うのだ、「それってあなたの感想ですよね?」
開発者には想定した顧客層がある、かもしれない
もちろん私にだって「つまらなかった感想」はある。大人になってからあるAAAタイトルとも言える新作RPGをプレイした時に、私は絶望を越えて怒りが湧いた。
ストーリーは稚拙な上ありがちな構成で、話の顛末が予測できるうえに物語に整合性はない。それに加えてストーリーを紡ぐ言葉は「脚本家」の"口癖"が全てのキャラクターに体臭のように感じられ、臭いセリフで繰り返される寒い掛け合いは吐き気を催すほどだ。
まるで劣悪なライトノベルを読んでいるかのような気分だった。
しかし私の感想に反して世間の反応はさほど悪くなかった。そのゲームは現在もSteamのレビューはやや好評を保っている。
私はこのゲームにおいては想定されていないユーザーなのだと感じた。
私にとっての劣悪なライトノベルは誰かにとってのバイブルにもなり得るのだとその時理解した。そのゲームをやるのに私は「おじさん過ぎた」のだ。
だから「つまらなかった感想」に意味はあまりない。ストアページに載せるのであればなおさらだ。
開発モチベーションと私が期待する変化
低評価レビューが開発者に与える最も大きく、最も見えにくい要素が開発モチベーションかもしれない。開発者はリリース直後で浮かれているからこそ低評価レビューは大きくモチベーションに影響するだろう。
正直に言えば、私はつまらないものを作る人が面白いものを作れるようになることを期待していない。感性の乏しい人が作るものが洗練されていくところを見た経験がないからだ。だから私はまず、それを伝えない。
低評価を伝えずに、ペルソナをしっかりと選定した「私にとってはつまらないもの」が評価される世界で、開発者がより多く存在し続けるほうがよいのかもしれないとも思う。少し寂しいけど。
その方がゲームを楽しむ人数はより多く、幸せだろう。それにその開発者の次回作は突然変異的に面白い可能性だってあるのだから。
低評価をしない私がなぜ声を上げたのか
以上が私が低評価を未だにしていない理由の一部だ。前述の通り、推奨されるコミュニティ形成とは程遠い「私の」スタンスである。健全なレビューコミュニティの形成には低評価は不可欠であり、その痛みがなければインディーゲーム業界の発展はないだろう。
それでも私がこの記事を書こうと思ったのは、私だけでは担えないより多くのレビューがコミュニティ形成に必要だと考えているからだ。
玉虫色のレビューはみんなでないと作れない
私はゲームのレビューを行う際に信条にしていることがある。それは「ストアページにないネタバレになる要素は極力書かないこと」と、「ゲームを買わせるため」にレビューを書くことだ。
より多くの人が、自分が思う良いゲームを最大限楽しんでほしい、そのためにレビューを書いている。
Steamの想定するように低評価レビューが開発者のハングリー精神を刺激し、製品をより良くするカンフルとして機能するのであれば、高評価レビューは開発者のモチベーションと財布を潤すものとして存在していたい。
そのどちらもを満たせるレビューは、一人では作れないのではないかと思う。おすすめレビューが100件とおすすめしないレビューが10件、辛辣なものが…2つくらい、とか。よい開発者と神ゲーが育つレシピは私達ユーザーが作っていくのだ。
インディーゲームコミュニティが活性化し、より良いゲームと出会うために私達いちユーザーができることは、Steam内のレビュー文化自体をより良いものにしていくことだろう。
だからこれを読んだ方は自分の好きになったゲームひとつだけでも、レビューしてみてほしい。それがインディーゲームコミュニティが活性化するために必要なことだと私は思う。
今までは誰かの参考やモチベになればと思って、遊んだゲームはレビューを書いて来た。でも今後は高評価とか低評価とか関係なく二度とレビューは書かないと決めた。主観を"間違い"とされ、晒されるリスクあるのは流石に面倒すぎる。 https://t.co/8piNXUdfs7
— もみじ (@0120828828ke) November 20, 2025
すぱうい氏に対する引用ポストに、今回の件でレビューをすること自体を警戒してしまったもみじ氏のポストがあった。現在までゲームコミュニティが豊かになるために文字を書き続けた人間がひとり少なくなってしまうのは本当に悲しい。
もみじ氏もまたレビューを書いてくれたらと、切に思う。
最後に、低評価レビューに触る開発者と炎上を楽しむ野次馬
今回、すぱうい氏の発言はSteamのレビュー文化を毀損しかねない(あるいはした)ものだったように思う。レビューをする人間がより多くなる未来へ向けて開発者も振る舞っていかなければ、インディーゲームのコミュニティは良くなっていかないだろう。低評価レビューと高評価レビューは別の属性を担っていることも開発者は理解すべきであるとも感じた。
私にとっては、ゲームをレビューすることに対して自身がより深く考えるきっかけになったことはすごく良いことだった。私もいつか、おすすめしないレビューを作成できるように、それを自分自身が許せるコミュニティになっていると嬉しいなぁと思う。
なお、これに乗じてすぱうい氏の開発したゲーム【Slot & Dungeons】に不当な低評価レビューを面白半分に行っているユーザーには、もう一度レビューをすることについて考え直してもらえたら、と思う。
いつか私達が楽しいゲームに出会うためにも、ゲームを愛する同志として共にコミュニティを築いていきたい。



特に日本人はレビューが厳しめというデータがあったりしますが、日本向けに作ってくれるクリエイターのモチベーションが削がれないといいなー、とか思います…
そうですね~ゲームを作る方が減ってしまうのは一番悲しく避けたいことです 厳しいレビューをする方が減ってしまうのもまた違うといえば違うと思うので、良いレビューをしていく人が増えていって結果的にSteamレビューに良い土壌ができていくといいなあと思います