性被害、事件事故、環境汚染、騒音…。在日米軍基地を巡る問題の背景にある、日米地位協定の改定議論が進まないことに危機感をもち、大学生の女性が、衆院選に候補を擁立する各政党に公開質問状を送った。行動するのは、基地が集中する「沖縄」の出身だからでも、「リベラル」だからでもない、という。「日本全体の問題と受け止めてほしい」と願う。(佐藤裕介、中根政人)
◆各党に地位協定への考え方を問う質問状を送ったが
「各党が消費税減税を訴えて選挙戦が進む中、日米地位協定の問題が埋没してしまっている」
こう危機感を口にするのは、米軍基地が集中する沖縄県出身で慶応大4年の崎浜空音(そらね)さん(23)。日米地位協定は、日本国内で発生した米軍関係者の公務中の犯罪には日本側の法律は適用されず、米軍側が優先的に裁判権を持つなど、日本側に不利な協定だ。
「各党の考えを可視化し、有権者に問いかけたい」。友人たちと一緒につくった団体「What is SOFA?」(ワットイズソーファ)の代表として、1月27日の衆院選公示後、各党に地位協定への考え方を問う質問状を送った。
今月2日の締め切りまでに、11党のうち回答があったのは4党のみ。団体のホームページ上で公開していく方針だが「(他の7党が)スタンスを示さないということは、改定に向けた行動のスタートラインにも立てていないということ。道のりは遠いと、悲しい気持ちになった」と嘆く。
◆大学進学で上京「自分が声を上げないと」
同県北谷(ちゃたん)町にある崎浜さんの実家から、徒歩で数分の距離に米軍基地がある。「子どもの頃から毎日何度も米軍機が家の近くを飛び回り、騒音で学校の授業が何度も中断する。米軍機の音がすると、沖縄戦を経験した祖母は震えておびえていた」と振り返る。親からは「米兵がいる繁華街には絶対に行くな」と言われて育った。
13歳の時、同県うるま市の女性会社員=当時(20)=が、元米海兵隊員で軍属だった男に暴行、殺害される事件が発生。ウオーキング中の日常で起きた事件に強いショックを受けた。「周りの大人たちも激しく怒っていた。自分も地位協定について調べ、米兵が犯罪を行っても裁かれないことがある、という理不尽さに怒りを感じた」
ただ、大学進学で上京すると、地位協定の存在すら知らない友人も少なくなかった。「自分が声を上げないといけない」と考えた。街頭活動や交流サイト(SNS)でも発信を続ける。
◆2024年の総裁選で石破前首相が地位協定改定を掲げたが…
2024年9月の自民党総裁選では、石破茂前首相が地位協定の改定を掲げたが、政権発足後は「一朝一夕に実現するとは思っていない」などとトーンダウン。衆院選で「日本列島を、強く豊かに。」と掲げる党総裁の高市早苗首相も、米国にとって耳障りであろう地位協定の改定を強く訴えている形跡は見られない。
崎浜さんは「日本に住む人たちを下に置き、一方的に米軍の優越的地位を認めるのが地位協定。私たち一人一人が当たり前に平和に生きる権利が、米兵に奪われることを許容している。『人権侵害の温床』そのものだ」と訴える。
「法律家の立場から地位協定のさまざまな問題点を追及していきたい」との思いから、4月からは慶応大法科大学院に進学する予定だという。「バタフライエフェクト」という言葉が大好きという崎浜さん。「たった一人の声や行動が、政治を変え得ると信じている」と前を向く。
◆在日米軍と沖縄県警との合同パトロールが物議
米国に対する日本の従属的な立場を「固定化」している日米地位協定。見直しの必要性が指摘され続けてきたものの、1960年に締結されてから一度も改定されたことがない。
協定の3条では、米国は在日米軍基地などの施設や区域内で「設定、運営、警護及び管理のため必...
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