「274台水没、補償は3分の1」 三重の地下駐車場「冠水事故」は本当に想定外だったのか? 官民の責任転嫁が生んだ“管理の空白”を考える
冠水事故の責任所在
2025年9月、三重県四日市市の中央通りにある地下駐車場「くすの木パーキング」で、自動車274台を巻き込む大規模な冠水事故が起きた。当時、四日市市は観測史上最大の豪雨に見舞われており、地下空間へ大量の雨水が流り込んで壊滅的な状況になった。 【画像】「えぇぇぇ!」 これが当時の「浸水状況」です!(7枚) この事態の中核にある問題は、駐車場運営側による管理の失敗にある。本来、浸水を防ぐためにある止水板は合計10か所あったが、そのうち2か所の電動式が故障したまま数年間も修理されず放置されていたことが判明した。 残る8か所の止水板は手動式であったものの、現場のスタッフの対応が追いつかず、浸水を食い止める機能を果たせなかった。高額な車両を預かっている立場にありながら、基本的な維持管理を怠っていたという事実は、利用者に対する重大な裏切りに等しい。 被害を受けた274台の所有者たちは当然ながら運営会社へ補償を求めたが、会社側は12月末になって破産を申し立て、事業から撤退した。復旧費用の増大で経営が続けられなくなったとしているが、法的な手続きを使って賠償の義務を強制的に遮断しようとする対応は、不誠実としかいえない。 しかも、公表された負債額には被害車両の補償額が含まれていなかった。運営側が、利用者の財産を守る責任を最初から放棄していたことが明らかになったのだ。
補助金救済の限界
運営会社の破産発表と同じタイミングで、国が被害車両への補償の一部を負担する方針を示した。 この駐車場は、管理運営を行う会社と国土交通省がそれぞれ半分ずつ所有している形になっている。事故の直接的な原因となった止水板は、国が所有する区域にも設置されており、行政側も責任を免れる立場ではない。 特に電動式止水板の故障については、双方で問題を把握していたにもかかわらず、修繕費の負担の割り方をめぐって議論がもつれ、長期間放置される事態を招いた。管理を担う主体が事実上消えた今、国による救済が求められるのは当然だろう。 しかし、1月26日の説明会で提示された内容は、とてもじゃないが受け入れられるものではなかった。国は水没した274台の所有者に対し、被害の総額の3分の1のみを支払うとしている。この数字の根拠は、止水板の不備によって流り込んだ水が全体の3分の1であったという物理的な計算だとされている。 だが、これは賠償額を強引に圧縮する手法に過ぎない。残り3分の2の支払先が不透明なままでは、最終的な損失は、所有者の車両保険や自己負担にのしかかる。公共インフラを信頼して車両を所有してきた人々の権利を著しく軽視しているのだ。