昨年の日本の粗鋼生産が8067万トンとなり、世界ランキングで4位に転落した。62年ぶりの出来事という。建設需要が低下し、中国から安価な鋼材が入り市況が悪化。日本の産業の国際競争力低下が懸念される。
鉄は国家なりと言うが、2025年の世界ランキングを見てみよう。1位中国9億6080万トン、2位インド1億6490万トン、3位米国8200万トン、4位日本8070万トン、5位ロシア6780万トン。上位5位までの世界シェアは73%だ。中国が圧倒的シェアで52%を占める。
中国の粗鋼生産が急増し始めたのは2000年代からだ。00年初めの世界シェアは15%ほどだったが、その後の25年間でシェアは拡大の一途だった。
日中で粗鋼生産の順位が逆転したのは1996年。それまで日本の世界シェアは1位だったが、中国に1位を明け渡し2位となった。2018年に躍進著しいインドに抜かれ3位となり、25年は米国に抜かれ4位になった。
日本の粗鋼生産が減少した理由は、国内の人手不足などによる建設需要や国内新車販売の縮小だが、世界の鉄鋼市況が悪化した影響も受けている。中国から世界への25年の鉄鋼輸出は1億9002万トンで、インド、米国、日本の生産量を上回っている。中国国内では不動産不況の長期化によって鋼材需要が低迷し、過剰生産分の輸出がそのはけ口になっており、鉄鋼輸出国のわが国にとってはいい迷惑だ。
それにしても、中国が粗鋼生産の世界シェア50%超というのは異様だ。今は過剰生産になっているが、生産調整でもやり始めたら、どうなるか。韓国、タイ、ベトナムなどの東南アジア・近隣諸国が主な輸出先なので、差し当たり安全保障上の問題はない。
日本は、このままでいいのか。粗鋼生産で日本が4位、米国が3位となって、日米逆転を喜んだのはトランプ大統領だ。トランプ氏は当初日鉄によるUSスチール買収計画に反対していたものの、一転して買収を承認。日鉄からUSスチールへの巨額投資を引き出したことや、関税措置効果を成果として強調した。
USスチールは日本のものなので、日米の順位逆転に目くじらをたてることもない。日本は鉄鋼で量から質へ転換して国際競争力を確保するのがいい。
(たかはし・よういち=嘉悦大教授)