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『星獣戦隊ギンガマン』第二十八章『パパの豹変』

◾️第二十八章『パパの豹変』

(脚本:武上純希 演出:辻野正人)

導入

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第十五章以来に武上純希と辻野正人のコンビで描かれる今回の話はゴウキメイン回だが、どちらかといえば物語の主眼は青山親子の絆に置かれており、ゴウキと鈴子先生のデートはあくまで副菜にすぎない。
正直な話、無理に鈴子先生を捩じ込むくらいなら入れない方がもっとスッキリまとまったのでは?と思うが、だからと言って出しておかないと次に出るのが第三十五章だから忘れられてしまう。
だから鈴子先生自身はそんなに大きく物語に関与しなかったとしても、添え物程度でもゴウキの物語をしっかり描けてしまうのはこれまでの積み重ねがしっかりしているからこそだ。
しかも、なぜだか勇太少年の方がゴウキに恋愛のアドバイスをしているというのがおかしくて笑えるが、一方でそんな約束の踏み台にされてしまったのが晴彦パパである。

お話としては大したものではなく、「失って初めてわかる親の有り難み」であり、普段は父親に塩対応な勇太が改めて晴彦パパの存在の大切さを見直す構造だ。
実はここには90年代〜00年代で芽吹く社会的問題である「チャイルドマザー」「チャイルドファザー」が織り込まれているのだが、それはあくまでもきっかけに過ぎない。
大事なのはそれをきっかけとして青山勇太少年が第十七章以来の獅子奮迅の活躍を見せるところであり、本作が決して「ギンガマンだけが活躍するわけではない」ことを示したと言える。
これは高寺Pが前二作(『電磁戦隊メガレンジャー』『激走戦隊カーレンジャー』)で「等身大の正義」という一般人目線のヒーローを描いたことが強く影響しているだろう。

そして同時にヒエラヒエラが親子の絆を簡単に切り裂く「裏キューピッド」になってしまっているということが挙げられるのではないだろうか。
それくらいイリエス魔人族のやり方は陰湿かつねちっこいものであり、このあたりもまたバルバンの複雑な陰湿性のようなものが示されている。
まさにこれが平成に台頭する「醜悪」なのだが、そういう「心の悪」とも戦うのがギンガマンというヒーローだということも大事なポイントだ。
単なる伝説化された存在というだけではなく、常に「今」という時を更新することで「明日の伝説」を作り上げていくのがギンガマンというヒーローなのである。

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また、個人的に少しツボだったポイントとして鈴子先生の存在を全く知らない黒騎士ヒュウガの反応もまた絶妙で面白かった、変身前ならともかく変身後の姿でやっていたからだ。
これまで黒騎士は基本的にシリアスなキャラクターとして描かれていたため、今回のようにコミカルな一面をまた覗かせていたというところも見逃せない。
お話としては通俗的でありさして面白くはないのだが、それを役者の力と演技力でねじ伏せて面白く見せているのがまあ今回の良かったところだろう。
武上脚本回はあまり高く評価していないのだが、今回はその中でも例外的に面白くまとまった方だと言える。

今回の題材は「チャイルドマザー」「チャイルドファザー」

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導入でも少し触れたが、今回の題材として扱っていたのがちょうどこの時代に顕在化しつつあった「チャイルドマザー」「チャイルドファザー」というやつである。
今でいう「毒親」と違って、虐待したり育児放棄したりという、「中身が全く親ではない親」をすでにこの回で取り上げていたのは大変興味深いところだ。
もちろん当時の作り手にそんな意図があったかどうかは別として、ヒエラヒエラに魂を奪われることで簡単に子供を見捨ててしまう親というのは確実に顕在化していた。
実際、本作の3年後にACがこんなCMを作っていて、リアルタイムで見た時は私も衝撃を受けたものだ。

幼稚な価値観で育児放棄する親」のことを指しているわけだが、実際今はリアルにこういう光景が日常化していて、私も仕事で外に出る時に驚くことがある。
親が他人の見てる前で子供に罵声を浴びせたり叩いたりするだけならまだいいが、こないだ電車で見かけたのは赤ん坊を抱えながらスマホを親が見ていたことだ。
こういう親は今だともう当たり前になっていて、全員がスマホやPCなどのデジタル機器に毒されていて、そのせいで子供すらも蔑ろにしてしまう無責任な親が増えている。
子供を産んだだけで親になれるわけじゃない」が強烈なフレーズであり、それはこの作品の「力や技を持っただけで真の戦士になれるわけではない」と共通しているのだ。

何が言いたいかというと、親が子供を愛して子が親を愛するという「ごく当たり前」のはずのことがこの時代には「当たり前」じゃなくなってきているのである。
小林靖子自身もそもそも家庭に対する幸福感がまるでない人だったようなのか、「タイムレンジャー」の浅見親子の確執や「シンケンジャー」の白石家の確執などねじれた肉親愛がテーマの作品が多い。
ましてや青山親子の場合、母親がいつも出張で家を空けることが多く、実質シングルファザーで育ってきたからこそ余計にそう思うのではないか。
しかも「隣の芝生は青く見える」で自分の親ではなくゴウキを優先してしまうところからして、いかに世間の親父が情けなくなっていたかがよくわかろうというものだ。

まあ武上純希がこんなネタを考えられるわけがないだろうから題材を出したのは小林靖子なのだろうが、いいタイミングでいいネタを投下してくれる。
これは本作のとてもいいところなのだが、「ここでこういう回来てほしい」と思うものが大体来ていて、ここまではほぼハズレなしで来ているだろう。
青山親子の確執というほどではないにしても、幾分捻った形で表現れていた親子愛を改めてここで見直すという流れがとても良かった。
ここで軌道修正していなければ勇太少年が悪印象になりかねなかっただけに、非常にいい流れであると言える。

勇太少年、第十七章以来新たな伝説を生み出す

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そして勇太少年、ついに第十七章以来新たな伝説を生み出す、何と彼は体当たりで氷の結晶を壊してしまったのだ!
第十七章で破壊工作を覚え、今度は自分の父親を救うヒーローにまでなって見せ、しかも晴彦パパに謝るという正統派少年ムーブまでかましてみせた
歴代の子役の中でこんなにも印象的だったのはそれこそ「仮面ライダーBLACK RX」の茂少年以来だが、茂君をより理想化した存在が勇太君だと言える。
そんな彼が今回はゴウキにアドバイスを送り、尚且つそれを優先させるために父親との約束を反故にしてしまったことの反省までしてみせたというわけだ。

私が思う特撮の問題点として、いわゆる「子役レギュラーの扱い方」問題はあって、それは『ウルトラマン』の時から抱えていた問題だが、本作は見事にこの問題をクリアしている。
決して視聴者が不愉快にならない、出しゃばりすぎず空気化しすぎず、絶妙な塩梅で「一般大衆」の象徴であると同時に「視聴者を代弁する存在」と言う「狂言回し」としても機能しているのだ。
逆にいえば、子役の扱い方がうまくない作品はここまでしっかり役割を明確化していないから勇太君のような使いができないということになるわけだが、まあそれは置いておくとして。
「ギンガマン」という作品はただでさえ格式高い正統派ヒーローだから子役が活躍する場面を入れるのは大変に難しい、変に活躍しすぎると視聴者の反感を買ってしまう。

本作はそこを序盤からリョウマと勇太の関係性を中心に要所要所で活躍を描くことによって、この展開へと説得力を持ってつなげているところが素晴らしい。
決してギンガマンだけがヒーローではない、自らの誇りを持って自らできることを行うものがヒーローであるという決して「閉じられていないヒーロー観」が面白いのだ。
逆にいえば、三条陸をはじめとする「テンプレ化されたハリボテ」としての「ヒーローじみた何か」しか書けない無能作家どもに爪の垢を煎じて飲んでもらいたい。
ヒーローの真の強さとは単に「かっこいい」から、「強いから」ヒーローなのではない、いざという時に大事なものを守るために動けるやつこそがヒーローなのだ!

ギンガマンの地味に凄いところは「役者の降板」がないこと

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そしてこれはちょうど最近親友の黒羽翔と裏で話したことなのだが、「ギンガマン」の地味ながらとてもすごいところは「役者の降板」がないことだ。
最終章まで含めて全てのレギュラーキャラからセミレギュラーまでしっかり役者を使い切っているところであり、これが実は諸事情でできない作品の方が多い
それこそ『太陽戦隊サンバルカン』ではバルイーグルの中の人が前半で交代することがあったり、『秘密戦隊ゴレンジャー』でも役者の都合がうまくつかないことがあった。
『超電子バイオマン』なんて初代イエローフォーが失踪してしまうということがあって、仕方なく途中で殺して別の役者を用意するしかない。

『激走戦隊カーレンジャー』についても同様に、恭介たちが務めるペガサスの社長を演じている人が後半からめっきり出なくなったり、ホワイトレーサーの役者が交代している。
つまり、「役者がきちんと最後まで降板せずに出てくれる」、しかも1年という長丁場でそれができるという例は稀有であり、普通はどこかで都合がつかなくなるものだ。
本作はその点役者の降板が一切なく、青山親子も鈴子先生も、そしてここには出てないキャラクターもきちんと出ており、最終章まで含めて全てが完璧である。
高寺Pが本作を作る上で「内外の圧力に揺らがずに済む足腰の強い作品」を目指したとのことだが、まさにそれが一番出ているのは役者が全員揃っていることだ。

今回だって鈴子先生と青山親子の中の人のいずれかが抜けていたら成立しないし、セミレギュラーだからこそできる話というのができなかったはずだ。
実際、前作「メガレンジャー」も役者の降板はなかったものの、「セミレギュラー枠だからこそできる話」というのがあまりなかった。
決して小林靖子だけがすごいわけじゃない、いろんなスタッフ・キャストの総合力がバッチリ噛み合っているからこその賜物なのである。

総合評価はB(良作)100点満点中75点、息抜き回としては今までで一番クオリティが高いかもしれない。

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