長寿化が自民独り勝ちをもたらす――年齢による革新の方向性分裂という避けられない問題

年代別支持構造の基礎的整理

石破時代以降、各種メディアや調査機関が実施する支持政党の世論調査(例:NHKTBS)では、年代別の分布にはおおむね共通したパターンが確認されることが多い。調査時期や手法、設問形式の違いによって細かな数値の上下は生じるものの、この後述べる大枠の傾向は、複数の調査で繰り返し観察される。

1. 全年代で自民党が最大勢力だが、過半数には遠い

まず最も目につくのは、すべての年代区分において自民党が単独で最大の支持割合を占めていることである。多少の上下はあるものの、どの年代でもおおむね3割前後で推移している。これは安定した支持基盤があることを示す一方で、いずれの年代でも過半数にはまったく届いていないという事実も同時に示している。各年代において自民党は第一党ではあるが、有権者全体で見た時の多数派と呼べる水準には達していない。残りの約6〜7割は、他党支持または態度未定層で占められている。

2. どの年代でも「未決定・その他」が大きな塊を形成

次に重要なのが、「決めていない」「その他」といった態度保留層の大きさである。若年層では約3割、中間層でも4人に1人前後、高齢層でも約2割が特定の支持先を明確にしていない。態度保留を一つの“支持政党”とカウントすれば、自民党支持と比肩する第二党がこの態度保留層ということになる。特に18〜29歳では、自民党支持(30%)とほぼ態度保留はほぼ同規模に達する。

ここまでを大づかみにまとめると、年代を問わず自民党がおおむね3分の1前後、その他の政党支持が合計でおおむね3分の1前後、そして態度保留層がさらに3分の1前後という三分割に近い構造になっていることが分かるだろう。細部の比率は年代ごとに異なるが、「三極的に割れている」という全体像は共通している。

3. 野党支持層の支持政党は年代ごとに大きく異なる

大まかに三極的に割れているにもかかわらず自民党が第一党で政権交代も起きにくいのは、野党側支持層の支持政党が割れているからである。どの年代でも野党支持層は有権者プールの3分の1前後を占めるが、どの野党を支持しているかについて、年代によって大きく分かれる。

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NHK世論調査より

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TBS世論調査より

「現状変更」のジレンマ:世代ごとに異なる理想の着地点

野党を支持するという行為は、現状の政治体制や社会構造に対し、何らかの変革を求める意思表示に他ならない。しかし、その「変革の先に目指すべき到達点」が、支持者の年代によって決定的に異なっている。この構造的な乖離こそが、野党勢力が結集できない大きな要因である――これが私の仮説である。

野党側の支持政党が年齢によって分裂している様子は、橋本・金澤『新しいリベラル — 大規模調査から見えてきた「隠れた多数派」』公式解説)や、その下地になっている同書著者の研究「新しい中間層の可視化に向けて」からその潜在構造を伺うことができる。

価値観としてのリベラルと、政治勢力の乖離

意識調査において「自分はリベラルである」と自認する層は、決して減少しておらず、政治的リベラル勢力の衰退と、価値観としてのリベラリズムの退潮は一致していないと橋本らは主張する。全国規模の調査によれば、ジェンダー平等、格差縮小、環境保全などを政府に強く求める意識を持つ有権者は、全有権者の約3分の2という分厚い層として存在し続けている。これらのリベラルな政策を明確に拒否するトランプ支持層のような有権者は全体の3分の1程度であり、その中でも国家主義的であるコア保守層はわずか11%に過ぎない。

大まかにリベラル的政策を支持する3分の2の内部から、経済政策を重視する「中道保守・ライト保守層」を分離すると、残りは全有権者の16%を占める「旧リベラル」と、21%を占める「新しいリベラル」という、性質の異なる2つのグループに分けて考えることができる。両者は主に次の二点で対立する。

「弱者支援・高齢者重視」か「成長支援・子育て重視」か
旧リベラル:社会的弱者に対する事後的な所得再分配(福祉)を重視する。特に生活が不安定になりやすい高齢世代への手厚い保護を優先する傾向がある。
新しいリベラル:個人の潜在能力を伸ばすための社会的投資(教育、スキル習得支援等)を重視する。弱者支援であっても、それが自律的な成長に資する形であることを求め、次世代や子育て世代への投資をより重視する。

「戦後民主主義」へのコミットメント
旧リベラル:憲法9条の堅持、日米安保反対、天皇制への懐疑、従軍慰安婦問題への謝罪といった「反戦・戦後補償」的な論点をアイデンティティの根幹に置く。
新しいリベラル:これらのイデオロギー的論点には強く固執しない。より実務的かつ生活実感を伴う政策、あるいは将来の生活基盤に関心を持つ。

この二点の違いだけで投票先が変わるのか、という疑問は当然生じる。しかし「新しいリベラル」層はこの点を強く重視するゆえに別の層となる。特に安保政策に関してはロシアのウクライナ侵攻で9条護憲的な発想は説得力を失っており、「旧リベラル」の勢力拡大を阻む要因の一つとなっていると考えられる。さらに、「新しいリベラル」層では、「政治への影響力行使が高齢者に偏っているのではないか」「高齢者を優遇する政策ばかりが優先されているのではないか」といったシルバーデモクラシー認識が、旧リベラル層の約2倍に達しており、全有権者の中でも特に高齢者との違いを意識しているグループに分類されるほどで、老人福祉か子育てかという対立を重視していることが伺える。

自民党による取り込みと国民民主党の台頭

安倍政権の長期化は、この「新しいリベラル」層のニーズを事実上取り込んできたことに起因すると考えられる。安倍元首相の逝去に際し、ヒラリー・クリントンが「女性活躍の守護者」と称えポール・クルーグマンが「経済左派だった」と評したことは象徴的で、データの裏付けもあることを以前に書いたが、橋本の調査データ(2022年)でも、左派的政策の評価において自民党が立憲民主党を上回る逆転現象が起きている。

自由民主党 立憲民主党
経済的弱者の味方 15% 10%
子育て支援に積極的 14% 9%
女性や少数者支援に積極的 9% 8%

なお同じアンケートでは「外交や安全保障の問題で信頼できる」との評価は自民党46%に対し立憲民主党3%と大差がついており、護憲派的な安保観を維持して政権を取るのはもはや至難の業に近いと思われ、立憲民主党が護憲派政策を捨てる踏み絵をして中道改革連合に衣替えしたことから護憲派層が共産党・れいわ・社民党などに流れるとも思われていたところ、2026年の選挙ではこれら3党も議席を減らすという予想が報道各社から出ている。

橋本らによるこの調査から3年が経過し、とりわけ石破体制で自民党からの支持離れが進んでいた最中、安全保障政策で明確な護憲路線を取らない国民民主党が、安保観が合致する「新しいリベラル」の受け皿として急速に支持を伸ばし、結果的に子育て世代の野党第一党になったというのが筆者の見立てである。

立憲民主党自身は労組を支持基盤に持ち働く世代を軽視すると明言したことはない。しかし「野党共闘」の時期に、高齢者中心の旧リベラル的護憲派イメージを強く打ち出しすぎたこと、そして現有支持層たる高齢者の声を反映し続ける中で、結果として子育て世代を中心とする「新しいリベラル」との間に感覚的なずれが生じている可能性は否定できない。

高齢化による二大政党制の破算、という仮説

現状維持という強固な一枚岩:自民党

改革を志向する野党支持層は、「どこを目指して現状を変えるか」という到達点の違いによって、「旧リベラル」の立憲・共産、「新しいリベラル」や「ライト保守」を取り込む維新や国民民主へと分散してしまう。これに対し、「現状の方針で問題ない」「急激な変化はリスクである」と考える現状維持志向の層は、政権与党である自民党とその周辺の保守勢力に集約される。どこにも向かわないのであれば、内部で進路をめぐって対立する必要がないのである。これが2009年の政権交代を経た後、政権交代が1回に留まり自民党が安定を取り戻した理由ではないかと私は見ている。

生まれてすぐに崩壊した二大政党制

最初に述べた通り、現在の政党支持構造を大まかに見れば、自民党(保守)、野党(現状変更派)、態度保留層がそれぞれ約3分の1ずつ拮抗する形となっている。この数値だけを見れば、かつて小沢一郎が構想したような二大政党制、あるいは政権交代が常態化する政治状況が実現してもおかしくないはずであった。事実、20世紀末から21世紀初頭にかけて、55年体制を支えた世代である自民党固定支持層が寿命を迎え、世代交代が進んだことで、2009年の政権交代を可能にするだけの均衡が一時的に生まれた。安倍時代の「野党を結集すれば戦える」という発想も故無きものであっただろう。

私の仮説では――その計算を狂わせたのは長寿化であった。人生100年時代と言われるほどの長寿化は、有権者の年齢幅を広げすぎた。その結果、改革を求めるエネルギーが「高齢者のための現状変更」と「現役・次世代のための現状変更」に引き裂かれ、一本化できなくなってしまったのだ。「好みの音楽は青春時代に聞いていたもので一生固定される」等とも言われるが、そういった《育った年代による空気感、思考の根底をなす常識》についても、寿命が延びて青春時代が離れるごとに分離し、肌感覚が統一不可能になっていく。かくして長寿社会が革新勢力の結集不可能性をもたらし、変えようとしない保守だけが一体性を維持したまま、二大政党制が「破算」してしまった――というのが現状なのではないかと考えている。

もちろん、これは自民党が永久政権を取るとか独裁するという意味ではない。現に直近の石破政権時代は選挙で劣勢であり続け、前門の両民主党、後門の参政党という状況に追い込まれている。多党化という形で細かい受け皿が作られ、自民党が好き勝手しても選挙で勝ち続けるということはあり得ない。少なくとも過半数、可能なら安定多数が確保できるまで、有権者の意見を集約できなければならない。また経済運営でしくじるなどして改革派が多数派となれば保守への回帰傾向という今回の議論も成り立たないだろう。

しかしそれでも、その過半数、安定多数を集めるためのバランスのとりやすさという点において、向かう方向が世代によって異なる革新よりも、どこにも向かわない保守のほうがやりやすく、放っておけば中道保守政党に政権が戻ってくる環境にあるのではないか、というのが私の意見である。

(2026/02/04)