欧州

2025.05.15 08:00

英国「オンライン安全法」をウィキペディアが提訴、「編集者を危険にさらす」と反発

Robert Way / Shutterstock.com

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Wikipedia(ウィキペディア)を運営する非営利団体「ウィキメディア財団」は5月8日、英国の「オンライン安全法」が同サイトのボランティア編集者のプライバシーと安全を脅かす可能性があるとして、法的異議申し立てを行った。

英国ではインターネットにおける子どもの安全を保護することなどを目的としたオンライン安全法が2023年に成立し、同年から段階的に施行されているが、同財団は主にこの法律の適用対象のサービスの分類方法をめぐって異議を唱えている。

フェイスブックやX(旧ツイッター)、YouTubeなどの大手のSNSは、すでに最も厳格な義務を課される「カテゴリー1」に指定されているが、ウィキメディア財団は、Wikipediaがここに分類された場合に、ユーザーの本人確認や有害コンテンツの迅速な削除、年齢確認などを強制されることを懸念している。

「もしもWikipediaがカテゴリー1に指定されれば、我々はユーザーの編集に介入せざるを得なくなり、オンラインの安全性をかえって損なう結果となる。このような措置は、ボランティア編集者のプライバシーと安全を損ない、サイトが荒らしの標的になるリスクを高めることになる」とウィキメディア財団の主任法務顧問のフィル・ブラッドリー=シュミーグは述べている。

「私たちは、Wikipediaのボランティア編集者を保護し、自由な知識へのアクセスとその信頼性を守るために立ち上がった」と同氏は主張している。

カテゴリー1に指定された場合、ウィキメディア財団はWikipediaユーザーの身元確認を行うか、あるいは確認を受けていないユーザーの編集をほかのユーザーが拒否できるようにする必要がある。同財団は、この仕組みが導入されれば、世界中のあらゆるボランティアが本人確認を受けない限り、荒らしや誤情報、悪質な投稿が放置されかねないと主張している。

さらに、ユーザーが個人情報の流出やストーキング、ハラスメント訴訟、あるいは権威主義的な国家による投獄といったリスクにさらされる可能性もあると同財団は述べている。

次ページ > カテゴリー1指定に該当する基準の明確化

編集=上田裕資

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2024.05.11 16:00

英当局がSNSの監視を強化、「子供へのレコメンド」も規制対象に

Shutterstock.com

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英国の通信・放送分野の規制機関のOfcomは米国時間5月8日、ソーシャルメディア企業に対し、有害コンテンツを子どもに推奨するアルゴリズムを止め、以前よりも強固な年齢チェックを導入しなければならないと警告した。

Ofcomは、オンライン安全法に基づき、子どもたちを保護するための40以上の対策案を発表した。

これらの対策案には、子どもがサイトやアプリそのものにアクセスできなくする可能性も盛り込まれており、ユーザーにパーソナライズされたレコメンドを提供するアルゴリズムを用いたシステムについても、新たなルールが設けられる。レコメンドを使用するサービスは、子どもたちのフィードから最も有害なコンテンツをフィルタリングし、その他の有害なコンテンツを目につきにくくする必要がある。

ソーシャルメディア企業はまた、コンテンツの監視の仕組みを改善しなければならない。その詳細は、明らかにされていないが、子どもにとって有害なコンテンツに対しては、迅速な対応が求められる。大手検索サービスは、ユーザーが子どもだと思われる場合に、「オフにできないセーフサーチ設定」を導入し、最も有害なコンテンツをフィルタリングしなければならない。

「プラットフォームは、若者が実社会で経験するような年齢チェックを導入し、オンライン上で有害なコンテンツを提供するアルゴリズムに対処しなければならない」と、英国の科学・イノベーション・技術大臣のミシェル・ドネランは述べた。

この規制は、以前からソーシャルメディア企業への規制強化を求めていた全英児童虐待防止協会(NSPCC)からも歓迎されている。同協会のピーター・ワンレスCEOは、「オンライン安全法と効果的な規制の両方が、子どもたちが安全にオンラインの世界にアクセスし、探索できるようにするための取り組みで極めて重要な役割を担っている」と述べている。

しかし、過去にオンラインでのトラブルが原因で死亡した2人の子どもの両親たちは、協議の欠如と変化のペースの遅さに、自分たちが「軽んじられている」と感じたとスカイニュースに語った。一方、デジタル権利運動家も満足しておらず、表現の自由を推進する団体のオープン・ライツ・グループは、この提案は言論の自由とセキュリティの両方を脅かすと警告している。

同団体のエグゼクティブ・ディレクターのジム・キロックは、「大人たちは、コンテンツにアクセスしないことで、彼ら自身の表現の自由を制限するか、データ漏洩やフィッシングサイトから生じるセキュリティリスクの増大に身をさらすか、という選択を迫られることになる」と述べている。

「また、海外のプロバイダーのなかには、このような厳しい措置に従うくらいなら、英国からのアクセスを全て遮断するところもあるだろう」と彼は続けた。

キロックはさらに、「セクシュアリティや性自認、ドラッグなどのデリケートなトピックに関連する教育的な素材も拒否される可能性も懸念している」と付け加えた。

Ofcomによれば、この対策案に関する協議は7月17日まで実施され、最終的な声明と文書は来年春に発表される予定という。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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2023.09.23 09:30

英国の「子供をネットから守る法律」が非難される理由

英国のミシェル・ドネラン技術長官(Photo by Dan Kitwood/Getty Images)

英国のミシェル・ドネラン技術長官(Photo by Dan Kitwood/Getty Images)

英国議会は9月19日、インターネット上の有害コンテンツを取り締まるオンライン安全法案(Online Safety Bill)を下院で可決させた。この法案は、児童の性的虐待コンテンツ(CSAM)などの有害コンテンツを規制するために提案され、約2年間をかけ審議が進められてきたものだ。

英国情報通信庁(Ofcom)によって施行されるこの法案は、違法なコンテンツを削除し、未成年の子どもが有害なものを目にするのを防ぐことを求めている。

「私たちの常識的なアプローチは、オフラインで違法なものはオンラインでも違法であることを明確にするものだ」とミシェル・ドネラン技術長官は述べている。

この法案は、違反した企業に最大で全世界の年間売上高の10%の制裁金を科す可能性がある厳しい内容で、さまざまな企業から反発を受けている。特に議論を呼んでいるのが、利用者のプライベートなメッセージに有害コンテンツが含まれていないかどうかの監視を、アプリの運営元に義務付け、違反した場合は巨額の罰金を科すという点だ。

英国の消費者団体Which?や、児童虐待防止協会(NSPCC)などは、この法案を歓迎しているが、WhatsApp(ワッツアップ)やSignal(シグナル)などの暗号化チャットアプリの運営元は4月にこの法案を早急に見直すよう求める書簡を発表していた。彼らが特に問題視しているのは、この法案がエンド・ツー・エンドの暗号化を破り、人々の個人的なメッセージを無差別に監視する道を開くことになるという点だ。

「英国政府は、個人的なメッセージすべてを安全にスキャンすることは不可能だと認めたが、将来的にテック企業にそれを強制する権限をOfcomに与えた」と、プライバシーと表現の自由を擁護する団体のオープン・ライツ・グループ(ORG)のキャンペーン・マネージャーのジェームズ・ベイカーは述べている。

「この法案は、ジャーナリストや内部告発者、DV被害者らに害を及ぼす可能性がある」と彼は主張している。

一方、電子フロンティア財団は「規制当局が、暗号化されたサービスに危険なバックドアを作ることを要求する権利を主張するなら、我々は暗号化されたメッセージングサービスが英国から撤退することを期待する」と述べている。

WhatsAppの責任者のウィル・キャスカートは7日のX(旧ツイッター)の投稿で「WhatsAppは決して暗号化を解除しないし、そのような脅威に対して警戒を怠らない」と主張していた。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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