PFAS上昇「因果関係」の説明に食い違い TSMC進出後の河川水
台湾積体電路製造(TSMC)工場の進出後、熊本市の河川水に含まれる有機フッ素化合物(総称PFAS)の濃度上昇が確認された問題で、熊本県と菊陽町が、工場稼働との因果関係を「不明」とする説明を続けている。専門家による委員会は、因果関係を認める説明をしている。周辺住民の不安解消に向け、より積極的な対応を求める声も出ている。
工場が立地する菊陽町が3月29日に住民向けに開いた「半導体・地下水セミナー」。PFASの濃度上昇への対応について、参加者がTSMCの担当者に質問すると、小牧裕明副町長が代わりに回答した。「因果関係がまだよく分かっていない。因果関係は、県で対応を検討している」
その2日後。PFAS類の使用中止を要請するよう申し入れた共産党県委員会に対し、県の担当者が「濃度上昇とTSMC工場の因果関係は、あるともないとも言えない」との説明を繰り返した。
だが、こうした説明は、県の環境モニタリング委員会が示した認識と食い違う。3月26日の会合後、委員長を務める篠原亮太・元県環境センター館長は「短期的には直接の影響がないレベルだ」としつつ、工場稼働との因果関係を認めた上で「排出量を少なくするよう企業側に求めるべきではないか」と述べた。別の委員も取材に「断定ではないが、TSMC工場の排水が原因だという認識で議論した」と明かした。
委員会は蒲島郁夫前知事時代の昨年2月、県がTSMC工場の稼働にともなう環境への影響を調べるために発足。環境調査や化学物質、健康リスク、半導体など各分野の専門家6人で構成する。県は委員会の知見を元に河川や地下水、大気などの調査を続け、データを委員会に提供してきた。
今回、濃度上昇が確認された物質のうち、坪井川で検出されたPFBSは1リットルあたり59ナノグラムで、昨年春までの約1年間の平均に比べて濃度が8・55倍になった。これまで未検出だったPFBAも同15ナノグラム検出された。数値の変化は、昨年2月に工場が完成し、年末に量産をはじめたTSMC工場の動きと符合している。
この2物質とPFPeSを加えたPFAS3種は法令上の規制や基準がないものの、TSMC側が自ら使用を公表している。一方で県は、周辺の他工場が、同じ物質を使っているかどうかは調べていないといい、濃度上昇とTSMC工場の因果関係を今後、具体的に検証するかは未定だという。
共産党県委員会の松岡勝委員長は県への申し入れで、「国任せではなく、県の条例改正で排出を規制すべきだ。(原因が特定できないことを理由に排水を止めなかった)水俣病の教訓にたって、予防的な環境行政をすべき時ではないか」と述べた。