25年の農産品輸出1.7兆円、緑茶やブリ伸びる 政府目標は未達
農林水産省は3日、2025年の農林水産物・食品の輸出額が1兆7005億円になったと発表した。前年に比べ12.8%伸び、13年連続で過去最高を更新した。緑茶や牛肉、ブリなどが大きく伸びた。政府が掲げる25年目標の2兆円には届かなかった。
農産物は12.1%増の1兆1008億円、丸太などの林産物が10.1%増の735億円、水産物が17.2%増の4231億円だった。
輸出額上位10カ国・地域は全てで前年比プラスとなり、中国と香港以外は過去最高だった。トップの米国は13.7%増の2762億円だった。トランプ政権による相互関税は4月に発動されたが、米国内で人気の高い緑茶や和牛の根強い需要があった。韓国やタイが2割増、ベトナムも1割増えた。
国・地域別の輸出額で4位の中国は7.0%増の1799億円だった。ニシキゴイやビールが伸びた。他方、12月単月でみると2.2%減だった。中国政府は25年11月、日本産水産物の輸入を事実上停止した。
12月の対中輸出の減少について農水省の担当者は「中国の春節(旧正月)時期が昨年より遅れるため、需要時期に変化があった」と説明した。日中関係の緊張について「26年の輸出額にどれほど影響が出てくるか不透明だ」とする。
輸出額を品目別にみると、欧米や東南アジア諸国連合(ASEAN)で人気が高い緑茶が98.2%増の721億円で大きく伸びた。スイーツなどに活用する粉末状に加工した緑茶のニーズが高まった。
抹茶専門店をアジアや中東などで55店展開するTHE MATCHA TOKYO(東京・渋谷)の長田昌宏社長は「日本の高品質な抹茶は健康的で新しい文化体験として人気が広がっている」と話す。
水産物の輸出額は初めて4000億円台を突破した。すしなどの和食人気が高まり、高級水産物が海外で好調だった。
ホタテ貝の輸出額は906億円と3割伸びた。主な産地である北海道や青森県では高水温や貝の餌不足で生産量が減少したものの、単価が2倍になったことで減産分をカバーした。「海外からの需要増で国内にまわすホタテが足りない」(北海道の漁業者)のが実情という。
ホタテに続き輸出額が大きいブリは27.4%増の528億円だった。脂のりがよく、すしのネタとしても人気が高いため、欧米やアジア、中東などへ販路が拡大した。サンマやサバは缶詰用として加工地のタイやベトナム向け輸出が伸びた。
カキは42億円と12.2%減った。瀬戸内海の高水温などで貝が大量死し「輸出どころではない」(広島県の養殖業者)状況となった。カキは成長するまで2年ほどかかるため、復活には時間がかかる可能性がある。
農林水産物の輸出は気候変動の影響も受けやすい。台湾などで好まれる見栄えの良い大玉の商品が十分確保できず、りんごは28.6%減の144億円だった。
政府は農林水産物・食品の輸出額を30年までに5兆円に引き上げる目標を掲げる。鈴木憲和農相は3日の記者会見で、25年目標が未達成となった要因について「特定の国・地域に依存する輸出体制や現地系商流への売り込みが不十分だった」と課題を述べた。
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(更新)- 大泉一貫宮城大学 名誉教授ひとこと解説
粉末緑茶が輸出の目玉になってきた。新しいニーズを掘り起こしている。水産物ではホタテが伸びているのがすばらしい。中国の輸入禁止以降輸出先を多角化した結果が出ている。不漁でも輸出に回したため国内へ回す量が足りない状況だが、一次産業は輸出で伸びていくのを基本にした方が成長産業になりやすい。ただ不漁対策・気候変動対策は必須だろう。コンスタントな供給ができない輸出産業はないからだ。 また、ホタテの輸出先多角化も良い教訓になる。コメも中国には輸出できないが、それでも「パックご飯」や緑茶に倣って米粉にすれば、輸出先は多様に出てくると思う。
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