トランプ米大統領は1月下旬、第2次政権発足から1年に合わせ「実績」を列挙した365項目のリストを公表した。この中で、不法移民対策や、貿易赤字の削減、温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱表明などを挙げた。11月に中間選挙を控える中、NSS(国家安全保障戦略)、NDS(国家防衛戦略)を打ち出す米国は26年にどこへ向かうのか。
昨年12月に公表されたNSSは安全保障に関する最上位の戦略文書だ。「米国第一」を軸に、西半球(南北米大陸)を最優先する姿勢を明確にした。中国やロシアへの強い批判は避けている一方、台湾海峡をめぐっては「一方的な現状変更は支持しない」とし、第1列島線(日本列島から台湾、フィリピンを結ぶ防衛ライン)の防衛で、日本や韓国などの防衛費負担の増加を促している。
欧州については、基本的には不関与で、欧州・ロシア間の戦略的安定の回復と、自立した欧州による北大西洋条約機構(NATO)同盟の持続性確保を求めている。これがドンロー主義といわれる。
1月23日に公表されたNDSは、優先項目として西半球を含む本土防衛、対中抑止、同盟国・パートナーの負担増、米国の防衛産業基盤強化の四つに触れている。中国については「19世紀以降、米国に対して相対的な国力では最も強力な国家」と定義し、「体制変更や存亡をかけた闘争は求めない」とした。その上で、「第1列島線」に沿って「強力な防衛体制を構築する」とし、日本を含む全ての同盟国に国防費を国内総生産(GDP)比で5%まで引き上げるよう求める方針を明記した。
NATOについては、「欧州の同盟国が欧州防衛の主たる責任を負う強力な立場にある」とし、「ウクライナ戦争の終結も、何よりもまずは欧州に責任がある」と米国の関与を弱める姿勢だ。
この方針に基づき、今年に入ってベネズエラ作戦が行われ、グリーンランド「領有」を狙い、キューバ政権転覆を画策しているとされる。ウクライナは欧州に任せるだろう。
その延長線上でカナダの「第51番目の州」、メキシコへの圧力も議論されるはずだ。同時に、日本にも国防費をGDP比5%まで引き上げよとの圧力が高まる。しかし、日本はこれをピンチではなくチャンスと捉えるべきだ。3月に予定されている日米首脳会談では、第7艦隊のシェアリングでも提案したら面白い。
(たかはし・よういち=嘉悦大教授)