たかくらかずき展「キャラクターはことば」会場風景 Photo: Takashi Kawashima
埼玉のハイパーミュージアム飯能で、たかくらかずき展「キャラクターはことば」が3月1日まで開催されている。
会場内には、東洋思想にインスピレーションを受け、たかくらによって生み出された数々のキャラクターが集結し、来場者が実際にプレイすることができるゲーム作品も複数展示。入口には鳥居が設けられ、中央には巨大な立体作品《ハイパーマン》が鎮座して、「ハイパーゼロイチ音頭」と題された音楽が流れるなど、デジタルとリアルが交錯する祝祭的な空間が立ち上がっている。
ここで掲げられている「キャラクターはことば」というフレーズは何を意味するのか。北出栞が本展をレビューする。【Tokyo Art Beat】
そしてこのループ的=ノンリニアな時間という論点は、本展の目玉であるビデオゲーム、並びに映像作品において駆使されている、AI技術の本質にも通じている。
会期前半に展示されていた、たかくらの最新ゲーム作品『悟遊戯 OHENRO 88』は、ポストアポカリプス世界で主人公のロボットが冒険をしながら人間の遺した「仏NFT」をインストールして進化し、悟りを得るまでの物語が描かれるアクションRPGだ。現在は体験版のみが公開されており、筆者が会場を訪れた際にも途中までしかプレイすることができなかったのだが、最後にフェードアウトしていく画面に流れた「リアルな輪廻がはじまるよ」というテキストが印象に残った。
これはプレイヤーがゲームを終えて日常に回帰していくことのメタファーでありながら、完成版に向けて今後ブラッシュアップしていきますよ、というメタ的な宣言とも取れる。プレイヤーから見た体験の反復性だけでなく、バージョン違いが作成されたり、アップデートが繰り返されたりしていくといったメディア自体の性質においても、ゲームは「完成」という終点に向かって制作を進めるリニアな時間感覚に基づいた作品モデルとは異なる、ループ的な時間感覚に基づいた作品モデルを提示する。「体験」の唯一性と「複製」の反復性を同居させるこの性質は、「デジタル」に本来秘められた最大のポテンシャルであると言えるだろう。
そして、このようなループ的=ノンリニアな時間モデルは、生成AI時代の「ことば」という論点とも関わってくる。AIは人間とは異なり、時間をかけた「解釈」のプロセスを必要とせず、言葉の意味を広大な空間内の「位置関係」として一挙に把握することができる。ユーザーインターフェース上の出力は一文字ずつ漸次的に行われるが、その背後にある計算のプロセスに、「過去‐現在‐未来」というリニアな時間構造は存在しない。「空間」という言い方が便宜的にされているけれども、もちろん物理的な空間を内包しているわけでもない。
本展が前提としているのは、そんな「時間」も「空間」もない……すなわち身体を持たない存在である「キャラクター=ことば」こそが主であるポストヒューマン的な世界だ。そして現在、その世界は生成AIツールの普及によって、私たちのすぐ隣にあるものとして可視化されている。たかくらの行う展示、それは「人間の世界」とAIやキャラクターの住まう「非人間の世界」を、境界面において隣り合わせる儀式なのだと言えるだろう。