薬をよく飲む先生 後編
3周年おめでとおおおおおおおおおおおおおおおおおお
ということでこれ↓の後編です
novel/21203834
うん、やっぱり曇らせはハッピーエンドで終わらせなきゃね!ちなみにこの後の先生はたまーに症状が出ます。
後遺症がないと言ったな、あれは嘘だ。みんなはセカンドオピニオンしっかりとるんだぞ!
いいねやフォロー、コメントは私の体によく馴染むぅ!実に馴染むぞぉ!
してくれた方にはアロナが紫封筒持ってきます(なお中身はペロロ様☆3)
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あれから1週間が経った。
病室にはシャーレの執務室からPCや書類といったもの持ってきて、先生はしばらくベットの上で仕事をすることになった。
救護騎士団の生徒が作ってくれる病院食はとても美味しく、それに消毒液の香る雰囲気が不思議と心地よく、連邦生徒会も配慮してくれていることもあり、滞っていた業務もすいすい進んだ。
改めて、生徒に支えられていることを痛感する。
「先生、そろそろ『休憩』にしましょう!」
ユウカはあの日以来、毎日病室に来るようになった。
最初は彼女も、先生がこの環境で業務を続けることに否定的だったが、何だかんだ手伝ってくれるようになっていた。ミレニアムとトリニティ間を先生のために通っていることも鑑みると、とことん優しい生徒だということが分かる。
時計を見ると、その針はすでに16時を回っており、4時間ぶっ続けで作業していたと気づく。もう最近は寒くなっていて、すでに夕日が顔を隠そうとしていた。
”あぁ、そうしようか。…じゃあ、おいで?”
「はい!」
温もりを探すようにしっかりと抱き合う二人。
これはユウカが『ハグはオキシトシンが分泌されて、ストレス軽減になります!』といってから仕事の合間に習慣化されたものだった。
「ねぇ、先生。」
”どうしたの、ユウカ。”
「先生は今、幸せですか……?」
”…あぁ、すっごく幸せだよ。薬を飲んでいたあの頃とは比べ物にならないくらい。”
「そ、そうですか…えへへ」
事実、先生は自分が思うよりハグでストレスが軽減している。少し前の頃とは見違えるようだと、他の生徒にも頻繁に言われるほど、顔にもその変化は現れていた。
数分が経ち、ユウカは先生から物足りない様子で離れる。
「すいません、この後少しミレニアムで仕事があって……」
”うん、ありがとう、手伝ってくれて。それにハグも。”
「ふふっ…じゃあ、また明日ですね、先生!」
”ユウカまたね〜”
ぱたぱたと走る音が遠ざかる。
ユウカは学校を1ヶ月ほど休む代わりに業務にしっかりと務める、という約束をしているらしく、毎日このくらいの時間には帰ることになっている。
夜に誰も先生の元に居ないのは、先生にとっては僥倖だった。なぜなら…
”そろそろか…シッテムの箱の電源は切ったし…”
夜が更けるにつれ、どんどん先生の息が荒くなる。
”はぁはぁはぁ……ぐっ…が、”
”頭が…割れるっ……ふぅーっふぅーっ…”
最後にオーバードーズをしたあの日と同じこの時間帯は、薬の禁断症状と発作が起こるのだ。先生は生徒に弱い所を見せるのを良しとはしない。だから夜に一人なのは都合が良かった。
シーツを思いっきり噛み、今にも飛び出しそうな脳みそを押さえつける。長針がカチカチとなる度にその音が頭の中で重なりさらに先生を苦しめる。生徒達の顔を思い浮かべてみるが…
『…やっぱり大人なんか宛にするんじゃ無かった』
『よわよわで使い物になりませんね…マスコットにもなりません、ただのオブジェクトです!』
『あっは☆先生ってば、ほんとに惨めだね!』
『あぁ、こんなやつなど、あの時撃ち殺しておけばよかった。』
『今も昔もずっと…大人は、いやあなたが嫌いです。』
『身共には必要ない存在ですわ。失せてくださる?』
『……失望した。』
”ぐっ、あああ…生徒が……”
”私のっ!生徒が!そんなこと言うわけっ…ないだろうが………!”
何度も何度も、何度も何度も何度も、頭痛と同じかそれ以上の痛みになるまで自分の頭を殴りつける。
現実逃避だなんてヤワなものでは無い、まさに地獄から逃れようともがくもので。言うなれば、アリジゴクに落ちたアリ、クモの巣に捕まった虫、誰もいない海で溺れるようなそんな感覚だった。
握りしめた手の平からはいつの間にか血が滲んでいたが、それ以上に今は、心と鬱陶しい頭が痛い。
セリナが来ないようなるべく叫ばずに声を飲み込む。シッテムの箱を閉じたのもアロナとプラナを心配させない為と、あの子達ならまた生徒を呼んでくれると確信していたからであった。
短くて30分、長くて3時間。支給された抑制剤も、薬が馴染んでしまった体には効き目が薄く、暖簾に腕押しだ。
その時、ガラガラと閉めていたはずのドアが開く。
「食事の用意にまいりました。」
”み、ね?食事はまだ先だったはず…だけれど?”
上がった息を押し殺すが、それこそミネの前では暖簾に腕押しだということを先生はよく知っていた。だが、やるしか無かったのだ、それが今を足掻かない理由にはならないのだから。
「1週間の直接検診ということで、少し早めにまいりました。」
”な、なるほど。じゃあお盆を置いたらちょっと席を外してもらってもいいかな?少し着替えたくて。”
「…わかりました。しかし、着替えくらい手伝わせてください。」
”でも、”
「でももだってもありません!いいですから…」
お盆を置いたミネが先生の服を脱がそうと病院着に手をかけたかと思いきや、右羽で背中を支え、両手で先生の体を引き寄せる。天日干しした掛け布団のような朗らかな匂いが頭痛を紛らわしてくれる。
”なっ、ミネ、なにを”
「……どうして、そんなにお辛そうな顔をされるのですか?」
「いえ、理由は既に分かっています。あの薬の副作用でしょう。」
”!知ってたのか…”
「今は、無理に喋らなくていいです。この睡眠薬をお飲みください。」
”でも、体質的にあまり効かなくて…ね”
「そこは大丈夫です。先生の体にあったものを特注致しましたので、ゆっくりお休み下さい…」
差し出された錠剤と水を飲み、体を委ねる。
”ありが、と、ちょっと…ねむ、る……”
スヤスヤと寝息を立てる一人の大人がそこにあった。
ミネが先生の目元を擦ると隠されていた隈が現れる。それを見てまた、顔を顰めてしまう。
「先生…」
あの違法薬物の解剖が進み、副作用として禁断症状による幻覚や幻聴、激しい頭痛があると明かされたとき。
直ぐに、先生の世話をしていた後輩に話を聞きに行った。しかし、何故か後輩は頑なに語ろうとしない。しつこく聞いた末、やっとぽつりぽつりと話し始めた。
『初めて夜の配膳を先生に持って言った時…』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
”はぉ、はぁ…”
『せ、先生!?どうしたんですか!?』
酷く顔色が悪く、頭を掻きむしりながらベットの上でのたうち回っていた先生の姿がそこにあった。
お盆を置き、すぐに駆け寄って脈を測るととても早く、自分では手に負えないと理解する。
『す、すぐに、ミネ団長を呼んできます!』
”まって!!!”
駆け出そうとする自分の手がギュッと握りしめられる。そして、先生は切なさと辛さとがグチャグチャになった笑顔で絞り出すように
”誰にも……っ、いわ、ないで…!”
”経験上分かるんだ…これは、時期に治る…!だからっ……”
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「何がっ……大丈夫ですか……っ!」
経験上?ということは過去にもそういうことがあったということだ。先生のことだから故意に自分から溺れた訳では無いのだろう、つまり、誰かから強要されている可能性が高い。
自分は何も知らない。どうして彼はあんな辛く悲しく、それでいて優しい目を持っているのか。どれほどのものを彼は背負って生きているのか。彼が心から安らぐ日は来るのか。
私は彼を本当の意味で『救護』することが出来るのか。
自分は何も分からない。
「うっううぅ…うああああぁぁぁぁぁぁ……」
「こんなにもっ…好きなのに……!なにも出来やしない!!!」
「私はっ……わたしはぁ!」
ぼろぼろと涙が止まらない。想い人がずっと苦しんでいるのに何も出来ない、その不甲斐なさでいっぱいだった。
その時、ミネの頭に温かい何かが乗る。それを先生の手だと認識するのに少しばかり時間がかかった。慌てて確認するが、当の本人は未だに寝ている。
「あぁ……ありがとうございます。先生…」
「どこまでも貴方は、『先生』なんですね。なら、私は何時までも貴方を………」
先生はこれからも独りで抱え込むだろう、背負うだろう、それがどれだけ辛くとも。だから、私が彼の荷が軽くなるいや、無くなるまで『救護』し続けるのだ。たとえイバラの道だとしても、それは確かに未来へ繋がる道なのだから。
一人の少女が窓の外を流れる星を眺める。夜はもう二人のことを包みこんでいた。
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◾︎おまけ
「先生!退院おめでとうございます!」
”ありがとう、これもユウカのおかげだよ。心配かけてごめんね?”
「ほんとですよ!って、小言はもういいですよね。今日は仕事もないですし、イチャイチャしましょう!」
”え、なに?イチャイチャって?”
「え?」
「そういえば、約束したとき付き合うとは言ってない……」ブツブツ
”ゆ、ユウカさん?”
”あのー顔が真っ赤ですけど…さっきの言葉は……”
「えええええっとぉ!あの〜あれ!そう!その恋愛とかの準備と言いますか、練習と言いますか!」
「そうですよ、ユウカさんは仮初ですけど私は本命ですからね。」
”え、そんな話きいてな
「私と何度も夜を共にしたのですから、私だって少しくらいお願い事を聞いて欲しいですよ?」
はひ……”
「はっ、はぁぁぁあああああ!?!?」
「夜を共にしたって本当なんですか先生!!?」
”いや、まぁ…弱みを見せてしまったというかなんというか…”
「…私に迷惑かけましたよね……1ヶ月も通い妻のような事をしてまで……」
”ユウカ?ちょっと顔が怖いよ…?”
「私もずっとそばに居ると誓ったのです。それにあんなことまでして…だから、いいですよね?」
”ミネまで…あとまた知らない話が出てきたんだけど……”
「「先生?ちょっとお時間頂きますね?」」
”あ、あろなあああああああたすけてえええええええええ!”
『最近ずぅーーーっと構ってくれなかったので助けません!』
”嘘でしょ、プラナちゃんは……”
『…どうぞお幸せに。』
”アッ”
この後3人で仲良く()暮らしましたとさ。めでたしめでたし。