エプスタイン文書に浮上したノルウェー・ノーベル委員会関係者の名前 元委員長と現副委員長を含む波紋
性犯罪で起訴され勾留中に死亡した米富豪ジェフリー・エプスタイン氏に関する文書が追加公開された。なかにはノルウェーの著名人の名前が複数あり、騒動が広がっている。
元首相でノーベル委員会の元委員長、島への家族旅行を計画
トルビョルン・ヤーグラン氏は、ノルウェー元首相であり、ノーベル委員会の委員長を務めた人物だ。
公開された電子メールから、ヤーグラン氏と家族が、米領ヴァージン諸島にあるエプスタインの私有島への旅行を計画していたことが明らかになった。
この島は、エプスタインが起訴された虐待行為が行われた場所とされている。
やり取りは、エプスタインが未成年者への性的搾取で有罪判決を受けてから6年後に行われていた。旅行は中止されたものの、電子メールには具体的な計画内容が記されていた。
ヤーグラン氏はノルウェーのメディアに対し、「多くの人と接点を持つのは外交活動の一環だった。エプスタイン氏の私生活で明らかになった行為とは距離を置く」と説明している。
ストーレ現首相の労働党内から批判
エプスタインとのメールのやり取りが確認されたノルウェーの政治家・外交官であるテリエ・ロッド=ラーセン氏も、ノルウェー国内で強い批判を受けている。
同氏は労働党所属の政治家で、オスロ合意を主導した人物として知られる。文書からは、エプスタイン氏から多額の資金を受け取る予定だったことが明らかになった。
ロッド=ラーセン氏とヤーグラン元首相は、現在も労働党に所属しているが、今回の報道を受け、「労働党の価値観を反映していない」として、党内から除名を求める声が上がっている。
ノーベル委員会の現副委員長、極右政党の名前も
ノーベル平和賞の受賞者を選出するノルウェー・ノーベル委員会は、5人の委員からなる。委員はノルウェー国会の指名(つまり議席を多く持つ政党の推薦)によって選出されている。
アスレ・トイエ氏は、極右政党「進歩党」によって推薦されて、2008年よりノーベル委員会のメンバーを務めている。
着目されているのは、ジェフリー・エプスタインと、前述したテリエ・ロッド=ラーセンと思われる人物、そしてスティーブ・バノンの間で、2018年に交わされた複数のテキストメッセージだ。
進歩党の現党首であるシルヴィ・リストハウグ氏と元トランプ大統領顧問との会合を仲介したいとアスレ・トイエ氏が望んでいる。そのことをスティーブ・バノン氏に伝えるよう依頼しているかのように見える内容だ。
これについてトイエ氏も進歩党も、接触はなかったと否定している。
アスレ・トイエ氏と進歩党の深い関係
日本ではなじみが薄いが、トイエ氏と進歩党はいずれもノルウェーでは物議を醸す右派の重要な存在だ。
ノーベル委員会の委員は国会によって選出され、議会の勢力比を反映する形で各党が推薦する。トイエ氏は2008年以降、再選もしており、進歩党からの信頼が厚いことがうかがえる。
トイエ氏は国会議員ではないが、移民政策に懐疑的な論者として知られ、政界ではなく学術界における進歩党寄りの論客という立場で影響力を持ってきた。
減税や移民政策の厳格化を掲げる進歩党は、物価高や生活不安が広がる中で支持を伸ばし、現在は右派勢力で最大の議席数を有している。
無関係なら本人への負担は大きいが、なぜそれでも報道するのか
ほかにも世界経済フォーラムのCEOで、ノルウェー元外務大臣のボルゲ・ブレンデ氏の名前も文書にはある。本人はエプスタイン氏の経歴を調べずに交流していたことを謝罪している。
エプスタイン文書での実名報道は、無関係であるのなら大きな負担となる。
VG紙は「文書に関連して名前が挙げられることが負担になることは理解している。ジェフリー・エプスタインが告発されていた行為の重大性を踏まえ、エプスタインのネットワークと手法を明らかにすることには大きな公共的利益があると考える」と読者に説明している。
一連の流れはノルウェーにとってショッキングだが、ノルウェーのメッテ=マリット王太子妃とエプスタインとの親密なやり取りはさらに深刻性が高く報じられている。
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