活躍とは「組織の価値をつくっていくこと」
――30を超えるブランドを展開し、マルチブランド戦略で知られます。さらにいま、会社はアパレルにとどまらず、様々な業態を持つ「マルチカンパニー」への進化を目指しているそうですね。2024年には外食のゼットンも完全子会社化。事業領域が一段と広がり、知識、スキル、能力、経歴といった「深層のダイバーシティ」で、まさに多様な人材がグループに集まっています。そんなダイバーシティ経営の重要課題の一つが、女性の活躍推進だとか。「女性が活躍している状況」を、どう定義していますか。
福田会長 それぞれが、自分の置かれている時期、環境に応じて「組織の価値をつくっていくこと」。それが「活躍している状況」だと思うんです。
これは女性か男性かに関わらず、同じこと。もっと言えば、従業員か経営者かなどを問わず、企業を構成するメンバー全員に当てはまると思います。
1970年代、地域一番店巡りで受けたショック
――経営者にも当てはまると。
福田会長 そうです。少し迂遠(うえん)な話になりますが、そう思う理由をお話しします。
ぼくは大学卒業後、まずは百貨店に納品していた名古屋のアパレルメーカーに勤めました。そこで転勤の辞令が出そうになって、「これは辞められなくなる」と実家のある水戸に戻り、父が創業した(アダストリアの前身)福田屋洋服店に勤めた。
当時は文字通りの家業で、仕事の忙しさも売り上げも、名古屋の会社員時代とは比べものにならなかった。そこで、「(自社を)いかに次のステージに進めるべきか」と考え、2年間かけて沖縄を除く各地の地域一番店を見て歩きました。
人脈が広がるなど、そこで得たものも確かにあります。一方で、1970年代のこととはいえ、どの地域一番店にも30代以上の男性社員がいなかった。経験を積んで家族を養いながら働き続けている、といった社員を見かけなかったのです。あれは大きな驚きでしたね。
何を実現していくのか考える集団でありたい
――「一番大事なものはマンパワー」と説き、「なくてはならぬ人となれ」を企業理念に掲げるほど、「ヒト・モノ・カネ」のヒトに力点を置かれています。性差を問わず、人材の活躍を重視する背景には、1970年代に目の当たりにした、社員のキャリアが見えない「一番店巡りショック」の影響も大きいのですね。
福田会長 当時、流通業は近代化や合理化の遅れが指摘されていて、平たく言えば、産業として低い位置に見られがちだった。ぼく自身、大卒の社員を迎えたと思ったら、親御さんから文句を言われたことも(苦笑)。
それだけに、事業を通じて自分たちは何を実現していくのか、常に「組織の価値」を高めていけるように考える集団でありたい、との思いが強くあります。
ぼくにとって社員とは、一人ひとりが会社の利益を創出している責任者。
売れない店をつくっちゃったとすれば、それはこっちの責任です。売れない店に行かされたら大変だと思うし、(新たな試みが失敗するなど)「やっちゃったよ」というときもあるけれど、アダストリアに集まった人には性差なく力を発揮してもらって、さらに「組織の価値」を高めていってほしい。そう思っています。
女性活躍度の目安「発言をきちっとできる状態にある」
――仕事ぶりなどで「女性が活躍している」と思えるような目安はありますか。
福田会長 (女性が)発言をきちっとできる状態にあるということですね。
――それは会議の場で?
福田会長 とは限らないです。職場での何気ないやりとりも含めて、です。
あのう、とてもすべては回りきれないけれど、ぼくはいまも、たまに店を見て回るんです。フラっと寄った店で話しかけることも。そんな場面も含めたイメージです。
――「発言をきちっとできる状態」を仮に女性活躍度指数とすると、アダストリアはどうですか。
福田会長 いまでもまだ、ちょっと黙っちゃう場合が多いように感じます。それは何なのかなぁと考えています。
――2022年3月から、職位などの要件で出席者が男性だけとなっていた「経営会議」に女性も参加するようになったそうですね。女性の参加者は毎年入れ替わるそうですが、彼女たちの意見で新たな視点の獲得はありましたか。
福田会長 まだシーンとしちゃってますね(苦笑)。その場では(意見が)出ない。
店でも、いろんなことを率直にぼくに話してくれる方もいますが、構えちゃって「ちょっと……」という方も。それでも、多くの人は、いろんなことにすぐに対応してくれます。うちの場合、みんな、「コミュニケーションを取ろう」と努力してくれている感じはします。
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