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女性活躍の壁「男が男を引き上げる」 アパレル大手会長

「グローバルワーク」などのアダストリア会長、福田三千男氏に聞く

多様性時代の上司力
アダストリア会長の福田三千男氏
「グローバルワーク」「ニコアンド」などを展開するアパレル大手、アダストリアは女性管理職比率が3割を超えている。だが、正社員の7割超は女性とあって、さらなる高みを目指す。部長級以上の上級管理職で女性比率を3割に、というのが目下の目標だ。「やらされ感」のない女性の活躍推進、その肝は何か。家業を事業へ、4度のビジネスモデル変革を経ながら、父が創業した紳士服店を国内だけで1300店以上展開する一大カジュアルファッションチェーンに育て上げた、実質的な創業者、福田三千男会長に聞いた。

活躍とは「組織の価値をつくっていくこと」

ふくだ・みちお 1969年3月同志社大学商学部卒。アパレルメーカー勤務を経て1971年5月、福田屋洋服店(現アダストリア)入社。1993年社長に就任し、社名を「ポイント」に(社名は2015年6月に「アダストリア」に変更)。2004年に会長就任。2010年に社長兼務。2018年から2度目の会長兼社長に。2021年5月から現職

――30を超えるブランドを展開し、マルチブランド戦略で知られます。さらにいま、会社はアパレルにとどまらず、様々な業態を持つ「マルチカンパニー」への進化を目指しているそうですね。2024年には外食のゼットンも完全子会社化。事業領域が一段と広がり、知識、スキル、能力、経歴といった「深層のダイバーシティ」で、まさに多様な人材がグループに集まっています。そんなダイバーシティ経営の重要課題の一つが、女性の活躍推進だとか。「女性が活躍している状況」を、どう定義していますか。

福田会長 それぞれが、自分の置かれている時期、環境に応じて「組織の価値をつくっていくこと」。それが「活躍している状況」だと思うんです。

これは女性か男性かに関わらず、同じこと。もっと言えば、従業員か経営者かなどを問わず、企業を構成するメンバー全員に当てはまると思います。

1970年代、地域一番店巡りで受けたショック

――経営者にも当てはまると。

福田会長 そうです。少し迂遠(うえん)な話になりますが、そう思う理由をお話しします。

ぼくは大学卒業後、まずは百貨店に納品していた名古屋のアパレルメーカーに勤めました。そこで転勤の辞令が出そうになって、「これは辞められなくなる」と実家のある水戸に戻り、父が創業した(アダストリアの前身)福田屋洋服店に勤めた。

当時は文字通りの家業で、仕事の忙しさも売り上げも、名古屋の会社員時代とは比べものにならなかった。そこで、「(自社を)いかに次のステージに進めるべきか」と考え、2年間かけて沖縄を除く各地の地域一番店を見て歩きました。

人脈が広がるなど、そこで得たものも確かにあります。一方で、1970年代のこととはいえ、どの地域一番店にも30代以上の男性社員がいなかった。経験を積んで家族を養いながら働き続けている、といった社員を見かけなかったのです。あれは大きな驚きでしたね。

何を実現していくのか考える集団でありたい

アダストリアの企業理念は「なくてはならぬ人となれ なくてはならぬ企業であれ」。「上の句」となる「なくてはならぬ人となれ」は家業が忙しく、学業を中断せざるを得なかった父が、恩師から言われた言葉を基にして常日頃、説いていた文言という。「おやじの信念だった」

――「一番大事なものはマンパワー」と説き、「なくてはならぬ人となれ」を企業理念に掲げるほど、「ヒト・モノ・カネ」のヒトに力点を置かれています。性差を問わず、人材の活躍を重視する背景には、1970年代に目の当たりにした、社員のキャリアが見えない「一番店巡りショック」の影響も大きいのですね。

福田会長 当時、流通業は近代化や合理化の遅れが指摘されていて、平たく言えば、産業として低い位置に見られがちだった。ぼく自身、大卒の社員を迎えたと思ったら、親御さんから文句を言われたことも(苦笑)。

それだけに、事業を通じて自分たちは何を実現していくのか、常に「組織の価値」を高めていけるように考える集団でありたい、との思いが強くあります。

ぼくにとって社員とは、一人ひとりが会社の利益を創出している責任者。

売れない店をつくっちゃったとすれば、それはこっちの責任です。売れない店に行かされたら大変だと思うし、(新たな試みが失敗するなど)「やっちゃったよ」というときもあるけれど、アダストリアに集まった人には性差なく力を発揮してもらって、さらに「組織の価値」を高めていってほしい。そう思っています。

女性活躍度の目安「発言をきちっとできる状態にある」 

いまも時折、自社チェーンの店舗をふらっと訪れる。その際は「20分も居れば、その店がうまくいっているのかどうか大体分かる」と言う。「店が『醸し出すもの』ってあるんですよ、不思議なことに。例えば、きれいに整理されていてもね、『あ、整理され過ぎでこれは危ないな、売れてないな』って思うとかね」。写真は2025年2月、都内の渋谷ヒカリエにある本社で開かれていた、インテリア雑貨、テーブルウエア、ファッション商品などを扱うライフスタイルブランド「ジョージズ」の展示会での1コマ。この日も気さくに社員らに言葉をかけ、対話していた。

――仕事ぶりなどで「女性が活躍している」と思えるような目安はありますか。

福田会長 (女性が)発言をきちっとできる状態にあるということですね。

――それは会議の場で?

福田会長 とは限らないです。職場での何気ないやりとりも含めて、です。

あのう、とてもすべては回りきれないけれど、ぼくはいまも、たまに店を見て回るんです。フラっと寄った店で話しかけることも。そんな場面も含めたイメージです。

――「発言をきちっとできる状態」を仮に女性活躍度指数とすると、アダストリアはどうですか。

福田会長 いまでもまだ、ちょっと黙っちゃう場合が多いように感じます。それは何なのかなぁと考えています。

――2022年3月から、職位などの要件で出席者が男性だけとなっていた「経営会議」に女性も参加するようになったそうですね。女性の参加者は毎年入れ替わるそうですが、彼女たちの意見で新たな視点の獲得はありましたか。

福田会長 まだシーンとしちゃってますね(苦笑)。その場では(意見が)出ない。

店でも、いろんなことを率直にぼくに話してくれる方もいますが、構えちゃって「ちょっと……」という方も。それでも、多くの人は、いろんなことにすぐに対応してくれます。うちの場合、みんな、「コミュニケーションを取ろう」と努力してくれている感じはします。

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