人気上昇中のお笑いトリオ「ぱーてぃーちゃん」のツッコミ担当、すがちゃん最高No.1さん(32)は、中学1年から高校3年まで、周囲に内緒で一人暮らしをしていました。身近に頼れる人がいない中、支えとなったのが、「一人の俺ってカッコいい」と孤独さえも味方につけるメンタリティーだった、といいます。どうして一人暮らしになったかを語るうち、話は自然と家族との思い出に及びました。
次々と出ていき…
一人ずつ、家族が減っていったんです。漫画の「ONE PIECE(ワンピース)」は、仲間がどんどん増えていきますけれど、僕の場合は逆ワンピース、ですね。減らしていくパターン。
母親は僕が3歳のときに亡くなりました。山形市にある親父の実家で、じいちゃん、ばあちゃん、親父、親父の姉ちゃん(伯母)、僕の5人で暮らしていました。
最初にいち抜けしたのが親父です。女好きで破天荒、ほかに家庭をつくって出ていっちゃった。その次は、かっちゃん。伯母です。母親のような存在でしたが東京に移ることになって。僕も一緒に、と誘われましたが、山形を離れたくなかったし、断っちゃった。それは僕が小学5年のときでした。
しばらくして、じいちゃんが亡くなると、家にばあちゃんと僕だけになりました。
祖母の変わった節約術
ばあちゃんは変わり者でしたね。グミにハマって、1カ月の食費を全部使っちゃったこともありました。段ボール箱が大量に届いて、全部グレープ味のグミですよ。
そんなばあちゃんには、節約のための「マイルール」がありました。玄関のピンポン(呼び鈴)を鳴らすのはNGです。友人が僕を訪ねてピンポンを鳴らすと、玄関まで走っていき、「何のために喉があるんだ!」って、どなり散らすんです。
ほかにも、食器や洗濯物を洗うふりだけして、実際には洗っていなかったり、トイレも1回して流し切るのはNG。3回ためてからです。「小」はレバーを少し上げてちょろっと流すのがルール。変わってますよね。だからよく、けんかしましたよ。
そんなばあちゃんが体調を崩して施設に入ると、僕の一人暮らしが始まりました。中学1年生のときでした。
家事は「見て盗む」
一人になった実感が湧いたのは、1週間後くらいですかね。ばあちゃんが世話をしていた金魚に餌をあげながら「あれっ、僕、一人じゃね⁉」って。
料理も自分でしました。じいちゃんが作ってくれていたみそ汁が大好きだったので、作ってみたら、全然違う。でも何が足りないのか、誰にも聞くことができない。
一人暮らしを、周囲に絶対にバラしたくなかったんです。だから「見て盗む」しかなかった。
そこで僕は、友達のお母さんがみそ汁を作る様子を観察することにしました。友達の家に遊びに行ったときに、僕も夕食を食べさせてもらえることになり、キッチンをのぞきました。何か粉末を入れているのは確認できたけれど、それが何かは分からない。
スーパーのみそ売り場を現地調査して、やっとそれが和風だしだったことが分かりました。じいちゃんのみそ汁が再現できたときはうれしかったですね。
「カッコいい」暮らしにこだわり
1人暮らしには、ちょっとしたこだわりのポイントがありました。カッコいいかカッコよくないか、という僕なりの「物差し」。風呂掃除や洗濯など、家事はそこまで苦ではなかったけれど、掃除機を使うのがどうしても嫌だったんです。掃除機は「お母さんがかけている」というイメージがあって、中学生の自分が掃除機をかける姿を想像すると「NG(カッコよくない)」だったんです。
だからフロアワイパーで床を掃除してました。ほこりもとれるし、可動域すごいんですよ(笑)。
伯母のかっちゃんからの仕送りなどで、月の生活資金は2万~3万円でした。最初は家計簿をつけていたけれど、途中でやめました。「(お金が足りなさ過ぎて)やばくね⁉」と思い知らされたから。漫画を買って無駄遣いしちゃったりもして。
封筒に現金を入れて管理するようになりました。そのほうが、現実を見なくて済むような気がしたからです。
孤独を感じたときは
近所の家から会話する明るい声が聞こえてきて、孤独を感じたこともあったけれど、月を見れば平気でした。家に月がよく見える小窓があって、「月に照らされた一人の俺、カッコいい」って、思ってました。
孤独な状況で悲観的にならず、カッコいいって思うことができたのは、漫画の影響もあったと思います。バスケットボール漫画「スラムダンク」には、主人公の桜木花道が一人で生活していたのかなと思える描写があったり。「ホイッスル!」というサッカー漫画に出てくる、何でもできる天才だけれど家庭に事情を抱えるシゲ(佐藤成樹)というキャラクターも好きで、彼らに自分を重ね合わせていました。
それでもやっぱり少し寂しかったんでしょうね。一人暮らしをしてから、立ち入らなくなった部屋がありました。
親父の部屋、伯母のかっちゃんの部屋があった2階には、もうひとつ、天井が空色で、扉がついていない部屋があったんです。家族がいたころ、僕の部屋になる予定でしたが、物置として使われていました。
僕が小学2、3年ぐらいの時、その部屋に、かっちゃんが僕のために用意したクリスマスプレゼントを、隠していたことがありました。当時、僕がとても好きだったアメリカの漫画「ミュータント・タートルズ」の亀の忍者の、関節が動くすごくいいフィギュア(人形)でした。
家が貧乏だと肌で感じて、「プレゼントはない」とあきらめていたから、かっちゃんの思いが伝わって、「うわ、買ってくれてる」って、うれしかったですよ。
そんな幸せなときのことを思い出すと、ちょっとだけ寂しくなる。だからその部屋には入らなくなったんだと思います。(本江希望)
すがちゃんさいこうナンバーワン 平成3年、山形市出身。令和3年4月、お笑い養成所ワタナベコメディスクールの後輩芸人、信子、金子きょんちぃと「ぱーてぃーちゃん」を結成。チャラ男とギャル2人の異色漫才で、ツッコミを担当。4月に自身の生い立ちをつづった『中1、一人暮らし、意外とバレない』(ワニブックス)を発売した。