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【深層レポート】カンボジアをハブとする巨額資金洗浄網と「日本ルート」(連載 第12回 / 全15回)「動く金庫」と「専門的イネイブラー」 プリンス・ジャパン元役員逮捕で見えた洗浄ルートの深層 ▪️プリンス・ジャパン元役員の逮捕 台湾当局の捜査線上に浮上していた重要人物、林揚茂容疑者が逮捕されました。 彼は制裁対象であるプリンス・グループ会長の資産管理を担い、日本法人「プリンス・ジャパン」取締役を務めており、大規模マネロン事件「88会館」主犯格、郭哲敏と密接な資金協力関係にありました。 表の顔はプリンス台湾拠点「台湾太子不動産」副総経理ですが、彼はこの立場を悪用し、郭一派が賭博や詐欺で稼いだ数百億円規模の不正資金を、カンボジアの不動産購入費に見せかけ海外へ逃がすスキームを構築していました。犯罪収益を追跡困難な暗号資産(USDT)に変換、「太子荘園」など同グループの物件購入費として送金させ、汚れた金を合法的な不動産資産へ洗浄していたのです。 ▪️日本への逃亡と「聖域」カンボジア 特筆すべきは逃亡ルートでの「日本」の役割です。事件発覚直後、郭哲敏は最初に日本へ出国。林容疑者も「プリンス・ジャパン」を足場に日台を頻繁に行き来していました。 彼らにとってカンボジアは最終的な「聖域」ですが、日本は高度な金融インフラがあり、滞在障壁も低い「安全な中継地」であり、日本進出の足場固めは、万が一の際の逃避ルート確保だった疑いも強まっています。 ▪️スーパーカーという「動く金庫」 台北の超高級マンション「和平大苑」地下駐車場には、誰も乗らないフェラーリなど10台以上のスーパーカーが埃を被ったまま保管。これらは愛車ではなく、口座凍結に備えた「動く金庫」といえます。 これは88会館事件関係者の常套手段ですが、台湾のこの異様な光景は、日本でも進行中、あるいは間もなく起こる未来の姿かもしれません。 米国財務省資料によると、彼らはNYで購入したピカソの絵画やジェット機などを利用し、犯罪収益を「動産」に変えて隠匿する「アート・ロンダリング」等の手法も駆使しています。 ▪️「小資金でも買える!」一般人を巻き込むミキシング さらに彼は、台湾の投資家にカンボジアだけでなく、日本の不動産物件を積極的に斡旋。当時のセミナー資料には、「小資族也能輕鬆買!(小資金でも気楽に買える!)」というコピーが踊ります。広告の「小資族」というターゲット選定は巧妙です。大量の一般人のクリーンな少額資金の中に、巨額の汚れた資金を紛れ込ませる「ミキシング」の疑いも濃厚です。 FATFが警告する通り、暗号資産のミキサー同様、不動産投資でも多数の小口資金と犯罪収益を混ぜて出所を不透明にする手口がとられ、一般市民の資金が知らぬ間に巨大なマネロン機構の一部として利用されていた可能性があります。 ▪️「強化フォローアップ」という不名誉な刻印 なぜ日本を目指すのか。答えはFATF(金融活動作業部会)の審査結果にあります。日本は2021年の第4次対日相互審査で、マネロン対策の「有効性」で最高評価を一つも得られず、現在もG7の中で異例の「強化フォローアップ国」として監視下にあります。この指定は事実上の「落第」に近い評価です。 報告書が特に厳しく指摘するのが、弁護士や不動産業者など「DNFBPs(指定非金融業者)」への規制の甘さです。パチンコ店や不動産業者、士業などの「非金融業者」に対するリスク認識と監督が不十分であり、特に「犯罪組織が不動産を隠れ蓑にすること」への対策不備を断じられました。 ここには、不動産業者や士業が顧客の実質的支配者を特定する義務が徹底されていないという、致命的欠陥が存在します。 ▪️他のG7主要国と比較して遅れる日本の「ゲートキーパー」規制 問題は支援する専門家の存在。GFIレポートは、G7諸国が「ゲートキーパー(弁護士等)」へのAML規制を強化している現状を報告しています。具体的には、英国が政府直轄の監督機関「OPBAS」を設置し、米国も地域特定命令(GTOs)によって不動産取引の透明化を図り、ドイツでは守秘義務を超えて疑わしい取引を報告する義務を課すなど、管理体制を厳格化する流れが主流です。 これに対し、日本は慎重な姿勢を崩していません。弁護士自治や守秘義務の観点から、疑わしい取引の届出義務には一定の制約が存在し、当局が資金の流れを把握しきれない領域が存在しており、厳格な規制を敷く他国と比較した場合、日本がカンボジア同様に「資金洗浄の回避地」として機能しかねない現状があります。 FATFが呼ぶ「専門的イネイブラー」が暗躍しやすい環境が残存しており、各国の締め付けが厳しくなる中、規制の緩い日本が「資金の聖域」として狙われている可能性は否定できません。 ※本稿は、公益目的の観点から、公開情報・報道・当局発表等に基づき、資金洗浄の実態と構造的リスクを分析・考察したものです。
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