「確認お願いします」は乱暴な仕事の押しつけ
チャットツールが点滅する。
メールの受信通知がポップアップする。
そこに書かれているのは、資料の添付ファイルと、たった一行の文言。
「確認お願いします」
その瞬間、肺の奥から重たい空気が漏れ出る。
ため息だ。
そして脳裏をよぎるのは、諦めにも似た、どす黒い感情。
「ああ、この人の仕事レベルってこの程度なんだな」
汚い言葉で申し訳ありません。
でも、正直に言いましょう。皆さんも思ったことがあるはずです。
なぜ、私たちはこの「確認お願いします」という、一見すると丁寧なはずの七文字に、これほどまでに神経を逆なでされるのか。
それは、その一言が「思考の放棄」であり、「責任のなすりつけ」であり、他人の時間をタダだと思っている「想像力の欠如」の表れだからです。
今日は、この日本中のオフィスに蔓延する「確認お願いします」という病と、そこから身を守るための処方箋について、少しばかり長い話をさせてください。
「確認」という言葉が、あまりにも仕事を含みすぎている
そもそも、「確認」とは何なのか。
広辞苑を引くまでもなく、状況によってその意味は無限に分岐します。
- 誤字脱字がないか、一言一句を見るのか?
- 論理構成が破綻していないか、筋道を見るのか?
- 法的リスクがないか、コンプライアンスの視点で見るのか?
- デザインの色味が規定通りかを見るのか?
- 単に「ファイルが開けるか」を見るのか?
送り手は、この無限の可能性の中から、自分の意図を絞り込んで伝えなければなりません。
観点(=どこを見るか)も、範囲(=どこまで見るか)も明示されていない。
これはつまり、「私が本来やるべき要件定義という仕事をサボりましたので、あなたが代わりにそのコストを負担してください」という宣言に他ならないのです。
「とりあえず送る」という責任回避のズルさ
さらにタチが悪いのが、この言葉に透けて見える「責任逃れ」の心理です。
仕事の完成度が低い自覚はある。
でも、自分でこれ以上考えるのは面倒だ。
あるいは自信がない。
だから、とりあえず「確認お願いします」と言って上司や先輩に投げておく。
そうすればどうなるか?
もし後でミスが発覚しても、「いや、あの時「確認お願いします」って送って、何も言われなかったんで大丈夫かと思いました」という言い訳が立つわけです。
これを僕は「責任の共同化(…というか全嫁?)」と呼んでいます。
未完成のボールを相手のコートに放り込むことで、何かあった時の爆心地を自分以外の場所にずらそうとする。その浅ましい生存本能が、あの一行には凝縮されている。
だからこそ、私たちは直感的に不快感を覚えるのです。
「ああ、こいつは仕事を前に進めたいんじゃない。自分の身を守りたいだけなんだ」と見抜いてしまうから。
優秀な人の依頼は、脳のメモリを食わない
一方で、仕事ができる人、いわゆる「優秀な人」の依頼は全く異なります。 彼らは、受け手の脳内メモリを1バイトたりとも無駄遣いさせません。
彼らから送られてくる依頼は、こうです。
企画書の草案を作成しました。 全体的な方向性が部長の方針とズレていないか、「目次と要約」だけを見ていただけますか? 細かい文章や数字はまだ精査していないので、無視してください
これを受け取った時、私たちはどう思うでしょうか。
「なるほど、方向性だけでいいのね。じゃあ3分で終わるな」
そう思い、すぐに目を通し、「OK、方向性は合ってる。進めて」と返すことができます。
この差はなんでしょうか。
それは、「相手にどう動いてほしいか」まで設計できているかどうかの違いです。
仕事ができる人は、相手の時間が有限であることを知っています。
だから、相手が「何をすればいいか」を迷う時間を極限までゼロにしようと努力します。
一方で、仕事ができない人は、相手の時間を「使い放題のサブスクリプション」か何かだと勘違いしている。
厳しい言い方をすれば、相手への依頼の仕方一つで、その人の仕事人としてのレベルが露骨に見えてしまうのです。
では、どうすればこの「確認お願いします病」から脱却できるのか。 あるいは、部下や同僚にどう教えればいいのか。
必要なのは、たった3つの要素です。
- 何のための資料か
- いま、どういう状態か
- どこを見てほしいか(+どこは見なくてよいか)
①何のための資料か
まず、その資料が何のためのものか。
- 社内の検討用なのか、
- 上司への説明用なのか、
- 社外に出すものなのか。
これを示してもらえると、どれくらいの優先度で資料を見ればよいか、どんな視点(顧客の立場、上司の立場とか)で確認すればよいかがわかります。
②いま、どういう状態か
次は、その成果物がどの段階にあるのかを伝えます。
- まだ書きなぐっただけのメモです
- 7割方できあがった下書きです
- 提出直前の最終決定版です
これがあるだけで、受け手は「どのくらいの真剣度で読めばいいか」のギアを調整できます。
③どこを見てほしいか(+どこは見なくてよいか)
ここが一番重要です。
見るべきポイントを絞りましょう。
- 誤字脱字だけ見てください
- スケジュールの現実性について意見をください
- 前回指摘された箇所が直っているか確認してください
- 逆に、ここは見なくていいです
この三つを組み合わせるだけで、
「確認お願いします」という思考停止ワードが、
ちゃんとした依頼に変換されます。
「確認お願いします」が嫌われるのは、言葉が雑だからではありません。
仕事の中身を、相手に丸投げしているからです。
確認をお願いするなら、
何のための資料か。
どこを見てほしいか。
今回は見なくていいものは何か。
この三点を言葉にする。
それだけで、仕事の空気は驚くほど変わります。
確認とは、作業ではなく、思考の受け渡しです。
その自覚があるかどうかで、仕事の評価ははっきり分かれます。
次に「確認お願いします」と言いそうになったら、一度立ち止まって考えてみてください。
自分は今、何を人に委ねようとしているのか。
そこを言葉にできたとき、もうその一言は、自然と口から消えているはずです。
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