ZINEフェス金沢へ…新聞記者としての原点の街に「戻る」感慨
しあさっての9月21日の日曜日、金沢で初めて「ZINEフェス金沢」が開催される。北陸を中心に全国からZINEのつくり手たちが集まり、それぞれの思いや表現を小冊子に込めて並べることになるだろう。旅の記録や写真集、詩や短編小説、イラストや漫画、さらには料理や地域文化に関するリトルプレスまで、多彩な冊子が会場を彩るという。出展者と読者が直接言葉を交わし、本を手渡すことで生まれる親密な空気。それこそがZINEフェスの魅力である。
カフェバグダッドも出店する。販売するのは、「日本で食べられる中東料理ガイドブック」や「中東カフェを旅する」といった、これまで定番となってきたZINEだ。日本各地のイベントで多くの人に手に取ってもらってきたが、今回の金沢での出店には特別な意味がある。新聞記者としての私の原点となった街で、そこで自分の表現を届けられるからだ。
金沢を訪れるのは久しぶりだ。しかも今回は、初めて北陸新幹線を利用する。観光客でにぎわう街へ、観光客の気分で向かうことになる。北陸新幹線の開通によって、金沢はインバウンド観光客で大きく変貌を遂げた。駅前から市内の景色に至るまで、私が知っていた頃とは異なる顔を見せているに違いない。その変化を、ZINEフェスという新しい文化の芽吹きと重ね合わせて見られるのは幸運である。
新聞社に入社した最初の年、私は金沢東署と金沢西署を担当し、警察署回りに明け暮れていた。街の話題を拾うのにも、事件を追うのにも必死だった。金沢という土地は私にとってまさに記者としての試練の場であった。そして、奥能登での2年の駐在経験を経て金沢に戻った1994年には、当時の中西陽一知事の死去と、それを受けての県知事選挙という大きなニュースが待ち受けていた。
サムネイルに貼った写真は、その知事選で、谷本正憲さんの初当選が確実になった瞬間に事務所で撮影したものだ。連立与党対自民という当時の国政を反映した構図の大激戦で、きん差で谷本さんが勝利した。それから7期・28年、知事を務めたあと勇退。2022年、現・馳浩知事がやはり大激戦の末、初当選を果たした。クラウドにはいっていたこの写真を眺めていると、当時の思い出の数々がよみがえってくる。
今回の宿は、繁華街から少し離れた古民家民宿。その一帯は、当時の担当エリアでもあった。宿の床に荷物を下ろせば、30年以上前の記憶が立ちのぼってくるかも知れない。
再訪したい場所も多い。香林坊と長町のあいだにあった、よく通った喫茶店。まだ残っているだろうか。仕事の合間に、味わい深いコーヒーを飲みながら、国際報道記者になりたいと夢想していたひとときを、もう一度味わいたいものだ。さらに、石引の「第七ギョーザ」、金沢を本拠にする「8番ラーメン」、小立野の洋食屋「たぬき」など、胃袋に染み込んだ味の数々も忘れがたい。これらは金沢のソウルフードであり、私にとっては青春の味である。
ZINEフェスの会場では、方言が飛び交う声を耳にし、かつて暮らした街の人々と再び出会うだろう。ZINEを通じて交わす会話は、新聞記事として「伝える」作業とは異なる。もっと近く、もっと手渡しの温度を帯びている。観光客や地元の学生、アートや文学に関心を持つ人々、あるいはたまたま会場に立ち寄った市民たち。そんな多様な人々に、ZINEを通じて私の今の思いを届けたい。
金沢でZINEフェスが初めて開かれることは、街がいま新しい文化を受け入れ、育てようとしているあかしかも知れない。私にとっては、記者としての原点の地で、新しいつながりをつむぐ機会だ。ZINEフェス金沢は、私にとって再会の場であると同時に、新たな出発の地にもなるかも知れない。
ぜひ会場でお会いしましょう。懐かしい街で、ZINEを通じて新しい出会いが生まれることを楽しみにしています。
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