イランの男子禁制の民俗儀礼を記録したドキュメンタリー『ハキシュカ』
山形国際ドキュメンタリー映画祭が開幕。筆者は2日目から参戦し、最初にみたのがこのイラン映画になった。
舞台はイラン北西部、西アゼルバイジャン州のピールカンディ村。
乾いた丘陵地帯の上に、かつて婚約中に亡くなったキリスト教徒の女性の墓がある。そこに年に一度、村の女性たちが集まり、歌い、踊る。
男子禁制のその丘で行われる儀礼は、雨を呼ぶ祈りでもあり、共同体の連帯を確かめる場でもあるという。
イマン・パクナハード、ナルゲス・ジュダキの両監督は、撮影に3年をかけた。外部の人間が立ち入ることのなかったこの儀式を記録するため、監督たちは長い時間をかけて村の女性たちと信頼関係を築いていった。
その結果、史上初めてカメラがこの祈りの場に入ることを許された。
映像は、村の自然のリズムと呼応するように、静かでゆったりとしたテンポで進む。監督たちは、村の慣習に干渉せず、カメラをできる限り不可視化するように努めたという。
上映後のティーチインで、イマン監督が、女性たちが歌う歌詞について「即興であり、俳句のようなもの」と語っていたのが面白かった。通訳のショーレ・ゴルパリアンさんは、「俳句ではなく、短歌かな」と軌道修正していた。
歌詞には恋の歓びもあれば、夫への怒りもある。即興性がもたらす自由な表現が、共同体の中での抑圧を一瞬だけ解き放ち、女性たちが自らを語る機会となっていると思った。
監督は「この儀式では誰もが平等であり、音も映像もその平等の精神を体現している」とも語っていた。
ここから先は
643字
この記事のみ
¥
100
みなさまからのチップ、歓迎しております~さらに充実した情報発信のため、活用させていただきます~



購入者のコメント