忘却への抵抗としての映像…ドキュメンタリー映画『ガザにてハサンと』
山形国際ドキュメンタリー映画祭で『ガザにてハサンと』(カマール・アルジャアファリー監督)を観たとき、胸の奥にしまい込んでいた記憶が呼び覚まされた。私は2000年から2003年にかけて新聞社の中東特派員として、支局のあるカイロからガザに通っていた。2000年秋に始まった第二次インティファーダのさなか、イスラエルの空爆攻撃にさらされていたガザは、国際報道の舞台である一方、同時に人々の暮らしが息づく場所でもあった。海岸通りで魚を釣る少年、古い喫茶店で水タバコをくゆらせながら語らう男たち。武力衝突の緊張と日常は常に隣り合わせにあった。私はそうした光景も見てきたつもりだったが、この映画は当時の私の視界がいかに限られたものであったかを思い知らせた。
カマール・アルジャアファリー(Kamal Aljafari)は1972年、パレスチナのラマッラー近郊に生まれた。ベルリン芸術大学などで映画制作を学び、フィクションと記録映像の境界を問い直す作品を発表してきた。パレスチナ社会と映像アーカイブの関係を主題に据えた作風で知られ、これまでロカルノ国際映画祭やニューヨーク近代美術館(MoMA)などで特集上映されている。
アルジャアファリー監督は、2001年にガザで自ら撮影したMiniDVテープを20年以上経って再発見し、本作を制作したという。まさに私がガザを訪れていた時期と重なる。
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