シミュレーションの砂漠──『アトロピア』が映す現代の戦場
米映画『アトロピア』は、戦争の現実をコメディタッチで描きながら、アメリカという国家の「戦争の演出」を鋭く問う異色作といえる。2025年の米サンダンス映画祭では、賛否両論の評価を受けたものの、アメリカ・ドラマ部門でグランプリ(審査員大賞)を受賞している。米国では今年末に公開が予定されている。笑いと不安がいりまじった独特の雰囲気を持つ作品だった。
物語の舞台は「アトロピア」という架空のイラクの都市。米軍が没入型訓練のために創り出した“仮想の街だ。そこでは、住民役の俳優と共に、兵士たちが戦争を模したシナリオを繰り返す。主演のフェイルーズは、この訓練場で「現地住民」役を演じる若い女優。彼女はここでの仕事を、ハリウッド進出への足がかりと信じて疑わない。だが、ベテラン兵士で“反乱分子”役を演じるアブ・ダイスと出会ったことで、彼女は次第に揺らぎ始める。恋と職業意識、現実と虚構――その境界が、演技の中で融解していく。
ここから先は
505字
この記事のみ
¥
100
みなさまからのチップ、歓迎しております~さらに充実した情報発信のため、活用させていただきます~



購入者のコメント